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異世界ゾンビ太郎  作者: 一生三流
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第1話 『神島太郎という男』

カーテンの隙間から光が差し込み始める頃、ベッドの横に置いてあるスマホのアラームが鳴り響く。


(…んん…っ)


意識が曖昧なまま右手でスマホのアラームを止める。2回目のアラームが鳴るまでの15分間、再び眠りにつく。

部屋に4回目のアラームが鳴った所でこの部屋の家主はやっとベッドから這い出てきた。


まずトイレに行き用を足し、フラつく足取りで洗面所へ行き歯を磨き始める。徐々に覚醒してきた頭を無理やり起こすため、冷水で顔をバシャバシャと洗う。

鏡に映る自分と目を合わせながら、寝癖を直していく。


時計の針がタイムリミットに刻一刻と近づく前に着替えを済ませ、アパートを出る。


近所にあるコンビニエンスストアで完全に頭を覚醒させる為のエナジードリンクを買い、それを一気に飲み干し、会社へと向かう。


これが俺、神島太郎(28)の出勤前の毎朝の出来事である。


高校を出て働き始めてからの10年間ずっと続けてきた行動だ。特に変化があるわけでもなく、変えようと思う事すらしてこなかった、俺にとっては当たり前の日常の始まりだ。


一人暮らしをし始めたきっかけは特に無く、別に親とも仲が悪いわけでもない。本当になんとなくってヤツだ。

会社へは徒歩で10分以内に行きたいと思っていたから、会社の近くに部屋を借りた。

おかげで朝は少しばかりゆっくりと出来る。同僚の通勤時間の長さの愚痴を、ほくそ笑んで聞いてられるぐらいのゆとりは手に入れられた事は良かれとも言えよう。


しかし、一人暮らしは自由と引き換えに何かと不便な事が多い、先ず家賃光熱費が毎月発生する事、疲れて家に帰ってきても夕飯も無いし、お風呂も沸いてない。コレらは実家に暮らしている独身の同僚には分からない話しだ。


(……俺もそろそろ結婚考えなきゃなー)


仕事から帰ってきて、まったりと夕飯を食べながらそんな事を考えていた。


(…しかし、最近のアニメ異世界モノ増えすぎだろ)


夕飯と一緒に缶ビールを飲みながら、撮りためた深夜アニメを消化しながらそう思っていた。


(お決まりの交通事故から、チート能力貰って、俺ツエーして、異世界の美少女にモテモテね……)


正直もう何度も見た展開に飽き飽きしていたが、それでも3話まではと決め、視聴していると気づいた時には最終話まで追っていることが多かった。


「…28歳独身が癒しを求める先がテンプレ異世界アニメか…、はぁ、マジでそろそろ結婚しなきゃなー…」


缶ビールを一気に飲み干し、疲れ果てた身体を休める為ベッドへと飛び込んだ。



「おはようございまーす!」


「はいおはようございます」


通学中の小学生達が交通安全パトロールの婦警さんに元気よく挨拶をしている。


毎朝見ている光景なので別に気にもしない。


 …ただ、この日は違った。


横断歩道を小学生達が渡っている奥から、猛スピードで大型トラックが突っ込んできたのだ。


婦警さんは横断歩道の真ん中に立ち児童の方を見ていた為、まだトラックの存在に気づいていない!


人間は咄嗟の状況に陥った時、”危ない””危険だ”などと急に言われると驚き、その場から動かなくなってしまうらしい。


これは労働災害防止の為、研修を受けさせられた俺が学んだ事だ。


「逃げろぉお!!早く逃げろおおお!!!」


口と体が同時に動いていた。


児童達に緊急性を伝える為、そちらに向かって全力で走った。


児童達は突然後ろから来た俺に怯えたのか、叫び声を上げ、俺から逃げていくよう皆が一斉走り出した。


…しかし婦警さんは違った。


「……と、止まりなさい!!」


俺を不審者と勘違いしたのか、横断歩道の真ん中で両手を広げ、俺から児童を守らんとばかりに仁王立ちしている。


しかし、猛スピードのトラックはすでに横断歩道の目の前に差し掛かっている――。


「…くっ、そがぁあ!!」


スピードを落とさないトラックの運転手と、勘違いしている婦警両方にイラ立ちを感じると同時に足が勝手に動いていた――――――――。











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