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i  作者: 浅葱
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背中にねぎ、手にフライパン

きっと鴨はねぎを背負って、鵞鳥はフランボワーズソースを持ってくるんですよ、多分。


あ、どうも、こんばんは。今夜のメインデッシュは何にいたしましょう?

 3か月ぶりにエステに行く。通っているように言うが、まだ片手ほどしか行ったことがない。

 あ、ちょっと肌が荒れてますね。$%’198*+.p@123$’654%&`+<’%’&…?

 担当してくれるエステティシャンが肌を触りながら、何事か聞いてくる。何を言っているか判別不能。けれど追加料金のかからなそうなことだったから、とりあえず頷いておく。


 ハイブランドの服を買いに行く。常連のように言うが、Saleの時に立ち寄ったりするだけだ。

 それ、今季の新作なんですよ。%’&#”(Y8fo!’(‘p{*?{#204…!

 担当してくれる店員さんが、右斜め後ろから何事か言ってくる。何を言っているか判別不能。あぁはい、そうですか、と、とりあえず頷いておく。



 どちらも必要なことだけ済ませて逃げるように立ち去った。自分にとっていいことをしてくれているのは分かるし、自分にとって嬉しいことを言ってくれているのも分かる。けれど目の前に対峙する目が、鏡の向こうに見える目が、空洞なのを見てしまう、気づいてしまう。


 あぁ、哀れな鳥、可哀想な鳥。地面に身体を埋め込まれ、食べ物を次々と含まされる鳥。


 あぁ、私は、第三次産業がとても苦手。



 サービス業に就きたい人がよく言う、お客様のためになりたい、は信じようと思えば信じられる。あくまで、“就きたい”人だ。その業界に入りたくて、まだ入れていない人。例えば就活生、例えばアルバイトに応募した人。そういう人たちは夢があってもいい、多分。

 けれど現実はそうではない。お客様のため、ではなく、会社のため、ひいては自分のためになっていくように見える。そりゃ資本主義社会だから当たり前といえば当たり前の理論だ。

 どう頑張っても透けてしまうものは透ける。働いて給料をもらっている。売れば売るほど待遇は良くなる。献身的な姿を見せれば、より買ってもらいやすくなる。消費をさせろ、消費をさせろ、消費をさせろ……。一度、見えてしまったら止まらない。鳥肌が立つ。そうして羽をバサバサと広げて、みっともなく逃げ出す。

 勉強をしろ、と言われるとする気がなくなるように、買え、という気持ちが見えてしまうと途端に購買意欲が失われていく。インターネットを見ている時でもそうだ。これを検索したから、これにも興味があるはずだ、と出せれても、ますます購買意欲が削がれるし、もはや、こんなに面倒くさいことになるのならインターネットで物を見たり、買ったりするのをやめようか、とすら思う。

 かと言って実地に行くのも、顔を覚えられたり記録をとられていたりする。そこに人間の感情が絡んでくるから余計面倒くさい。それにこちらが幼く見られていたりするともっと酷いことになる。明らかにプレデターの目だ、恐ろしい。多分、向こうは優しい表情をしているものだと、この子の心を開いてあげようと、買い物しやすくしてあげようと、勘違いしている。それが透けて見えると余計、心を閉ざす、殻にこもる。それを引っ張り出そうとまたプレデターはそろりそろりと近づいてくる。さらに後ずさる。終いには耐えきれなくなって、店から逃げ出すのだ。あぁ悪循環、負のスパイラル。落ち着いて買い物をしたい。


 そう思ったって仕方のないものは仕方がない。それが社会のシステムであり、世の秩序なのだから。どうしたって、自分のため:お客様のため=8:2くらいになるのは致し方ない。もっと心の清い人が多いと思いたい。いや、自分の性格がねじ曲がっているのか。


 しかしながら世界は残酷。

 どう足掻いたところで鴨は鴨で鵞鳥は鵞鳥なのだ。


 ありゃ、私はどちらだ?

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