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いつか醒める久遠  作者: Ayuwan
7章 覚醒
32/36

31話 記憶

よろしくお願い致します。



                   ◇◇◇  


              


 ──────────

       


 ここはどういった用途の建築物なのだろうか?


 ───

 

 特別な医療機関。もしくは特殊な実験を行う為の研究施設──ともかくそんな雰囲気を醸し出している建物の長い廊下を、ひとりのアッシュブロンドの少年が、足早に歩いていた。


 ───


「やっぱ、ここかな──?」


 そして少年はひとつの部屋の前に立つ。


 そこには、リフレッシュルーム。そう表記がされてあった。


 少年は傍にあったパネルへとその手を添える──同時に、パシュっと音を立て、部屋の扉が横にスライドした。中には狭い廊下が奥へと伸びている。どうやら二重扉のようだ。その中へと進む少年。


 やがて、奥の扉も少年がパネルに手を添える事で横へと開かれる。


 そして彼の目の前に広がるその光景は──


 ───


 おそらくはホログラフなどの技術によって象られた疑似空間なのだろう。またはプログラムによって創り出された仮想空間なのか。


 無限とも思える広がる青い大空と、見渡す限り一面の広大な草原──辺りには小鳥のさえずる声が耳に届き、穏やかに吹く風がやさしく頬を撫でていく──


 やがて、少年は何かを見付け出し、その場所に向かって駆け出した。


 そして辿り着き、その姿を眺める少年。


 彼の目の先にあるもの。広がる草原の一画、そこに無数のピンク色の花に囲まれて、ひとりの少女が仰向けに寝転んでいる姿があった。



 とても綺麗な少女だ──



 白いシンプルなデザインのワンピース姿で、背中まで伸びた長く美しい黒髪が、放射状に下方へと広がっている。

 その頭にはピンクの花飾りが付いたカチューシャが見受けられた。傍らには置かれた栞を挟んだ一冊の本──


 おそらくは読んでいる途中で眠くなったのだろう。


 そう、少女は瞳を閉じている。眠っているのだ。その証拠に静かな寝息と共に、彼女の胸が穏やかに上下していた。


 ───


「お~い、起きろ。そろそろ集合時間だぞ!」


 少年のその呼び掛けの声に、少女の身体が一瞬ピクリと動いた……しかし、それは何事もなかったかのように、再び少女から静かな寝息の音が漏れてくる。

 再度眠ってしまったのか、はたまた狸寝入りなのか──


 少年はもう一度、今度は強めに声を上げた。


「──おいっ、起きろって言ってるだろっ! もう、“真希(まさき)” の奴は先に行っちまったぞ。俺達も早く行こうぜ!」


「……ん~」


 観念したのか、少女の口から小さく声が漏れてくる──が、彼女はまだ動かない。


「……ねぇ、君。知ってる? 永遠の眠りに落ちた眠り姫っていうのは、王子様がキスしてくれなきゃ、目を醒ます事ができないんだよ──」


 少女は目を閉じたままその言葉を口にする。


「……って、もう目覚めてるじゃん─っていうか、よくそんなベタなセリフ口に出せるな。恥ずかしくないのかよ……」


「──うっ、うっしゃあいっ! しょんなことゆーなっ!!」


「……思いっきり噛んでんじゃねーか。バカ言ってないで早く起きろよ!」


「……嫌……」


 少年のその声を無視し、少女は再び寝息を立てるふりをする。


「はぁ~、ったくもう、しょうがねぇな……」


 少年は少女の元へと近付き、身を屈める。そして自分の口を彼女の口元に近付けようとして……。


 ──固まった……その顔が急速に赤く染まっていく。


 ───


 幼少の頃に彼女とは、お互いまるで挨拶のように頻繁に行っていたその行為が、もう大人に近付き成長した少年には、羞恥心でいっぱいになり、できずに固まってしまっていた。


 無理もない。その行為が何を意味するものなのか──その知識はすでに得ているし、それを知ってからは、彼女とその行為は一度もしてはいないのだ。


 ───


 やがて、少年は少女の口元を通り過ぎ、顔を上方へと移動させる。そしてその額にキスをした。


「──このヘタレ……」


 そう呟く声と同時に、少女は上半身を起こしながら、自らの唇を少年の唇に押し付けた──そしてその口を塞ぐ。


 次に少年の首元に自分の腕を絡めた──


 ───


「──むっ、むぐっ……お、お前、急に一体何をっ!!」


 少年は驚きの声を上げながら、少女の身体を引き剥がす。


「え? 何って、眠り姫がおでこにチューで目を醒ます筈ないじゃない! やっぱり口と口で……その……キスしなきゃ……って。ううっ、あううう……」


「……いや、悶絶するほど恥ずかしいんなら、最初からすんなよ……」


 やがて顔を赤くしてうつ向いていた少女が、少年の右手に気付く。


「君。それ何持ってるの?」


 その声に少年は右手を差し出し、手の中にある物を彼女に見せた。


「これ、お前に渡そうと思って俺が作ったんだ。前にあげたそのカチューシャ──俺達、もう17だろ? さすがにもう子供っぽいかなって思ってさ」


「──えっ、私にくれるの? 嬉しい! ありがとっ!!」


 少女は歓喜の声を上げ、少年の手の中にある物へと手を伸ばした。しかし少年はそれをヒョイとかわす。


「おっと、今はまだあげないよ……そうだな。今から始まる『疑似体験試験』、それが終了した時。俺がお前の頭に直接付けてやるよ」


「えーっ!……でも、まあ、いっか……」


 そして少女は大きく背伸びをしながら立ち上がった。


 ───


「ちょっと嫌だった今日の試験。ご褒美ができたから、これで少しはやる気が出てきたかな?……な~んて、あははははっ!」


「はぁ~、やっとその気になったか─ったくお前って奴はホント単純だな……って、ははっ、ははははっ!」


 そして少年と少女。二人は互いに笑い合う。


 ───


「──あっ、やべぇ、もうこんな時間だ! こりゃ真希の奴、相当イラついてんぞ! あーっ、あいつ結構キツイからな~っ!」


「大丈夫だよ。なんか文句言うようなら、私がビシッと言い返して上げる」


 そう答えながら、少女は地面に屈み込んでいる少年へと手を差し伸べた。



「──それじゃ……行こ?」



 太陽のような眩しい笑顔を、その顔に浮かべて──


 ───


  少年は頷きながらその手を強く掴み。


 ──そして立ち上がった。


 ────


 ───


 ──


次回最終話です。

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