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いつか醒める久遠  作者: Ayuwan
6章 決別
27/36

26話 予感

よろしくお願い致します。

 ───


 ────


 ─────



                   ◇◇◇




           


「──ああっ、しまったっ! 俺とした事が、よりによってこんな日に寝坊しちまうなんてっ!!」


 俺は今、いつもの待ち合わせの駅前のベンチへと向かって、全速力で駆けている。


 ───


 『全部片付いたよ。明日会おう──』


 『その時に、この前の言葉の続きを聞かせて──楽しみにしてる』


 ───


 待ちに待った久遠からのLINE。しかも今回は午前中からの一日デートの予定だ!!


 ──だってのに、ホントに全く俺って奴はよう!! 


 肩で息をしながら待ち合わせのベンチに辿り着く。


 彼女はすでに待っていた。そして俺の姿に気付いたのか、久遠は笑顔で手を上げながらこちらへと駆け寄ってくる。俺もそれに手を上げて応えた。お互い駆け寄り──


 そして彼女はそのまま俺の横をすり抜けた。


「え──!?」


 何が起こったのか理解できず、俺は呆然とその場に立ち尽くす……やがて背後から、久遠の陽気な声が響いてきた。


 ─────


「も~っ、遅いよ! どれだけ待ったと思ってんのっ!」


「悪い悪い、ちょっと寝坊しちゃってさ。許してくれよ。お詫びに昼、奢るからさ」


 それに答える聞いた事のない男の声。


 俺はその声の元へと呆然としたまま、ゆっくりと振り返った。


「もう、しょうがないな。今日の所はそれで勘弁してあげる─って、とりゃ!」


「おわっ! あっ、あんまりくっつくなよ。恥ずかしいんだからさ……」


「え~っ、別にいいじゃない。なにを今更恥ずかしがってんのよ? もう。くすっ、あははははっ!」


 楽しそうに談笑の声を上げるカップル……俺が知らない男の腕に、久遠が自らの腕を絡ませ、そしてその男の肩にそっと頭を寄せる……やがてふたりは歩き出した。


 ───


 ……何なんだ。これは……?


 混乱する頭の中、俺はずっとそのふたりの後ろ姿を見続けている……やがて、ふたりの姿は人混みの中へと消えていった。


「………」


 ───


「──行っちゃったね」


 ──!?


 不意に背後から声が聞こえ、俺は振り向いた。そこには──


 グレーのロングコートを纏い、フードを目深に被った人物が立っていた。


 余りにも目立つ場違いなその風貌。でも何故か、周囲の行き交う人達は、まるでその人物が目に入っていないかの様に、視界に捉える事なく過ぎ去っている。


 フードから僅かに覗いた形の良い唇が動く──


「どうせ、どうでもいいんでしょ?」


 誰だ、こいつは?──!! そうだ! こいつは夢の中に出てくるアッシュの相棒の、確かエテルナ……だけど、なんでこんな所に? これは夢なのか?


 漠然と俺の中でそう考えがよぎる。そんな中、再び彼女の口が開いた。


「言ったよね? 『()()()()()()()』って──」


 !!…………。


『どう? 今でも“満たされてる”って感じられる?』


 ……………。


 …………。


 ………。



 ──────────






                   ◇◇◇





 ──────────


 ──ジィリリリリー! ジィリリリリー!


 耳障りな音を元気に鳴り立てる二代目目覚まし。その名もめざましくん弐式・改──


 ……残念だが、朝の彼のようなじゃんけんの技能は、こいつにはない……俺はそれに向かって今、怒りの鉄拳をっ!─って、そうじゃない!


 そして俺はその音に目を覚ました。


 それにしても──


 うげっ! 気持ち悪っ!!……やっぱり夢だったか。しかもよりによってあんな内容だなんて──くそっ! ホントに最悪だ!!


 ……さて今日も仕事、仕事……はあ~。


 気を取り直し、今日という一日を始める為に、支度を終え、そして部屋を出る。


 俺が今、この世界でするべき決まり事、“会社での勤務”。それを実行する為に、通勤の電車内で人混みにもみくちゃにされながら、勤め先へと移動して行く。


 いつもと変わらない。当たり前とされた日常だ──


 ───


 あれから俺と久遠は、二週間以上連絡を取り合っていない。


『待っていて……』


 彼女はそう言った。だからそれを信じて、今はただ待っている。


 ……本当は今直ぐにでもLINEをして近況を知りたい! 電話してその声を聞きたい! 会ってあの笑顔が見たい!


 それでもその考えが起こる度に、久遠のあの言葉が思い浮かんできた。


『君の告白を、心からの喜びで受け取りたいから……』


『私、がんばるから……』


『だから、待っていて──』


 そして俺は答えた。『ずっと待っている』と──


 なら今の俺にできる事、それは彼女からの連絡を待つ。それしか思い浮かばなかった──久遠の事を信じているからこそ。


 前に会った時にくれた白い花、アングレカムのヘアピン──『いつまでもあなたと一緒』


 それを手に取り見つめる事で、時折不安になる自分を勇気付けた──


 彼女と一緒に写したスマホの写真やプリクラ。その微笑む笑顔で寂しさをまぎらわせた──


 そうやって、心が“満たされてる”──そう思い込む事に必死に足掻いた。


 そんな事を繰り返し、俺はずっと待ち続けている……そして最後に彼女と会ってから一体何日経ったのだろう? 四週間? いや、もう一ヶ月近くになるのかも知れない。


 そんなある日の夜遅く、スマホに久遠からメッセージが届いた。内容は──


 ───


『会いたい。話があるの。それと──』


『──ごめんなさい……』


 ──!!


 ───


 連絡が遅過ぎる事に、何となくそんな予感はしていた。


 だけど、どうして!……俺達はお互い想いが通じ合えたはず、なのに何故なんだっ!?


 ……いや、まだどんな事情が? どんな理由があるのか? その事を俺は何一つ知らない。もしかしたら、まだどうにかなるのかも知れない!!


 ──ええい! くそっ! こうやってネガティブな考えになるのは俺の悪い癖だっ! 取りあえずは……そう──



 久遠と会ってからだ──!!


                                           

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