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いつか醒める久遠  作者: Ayuwan
5章 懐疑
25/36

24話 復讐

よろしくお願い致します。

 ───


 少しの沈黙の後、フォルスは視線を俺の方へと戻しながら、その綺麗な金色の前髪を手で撫で上げる。


「だいたいの僕の仮説はこんな所かな……だけど、ひとつだけ疑問があるんだ。それは、もう三年前の惨劇によって、被験者達は『能力』の覚醒を終えている筈なんだ。もちろん、その全てが『能力体』となった訳ではないだろうけどね。どちらにせよ『能力』を覚醒させるためのリミット解除の惨劇。そのシュミレートはもう終了した──にも関わらず、この仮想現実の世界が終わる気配が未だにない……何故だろう? もう三年も経っているのに……」


 今度はテーブルの上へと視線を落とし、何やら考察を始めるフォルス。こいつの言う事、全てを信じている訳ではなかったが……。


 俺は奴に話し掛けた。


「何か実験している側の奴等に、予期せぬ事でも起こったんじゃないのか? それこそお前が言ったこの世界で起こったような、非日常的な事がさ──」


 フォルスは黙ってテーブルの上を睨み続けている。


「はははっ、そんな事、誰だって思い付くよ。だけど……そうだな、やっぱりそういう事なんだろうね──」


 そう言うと、フォルスは大きく伸びをし、そして俺へと向き直った。


「君が体験する真っ白な空間──その事、僕に詳しく話してくれる?」


 真剣な眼差しのフォルス。


「……ああ」


 そして俺はフォルスに、自分がその件に関して体験した、全ての事を説明する様に話した。


 その俺の話を聞き、フォルスはあごに手を当て、何かを思案しているようだった。


 ───


「断続的にその症状が起こって、最近になって回数が増えているのと定期が早まっている……そういう解釈でいいんだね?」


「そうだな……」


 俺の返事に、フォルスはその口に笑みを浮かべた。


「──やっぱりね。おそらく君の持つ『能力』は、かなり特殊だ。多分、君が体験しているそれも、その特殊な『能力』のひとつなんじゃないかな?……うん……もしも僕の考察が正しいのなら、この世界は近々消える事になるのかも知れないな……」


 そう言葉を発するフォルスの表情に、笑みが消える。


「初めて君と会った時。僕は君に対して『能力』とは別の、何か特別なものを感じた……もしかしたら君の意識の中に、強制的にこの仮想現実の世界を終了させる為の処置。そんなものが施されているのかも知れない。さっき言った予期せぬ出来事が実際、起きてしまった時の保険のためにね──その施されているもの。意図的に施されているのなら、必ず解除する方法がある筈なんだけど……例えば、何かのワードを口にするとか……」


「ワード?」


 思わずそう声を漏らす。


「うん、そうだな例えば……『こんな世界消えてなくなってしまえ!』──みたいな感じのね」


 ……なんだ。そんな事でいいのなら、今すぐにでも試せるじゃないか。


「──おっと、ただ口にしたり、思っただけじゃ多分ダメだと思うよ。それこそ『能力』を覚醒させた時と同じ様に、そういった状況に追い込まれて、心の底からそう願わなくちゃ……おそらくね」


 なんで分かったんだ? お前は超能力者か!─って、うん。確か超能力者だったな。たははっ──


 それとは別に、どうやら奴には全てお見通しらしい。


「まあ、今までの事から考察するに、君がその言葉を口にするより早く、この世界は消滅する事になると思うよ。だから、その件に関してはもうこれで終了という事で──これから本題に入らせて貰うよ」


 フォルスは一旦、そう締めくくり、新たに言葉を発してきた。


 ───


「アッシュ。まずは話を始める前に、僕は『能力体』、『変異体』このふたつの呼び方を改める。この名称は仮想現実によって創られたもの達が、勝手にそう呼称しているだけだからね」


 そしてフォルスは眼光を鋭いものとした──彼の強い意志が感じ取れる。


「さあ、アッシュ。もう一度同じ事を繰り返すけど、僕は今、この世界で能力者達を探して会っている。そして会った人達とある約束を交わしてるんだ。もう数十人応じて貰った。もちろん、応えてくれなかった人もいたけどね。それにそのほとんどの人達は、君のように能力者である事を隠して生活している──まあ、理由は僕もそうだったから仕方のない事だよね……だから、そういった人達を、無理にでも表舞台に出てこさせる為に、あの怪物達を使って、集落を襲わさせているんだ」


 ──!!


 その言葉の内容が理解できた瞬間、俺はフォルスの胸ぐらを掴んでいた。


「──てめぇ! そんな簡単にほざくなよっ! そうだって言うのなら、お前がやったその事で、何人もの人が死んだ事になるんだぞ! それにあのでかい怪物の事もなっ!……せっかくふたりで、ただ大人しく眠ってただけなのに……それを、あんな……可愛そうに……ちくしょう! 一体お前はどんな神経してやがんだよっ!!」 


 俺の怒りの雄叫びに、こいつはキョトンとした表情で俺の事を見る。何故そんな事で怒るのか分からない……そういった風に──


「──あははははははっ! アッシュ、君さ。僕、何度も言ったよね? この世界のもの。僕達、能力者以外は全て現実に存在しているものじゃないんだよ。意思を持つ人間でさえ、人工知能を与えられて創られたものでしかない。全てのものが、仮想現実が創り出した、ただの文字配列と記号の集合体なのさ……まあ、君のようにその事を認めなければ、罪悪感に押し潰されてしまうだろうけどね。だから、気にしない気にしない……かくいう僕達も、現実に存在していると言う事実があるだけで、この世界の中では、肉体的には他のそれらと何ら変わらないんだけどさ……」


 フォルスは俺を鋭く睨み付ける──続けて自身の胸ぐらを掴んでいた俺の手を振りほどき、逆にその手首を掴んできた。


「……何なら僕と()ってみる? 言っとくけど、君が思ってるより僕はずっと強いよ──」


 ───


 瞬間、俺の身体にとてつもない重圧感がのし掛かり、それに押し潰される!──そんな感覚に陥った。

 その力に対抗する為、俺も能力を発動させる!


 互いの目が交差し合い、周囲の空気が微かに振動する。そして俺達ふたりの身体から発せられる蜃気楼のような大気の歪み──


 俺達の間で今、“力”、念動力と念動力がせめぎ合っている。そう自覚する俺に、今まで感じた事のない緊張感と圧迫感が同時に襲ってきた。


 ──冷たい汗の滴が頬を伝う……。


 しかし、その拮抗の時は不意に途切れた。


 ───


「──ふぅ……もう止めよう。僕も一度経験した事があるけど、これが能力者同士の戦い……能力と能力がぶつかり合い、そしてそれに屈した方が消し飛ぶ事となる──全く不毛だよ。僕達、能力者同士が戦い合うなんて、その力を振るうべき相手が他にいるのにさ……」


 フォルスはそう言うと、掴んでいた俺の手首を離し、自分の椅子へと腰掛け直した。


 ───


「アッシュ。いずれこの偽りの世界は消滅する。その時はもう、おそらくそこまできている……この世界が終わり本来の世界に戻れた時。僕は協力を約束してくれた能力者達と共に、復讐という名の反逆を企てている。それが如何に強大な組織や国家であろうと必ず実行して、跡形もなく全て叩き潰してやるんだ! 思い知らせてやる!──僕達が持つ強大な力を!!」


 そう言い放つフォルス……そしてその顔を急にうつ向かせた──その目は視点が定まってないようにも見える。


「──ふふふっ……結局の所、僕達もあの醜い怪物と同じ化け物なんだ……僕は許さない。勝手に引っ張り込んで、好き勝手に身体をいじくり回し、能力なんて忌まわしい力を持つ化け物に変えてしまった奴らの事を絶対に許さないっ! 見てろ。必ず全て討ち滅ぼしてやる!──あはははっ! そうなんだ。奴らは自ら生み出した強大な力によって、滅びる事になるのさ! あはははははははははっ!!」 


 狂気じみた表情で笑い声を上げるフォルス……俺は静かに奴に問い掛けた。


「……お前は今、ひとりなのか? 家族とかはいないのか?──三年前、あの時。お前に一体何があった?」


 その問いにフォルスは笑うのを止め、うつ向いたまま答える。


「……物心ついた時から僕に家族と呼べる者はいなかったよ……いや、唯一双子の姉さんだけがいた──そういう設定で、僕はこの世界に送り込まれてきたんだ……とてもやさしくて、綺麗な人だった。僕の母親代わりでもあり、恋人でもあるような……とても大切に思えた、そんな存在の人だったよ……」


 そしてフォルスはゆっくりと俺の方へと目を向けた。


「だけど、三年前のあの時──僕が殺した」


 ………。


 しばらく互いに言葉もなく、そのまま静寂に包まれる……やがて思い出すかのようにフォルスは立ち上がった。


「今日はありがとう。もう疲れただろう? 君の集落まで僕が送ってくよ──」 



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