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いつか醒める久遠  作者: Ayuwan
4章 恋慕
21/36

20話 露弥オと樹里エット

よろしくお願い致します。

 ───


露弥(ろみ)さんに樹里(じゅり)さんですか。へぇ~~、名字が同じって事は、恋人じゃなくて、もしかして夫婦なんですか?」


「うん、そうなんだ。一ヶ月前に結婚したばかり。ちなみに歳は、同い年で25歳」


 俺の問いに露弥さんはそう答えた。


「そういえば、洸さん達はいくつ? それとふたりはどういった関係?」


 今度は樹里さんが、少し悪戯っぽい笑みを浮かべながら俺達に問い掛けてきた。それに久遠が答える。


「私達も同い年で20(はたち)です……それで私達って、どういう風に見えます?」


 疑問に疑問で返す久遠。


 それを受け、樹里さんは少し目を上向きにして考える仕草をする。そして──


「え~とっ……姉弟?」


 ──少しの沈黙の時が流れる。


 ───


 はいはいはいっ! 分かってますよ! 


 重ねて言う。どうせ俺は童顔ですよっ!! コンビニで酒を買おうとして店員に呼び止められたり、駅前をひとり歩いてたら、少しギャルっぽい女子高生に逆ナンされそうになったりしちゃってますよーーっ!! 


 ホント、ちくしょうめ……トホホ。


 ───


「あはははっ、いくらそうは見えなくても、樹里さん。それは言い過ぎっ、だって私達、名字違うでしょう?──あはははっ!」


 久遠が笑いながらそう声を上げた。


 確かにそうだ。樹里さんて、綺麗で大人しそうなのに、結構キツいボケ突っ込んでくるよな。


 ……それにしても、俺と久遠ってそういう感じには見えないのかな?──そう思ってしまう。


「う~ん、そんなに見えないかな?……私と洸──そんなに私達って似合ってませんか?」


 久遠も俺と同じ様に感じたのだろう。少し声のトーンを落として、彼女はそう言葉を投げ掛けていた。


 その問い掛けの言葉に、露弥さん、樹里さん。ふたりはそれぞれ柔らかい微笑みを浮かべる。


「ごめんね、大丈夫、ちゃんと見えるよ。良く似合ってる……だってあなた達ふたり、とても幸せそうに見えるもの……」


 その樹里さんの言葉の前に、俺達二人は──


 ただ恥ずかしくて、顔を赤くしながらうつ向いてしまう。


 ──俺と久遠であった。






                   ◇◇◇






 さすがに高級和食店。運ばれきたその料理は全てが美味く絶品だった。


 ちなみに今日は俺が奢る番。うん、全然OK。全く気にはならない。だって俺は、天下無双の社畜及び、無趣味──軍資金だけはそれなりに潤沢なのだ! えっへん!!


 ……って、いや、もうやめとこう。自分で言ってて……何か妙に恥ずかしくなってきた……う~む。


 それから俺達四人は、互いに会話を交わし合い、楽しいと思える時間を共有していく。そして時もそれなりに過ぎ、お腹の方も満足感に満たされていた。


 ──とはいっても、今日は酒をほとんど口にしてはいない。


 ……だって、今日の俺はいつもの俺ではない! 目標を達成させる為の──戦乙女ヴァルキュリアを陥落し、彼女と想いを通じ合う。その為の狩人、洸。なのだから! 泥酔する訳にはいかないのだ!!


 ……って、この妄想もそろそろ終わりにしよう。もう現実逃避は止めて、彼女と真面目に向かい合おう──そう、 


 俺は今日、久遠に『想いを告げる』のだから……ずっと『ふたりで一緒にいる』その為に──


 そして俺は脳内で静かにクエストを取り下げた──さらば狩人、洸。後は俺ひとりの力でがんばってみせるからな!!


 ふと久遠の方へ目をやると、何やら楽しそうに樹里さんと談笑している姿が目に入ってくる。彼女の方も今日は何故か酒は控えめにしていた。その事は俺の意思を察しての行動だと思う──いや、そう思いたいっ!


 ───


「そういえば、今さらですけど、ご結婚おめでとうございます。ごめんなさい。私、言うの忘れてました。えへへ」


 ……おっと、そういえば俺もだ。


「俺もですね。露弥さん、樹里さん。ご結婚おめでとうございます……でも、ロミにジュリか……ロミオとジュリエット。おふたりに何か運命的なものを感じますね。偶然なんですか?」


「確かに素敵な組み合わせですね。ロミオとジュリエット──運命的な出会い。ふたりは互いに愛し合い、そして─って、あっ! ごっ、ごめんなさい! 私、何て事を……」


 俺の後に続いて話していた久遠が、なぜか途中で言葉を詰まらせた。その時の俺には、何故彼女が話すのを中断し、謝りの言葉を口にするのかが、分からなかったのだ。


 そしてその謝罪の言葉に、樹里さんは穏やかな表情で久遠にやさしく話し掛けた。


「露弥にロミオ、樹里にジュリエット──ふふっ、確かに周りからもよく言われるわ。すごい偶然だってね。私達二人も初めて出会った時にはそう思った……ロミオとジュリエットの物語。ふたりは互いに求め愛し合いながらも、その不幸な境遇により、生きて結ばれる事なく幸福な未来を望む事は叶わなかった……だけどね。私達、露弥と樹里はこうして生きて結ばれる事ができて、今のこの時がとても幸せと感じられるの……うん、きっとそう、私達のこの名前は偶然だったのかも知れないけど、出会って結ばれた事は、必然だったって思う……」


 そしてその樹里さんの言葉を続ける様に、今度は露弥さんが口を開く。


「うん、そうだね。それにロミオとジュリエット。彼らの物語は一般的には悲劇とされているけど、僕達はそうは思わない……だって、あのふたりはひとり生き残る道を選ばず、未来を失ってでもふたりでいる道を選んだんだ……たとえ死ぬ事になったとしてもふたり共に在る事を望む……その気持ちは僕達も変わらない。もしもその立場に立ったのなら、きっと僕達ふたりも同じ選択を選ぶだろうから……」


 そんなふたりの話に、俺と久遠はただ聞き入っていた──


 ───


 ……死んでもふたりでいる事を望む……確かに素敵な印象を思い浮かべるけど、はたしてそれは本当に良い選択なのだろうか? だって、それを選んでしまったら、幸せな未来はもうない……。


 ───


「──おっと、もうこんな時間か。すまないが僕達、明日早いんだ。今日はこれくらいで失礼する事にするよ。楽しい時間を過ごせたよ。ありがとう」


「ふふっ、洸くんに久遠ちゃん、ふたりも幸せにね。それじゃまた──」


 そう言いながらふたりは揃って立ち上がる。


「はい、こちらこそ楽しかったです。おふたり共、どうかお幸せに」


「私も楽しかったです。露弥さん、樹里さん。ずっと幸せでいて下さいね。どうもありがとうございました」


 別れの挨拶のその言葉に、露弥さん達ふたりは手を振りながら応え、座敷を降り、靴を履く。そして引き戸を閉めようとした──その時、ふたりして振り返りその目を合わせてきた……そして露弥さんが口を開く。


「洸くん、久遠ちゃん。ふたりにはこれから先、きっと、“何処で会う”……そんな気がするんだ。また今日みたいにお世話になるのかも……ははっ、もしもそんな時がくるのなら、その時はどうぞよろしく頼むよ……それじゃ──」


 そしてふたりのその姿はこの場から去っていった。


 ───


 ……何かが引っかかる──露弥さんが最後に言ったあの言葉に──


 違和感……デジャヴにも似たこの感覚。


 俺はスマホを手に取った。


 え~と、検索──ロミオとジュリエットあらすじ~っと……。


 ………。


 詳しくは知らなかったけど、成る程、確かにこれは悲劇だな……。


 ───


 不意に久遠が話し掛けてくる。


「露弥さんと樹里さん。あの時、物語と同じ道を選ぶって言ってたけど、洸はどう思う? 自分が愛している人が先に死んじゃったら、君ならどうする?」


 身を乗り出しながら、そう問い掛けてくる久遠の面持ちはとても真剣だった。そして黙って俺の答えを待っている。


「そんなの決まっている。その人の事を生き返す方法を必死になって探し出す! そして必ず生き返らせる! ゲームの世界のような復活の魔法でも何でもいい。あるいは何処かの国で人体再生の技術、そんなものがもうあるのかも知れない」 


「えっ……洸、何言ってんの。そんな事できる筈──」


「それがダメなら、そうだな──タイムトラベル何てどうだろう? タイムマシンで時間逆行を行い、昔のその人の事を救い出す!」


「……洸、言ってる事がもうムチャクチャ……」


「それもダメだったら……う~ん、後は映画とかでよくあるパラレルワールド? その別の平行世界にいるその人の事を必死になって探し出す! そして見付け出す!」


「……それで、それでもどうしてもダメだったら……その時はどうする?」


 ……どうしても……ダメだったら?……か……。


「……その時は……もう、その人の事は諦める。そしてその人の分まで幸せになって生きる様、精いっぱい頑張って、めいっぱい努力して……幸せになる……」


 久遠は──彼女は俺のその言葉に、瞳を潤わせていた。


「きっと、先に死んだその人は、ロミオとジュリエット……そんな事は望まないと思うから。生き残って自分の分まで幸せになってくれる事を願うだろうから……だから、俺はそう思う……」


「うん、私もそう思う……やっぱり君はとてもいい人。ずっと一緒にいたいと思う人……」


 彼女は涙を浮かべた目でそう呟く。


「……たまらないよ。私、どんどん満たされてくよ──」


 そして俺に対しニコッと微笑んでくれた。



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