表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか醒める久遠  作者: Ayuwan
3章 悲闘
17/36

16話 新たなる影

よろしくお願い致します。

 ───


 強烈な咆哮を放った後。その異形の王は、怒り狂った様に身体から複数の触手を伸ばし、叩き付けてきた!


 触手による連続攻撃──俺はそれを次々とかわしながら、念動力(サイコキネシス)によってひとつひとつ潰していく。


 皆が脱出する──その時間を稼ぐ為、銃による攻撃を男の上半身に、『能力』による攻撃を迫ってくる触手に、それぞれ対応し、往なしていく。


 ──やがてケンジ達、生存者を乗せた複数の車輌が去って行くのを俺は確認した。


 ───


 手にした銃を放り投げ、代わりに愛用のサバイバルナイフを取り出し、刃先を出す。そして念じた──『能力』を使う為に。


 ───


「………」


 低い音と共に右手に発生する青白い光の剣。それを振りかざしながら怪物の元へと駆け出す──行く手を遮る怪物の触手を次々と溶断し、最後にその身体に剣を突き立てた!


 ──ジュッと、肉が焦げる音と匂いが感覚として伝わってくる。


 そのまま突き立てた剣で横へと切り裂き、再び身体へと突き立てる! 次に俺は剣を持たない左手のひらを、前に突き出して『能力』を行使した。


 左手の先から一直線状に伸びる青白い光線!


 怪物の身体がその光線によって貫かれ、傷口が超高温の熱で焼き爛れる! そして光線を放ったままの手を、怪物の身体を切り刻むかの様に、ゆっくりと移動させ、交差させていく。


 右手に持つ光の剣、左手からの光線、その攻撃により、怪物の肉体はことごとく破壊され、終わりに──


 ──ゴトリ。 そう音を立てて、俺の足元に焼き切られた男の上半身が落ちてきた。


 ……切断された男の上半身は、まるで地面から生えている様に直立している。


 そんな光景の中、また俺と怪物の男の目が合った! その瞬間、再び割れるような頭痛に目が霞み、最早立っている事ができなくなっていた。


「──ぐっ! ぐうぅぅ……」


 片膝を着き、地面に崩れ込む。


 ───


 ……くっ! よりによってこんな時に──こいつはまだ死んだ訳じゃない!……まずい! このままじゃ……。


 ──ジジジと、音が聞こえる訳ではないが、そんな音を連想させる様に視界にノイズが生じ、目に入る光景が歪んでいく……その歪んでくる視界の中、俺の方へと向かい、伸びてくる怪物の触手の姿が……。


 ───


 ──くそっ! ここまでか! もう無理っぽいな──お前は……お前は、許してくれるか……?


 俺は心の中で無念と、先に死んでしまう事になるかも知れない……その事に対して、あいつに謝罪の言葉を思い浮かべた。



 ─────



 『──ダメっ!──そんなの、絶対に許さないっ!!──』



 ─────



 ……そっか。やっぱ、お前は許してくれないか……って──なっ、なんだ今の声は!?


 ───


 その直後、誰もいないはずの周囲から銃声が轟いてきた!──ひとつではなかった……ふたつ、みっつ──いや、もっとだ!


 一体誰が? まだ生き残ってる奴がいるのか?


 俺は頭痛に耐えながら周囲を見回し、今の状況を確認する。


「──!!」


 ──そこには俺の周りを、それこそ俺の事を護る様にして、さまざまな種類の多数の“銃だけ”が、まるで意志の持つ者の様に、それ単体で宙に浮いていた。


 おそらく死んでいった男達が手にしていた銃なのだろう。


 それらが俺の周囲で浮遊し、全ての銃口を怪物へと向けている──そして独りでにトリガーを引き、一斉にその銃弾を怪物に浴びせていた!


「す、すげぇ……」


 ──こんな凄い芸当やってのけるのは、あいつしかいない。


 あいつは今、遠く離れた場所にいる筈……でも、そうか、俺の事。ずっと見守っててくれたのか……それで今は何処かで、俺の事を助けようとしてくれてるんだな……。


 全く、どんだけ反則級な『能力』なんだよ……末恐ろしいわ……。


 ──やっぱ、あいつはスゲーな!!


 それに勇気付けられた俺は、頭に続く激痛に何とか耐え、そして立ち上がった。


 怪物の本体である蛇の様な身体は、もはや先程の銃撃により、粉々にただの肉片と化していた。


 今、俺の目の前には地面に立つ上半身の男。その姿だけがあった。


 ──っ!?


 ……また、再び視界にノイズが走る──目に入る光景が、歪み始め様とする……。


 ──上半身の男が言葉を発する為、静かに口を動かした。



 ─────



『──ジュリ……ボクハココダ……キミハ、ドコニ……?』


 ───


 頭に直接響いてくるその声に、俺は意識を朦朧とさせながらも、ある一台の車輌を探しに歩き出す……そして何とかそれを見付け出し、その車輌からある物を取り出した。


 ……そのまま、よろよろとした足取りで、上半身の男の元へと向かう。


 ───


 ──ジジジ……また。視界が歪む──



 ─────



『──僕はロミ、ロミだ……ああ、愛しのジュリ──君は今、一体何処にいるんだ……?』


 俺は手にしていた物を男へと手渡した。


 男へと手渡したのは、彼の半身である女の怪物の亡骸……。


 男はそれを愛おしそうにその両腕で抱き締めた。


 ……俺の視界から世界がなくなり、残ったのは平面すらない。ただ、真っ白なだけの空間──

 

 その中でふたりの赤くて黒い、男女が抱き合っていた。


 ───


『──ああ、ジュリ! ジュリ!……やっと逢えた。やっと僕の元へと帰ってきてくれた……もう二度と君の事を離さない……例え死んだとしても、僕達はずっと一緒だ──そう、()()()()()()──』



 ……そうか、こいつも俺と同じだ。ずっと愛しい者の事を追い求めてたんだ─って、えっ!?── 一体、()()()なんだ──?


 そしてその怪物の男が口にした言葉を最後に、抱き合うふたりの姿も溶け合う様に絡まり、遂には消え失せる。


 真っ白な空間。残されたのは俺、ただひとり──やがて、俺は前のめりにくずれ落ちた。


 ───


 ──だんだん意識が遠退いていく──


 俺は目を閉じた──


 ───


 ふと何か、足音が近付くのを感じ、俺はかろうじて目をこじ開けた……ぼやける視界の中、自分以外誰も存在しない筈の真っ白なこの空間の中で──


 ───


「やあ、やっと会う事ができた──僕は君にすごく興味があるんだよね」


 ………。


「歓迎するよ、特別な“力”を持つ『能力体』くん──さあ、じゃあ行こうか」


 ──ひとり、()()()が立っていた──もうそこまでが限界だった。


 ───


 ──こいつは一体、()()()()


 ─────


 ────


 ───


 そして俺の意識はなくなった。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ