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いつか醒める久遠  作者: Ayuwan
3章 悲闘
14/36

13話 悪夢

今回も短いです。


よろしくお願い致します。

 ───


 赤く熱せられた灼熱の礫、小さな石の雨、それがひとしきり降り注いだ後、崩れ落ちる瓦礫と舞い上がる炎の中──


 今、俺は恐怖と絶望に打ちひしがれていた。


 腕の中にあるのは、物言わぬ者となってしまった幼馴染み……。


「──マリ……」


 彼女のシンボルだった大きなポニーテール。その頭を強く抱き締める。


 目の前にいるのは、二体の人間の形を象った、黒っぽい肌に赤い筋をびっしりと浮かせた怪物、『変異体』……。


 その頭部とおぼしき箇所には──


「……親父、母さん……何で、こんな……」


 見慣れた顔が張り付いていた──その目は虚ろで、もはや生気を感じ取る事はできない……ただ、かつて自分の両親であった者が異形の怪物となり、今、俺の事を襲い掛かろうと身構えていた。


 俺の命を奪おうと──


 ──その爪で!! 


 ──その牙で!!


「──うっ! うああああああっ!!」


 目から涙が流れ落ちた。悲しみも多分、あったんだと思う……でも、それよりも……。


 ただ怖かった。ひたすらに恐ろしかった。なにより死にたくなかった。


 ──だから……。


「くるなっ!」


 頭の中で思った。そして念じた。


「俺に近づくなっ!!」


 目の前から消えてなくなってしまえと……。


「──あああああああああっ!!」


 もう訳が分からなくなって、ただがむしゃらにそう念じた。


 俺は無意識に右手のひらを前へと突き出す。それと同時にその先から、青白い光が稲妻のような電撃となって迸った。

 それを受けた二体の怪物の身体が……。


 ──焼かれ、裂かれ、砕け散る。


 辺りに飛散する赤い体液。その体液が、ポニーテールの頭を胸に抱き締めたままの俺に降り注ぐ。


 身体を赤く染め上げながら、俺はその“力”を使い続けた。


「──うあっ! わあああああああああーーっ!!」


 言葉にならない奇声を発しながら、“力”を抑え切れず暴走する。


 やがて、“力”を使い果たした俺は、崩れるように地に両膝を着いた。目の前に焼き爛れた瓦礫の山だけが目に入ってくる。

 怪物となった両親の姿は、すでに消し飛んでどこにもなかった。


 ここで初めて気付く──これは自分がやったのだと……。


 ──頭の中で念じる事によって発生した“力”によって、俺がやったのだと……。


「………」


 俺は骸となった幼馴染みを抱き締める力を強くする。


「マリ、マリ……親父、母さん……」


 涙を流しながらそう呟く。


 ──そして絶望した──


 ……………。


 …………。


 ………。


 ───


 そこで、いつもその場面で目が覚める。久しぶりに見た、いつものあの「悪夢」


 ……いや、昔の記憶か……。


 上半身を起こしながら、ゆっくり現実へと覚醒する──うつ向きながら目頭を手で覆う。


 ……そう。俺は昔、あの時。この手の中でマリと言う名の幼馴染みを失い、この手で自らの両親の命を奪ったのだ……大切なものを失い、代償として得たのはその行為を行った“力”、『能力』と呼ばれるものだった。


 三年前。マリを招き入れての両親と俺、四人での自宅での夕食会──習慣じみた日常の時だった。

 そんな時、あの隕石群による悲劇が起こった。


 それは全てを破壊した。平穏と感じていた日常さえも……。

 

 それ以来、俺はこの夢にずっと悩まされ続けながらも生きている。そして、もうその事に関して深く悲しんだり、嘆く感情は大分、薄らいでしまっていた。開き直ったと言えるのかも知れない。だって仕方ないだろう?


 この世界はこうなってしまったのだから……こんなイカれた世界でも、生きている限り時間は経過する。だったら、もう何もかも受け入れて、前に進んで行くしかないじゃんかよ。


 ───


 その思考を止めるため、俺は軽く頭を振った。


 目を開けると飛び込んでくるのは、見慣れた飾り気の無い、少し歪んだ俺達の寝室。

 ふと横に目をやると、使用されていない布団が畳まれた、もうひとつのベッドが確認できた。


 ──そっか。今日もあいつはいないんだったな……。


「お前が用意してくれていた睡眠薬。今回、ダメだった……悪いな……」


 今はいない相棒に、そう呟く……あいつがいない。その事に少しの虚無感が生じてくる。


 俺はその感情を振り払う様に、もう一度頭を振る。



 ──そして、立ち上がった。



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