天才たる所以
ザワザワ…
ここは冒険者ギルドの地下にある闘技場。そしてその真ん中には二人の男が向かい合う。
一人はさえない顔つきの男で髪は鮮やかな黄緑色で髪が目を少し隠している。片手にはボロボロの片手剣を握っている。
一方、反対側には金色の髪をした真ん中分けの少年が立っていた。こちらは先程の少年とは打って変わり、自信に溢れたような雰囲気がある。手には黄色の水晶を木の枝がらせん状に包んだ杖を持っている。見事なできばえで誰が見ても高価な物と分かる。
「ヒャハハ!!やっちまえ、マルクス!!」
「潰せ!!潰せ!!潰せ!!」
金色の髪をした男、マルクスの応援する者で闘技場は満席だ。
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「おい、賭けをしようぜ。」
「あ?なんのだよ?」
「マルクスかスハナかどっちが勝つかだよ。」
「そんなのマルクスに決まってんじゃねえか!」
「ハハハ、やっぱりかよ…。これじゃあ賭けになんねえな。」
「そりゃ天才と言われるマルクスと落ちこぼれのスハナじゃあ仕方ねえよ。」
「一方的な暴力で終わりそうだなこりゃ。」
「あぁ…、スハナもマルクスに決闘を挑むなんておかしなことをしたもんだぜ。」
「……もしかしたらスハナには何か勝つ可能性があるからマルクスに挑んだのかもしれねぇぞ。」
「はぁ?………まぁ、俺たち万年低級冒険者からしたら落ちこぼれのスハナが天才のマルクスを倒してくれれば面白いが……その確率は限りなくゼロに近いだろうなぁ。」
「………やっぱりか…。なんたってあのマルクスにはあのスキルがあるからなぁ。」
「あぁ。あのスキルは反則だぜ。……………だが、もし、もしスハナが勝つなんて奇跡があるなら見てみてよ。落ちこぼれでも天才に勝てるところをよ…。」
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「おい、スハナ!俺に決闘を挑んだことを後悔させてやる!」
マルクスは高らかにスハナに勝利宣言をした。
「ぼ、僕だってマルクスくんには負けない…。前の、前までの僕とは違う!!今の僕は君を越えるんだ!!」
体を震えさせながらスハナはマルクスに反抗する。前までのスハナにはなかったことだ。その反応を見てマルクスはさらに怒りが溢れる。
「なんだ…、その反抗的な目は?そんな目が一生出来ないように格の違いを教えてやるよ!!」
「両者、ルールは分かっているな?」
冒険者ギルドの社員である男がスハナとマルクスの間に入り、決闘のルールを2人に聞く。マルクスとスハナは無言で頷く。
「よし!ではこれより決闘を始める!!両者、私が持っているこの金貨が落ちたと同時に決闘を始めること!破ればどうなるかは分かっているな…。では始め!!」
ピィィィィン!
金貨が指ではじかれ真上に上がる。くるくると回りながら天井付近まで上がると物理法則に従って降下していく。
カンッ!カララララン!!
金貨が落ちた瞬間スハナはマルクスに一直線に走る。その速度はチーターのような速さで観客の冒険者たちも驚く。
「なっ!?あのガキ、あんなに速い動きが出来たのか!!?」
C級のパーティーであるケンタウロスのリーダー、バルタルスが思わず口を開けて驚く。当然だろう。今まで鈍足と馬鹿にしていたのに突然ある日、自分より速い速度で動かれると今まで騙されたように感じるのだ。
「あ、あの野郎……。」
ギリィ…
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「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
スハナが片手剣をマルクスに向け一直線に走る。その勢いは当たれば確実にマルクスを貫く。
「そんな単調な攻撃が当たると思っているのか?舐めるなよ!!」
杖を前に出し、呪文を唱える。
「天空より舞い降りし白き雷鳴よ、裁きを与えたまへ!!
サンダーボルト!!」
すると闘技場の中にも関わらず天井に雲が出来た。
ゴロゴロ!
そして雲から雷がスハナを狙って落ちてきた。
ガラガラガラガゴオォォォォォ-ン!!
「ぐあぁぁぁぁぁぁーー!!」
スハナは体中が黒くなり皮膚は赤黒く変わった。血が吹き出しその周りは焼けて黒い。
「終わったな………。」
一人の観客がポツリと言った。
「あぁ…、仕方ないさ。マルクスのスキル《雷魔法》には誰も手も足も出ないさ…。」
「やっぱり、天才には勝てないってことか…。分かっていたことだが目の辺りにするとどうも悔しいぜ…。」
「……だがスハナも良くやったよ。あんな速力があるなんて驚いたよ。」
「あぁ…、だがこの決闘は降参を宣言するか、死ぬまで終わらない…。そしてスハナは倒れて身体どころか口すら動かない。つまりスハナが死ななきゃ決闘は終わらないってことだ。」
「………スハナのやつ、なんでこんな無謀なことやったんだよ!!あいつは才能はないし、いじめられっ子だったけど奴には人を思いやる心があった…。それだけで奴は立派な冒険者だったに!!」
「…クソ!!スハナーーー!!!起きろよーーー!!こんなところで倒れてんじゃねえぞ!!お前は、お前は伝説の冒険者になるって言う夢があるんだろ!!!起きろぉぉぉ!!スハナ!!!」
冒険者パーティーであるケンタウロスのメンバーはそれを聞いて笑う。
「ハッハッハッハッハッハッハッハ!!!」
「馬鹿な奴らだ!!そもそも天才と落ちこぼれじゃ勝負は決まっていたんだよ!!それにマルクスの雷魔法をくらって立ち上がれる奴なんていねぇーんだよ!!ハッハッハッハ!」




