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自我自強

クイの奥義である《自喰自強(オートファジー)》を発動した。すると160㎝ほどしかなかったクイの身体がみるみるうちに大きくなっていく。そして3mまで大きくなり力の無い細身の腕は筋肉に覆われた見事な腕になっていた。全体で見れば先程の姿とは打って変わり、まるで鬼のような姿をしている。


「な、何だその姿は…?」


さすがにガゼルも驚かずにはいられない。今見たことを現実と受け止めることが誰が出来ようか?いや常人には決して出来ない。


「これが僕の奥義、《自喰自強(オートファジー)》だ!君に今の僕を止められるかな?」


クイの幼さの残っていた高音から変わって辺り一面を響かせるほどの重量音に変わった。


ガゼルは気合いを入れ直し、目の前にいるヴァンパイアを倒すことだけに集中した。


「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


ガゼルはまず槍で中距離の攻撃をする。その肥大した筋肉で攻撃されればただではすまないため、距離をとって攻撃をした。

しかしクイはいとも簡単に槍を掴み、槍を両手で掴んでいたガゼルもろとも引っ張りクイの元まで強制的に来させた。


「なっ!!」


ガゼルは力尽くで中距離から近距離の攻撃範囲まで来させられたことに恐怖を感じた。


クソっ!こいつの馬鹿力にもほどがあんだろ!!中距離からやつの得意そうな近距離へと来た以上覚悟するしかないようだな。…だがまだ俺の有利は変わらない。なぜならウグイの魔法を見破られていない。魔法が見破られないかぎり俺の勝ちは揺るがない!


ガゼルが槍を離してクイの視覚を奪うために内ポケットから取り出した隠しナイフを右手に持ちクイの目に突き刺す。それは見事に当たりクイの左目を奪った。が、クイは何もなかったかのように一瞬のブレもなくガゼルを片手で掴んだ。ちょうどガゼルの首を掴む形になり片手でガゼルを持ち上げている。


「がはっ!!…は、離せ!」


「僕の片目を奪ったんだからお互い様じゃないか。」


クイは左目から血が流出しているが気にした様子はなく、完全にガゼルにしか目に入っているようだった。


「しかし今の僕にとってこんな傷など無傷に等しい。」


左目に刺さっているナイフを左手で強引に抜く。勢いよく出血するかに思えたが出血はしなかった。なぜか?答えはすでに治っていたからだ。


「ば、馬鹿な…。どうして、目が治っているんだ…。」


「君も気になるかい?…この状態はヴァンパイアの血に僕の細胞を喰らわし、本来ある能力を活性化させている状態なんだよ。それによりヴァンパイアでも普通なら治らない傷も治ると言うわけだ。ま、それだけじゃなく力も上がるし、夜になることでステータスが上がる能力も更に増えているおかげで今の姿になっているんだが、…そろそろ君たちの時間稼ぎもいいころじゃないかい?」


「なっ、気づいていたのか…。」


「当然だよ。君が僕に勝つには君の仲間であるウグイとかいうサンライ族の協力が必要だろう。そして彼がここに来るまでの時間稼ぎをしたと言うわけだ。フフフ、実に分かりやすい見るに耐えない作戦だよ。」


「…なら、なぜわざと時間稼ぎをさせたんだ?お前なら、今すぐに俺の首を折れば俺らに勝ち目はなくなるのに…。」


「フハハハハハハハハハ!!…面白い話だね。君の存在などすでに分かっているよ…動像(ゴーレム)くん。」


「なっ、何を言っているんだ!?」


「君はウグイというサンライ族に造られた生物の動像(ゴーレム)だ。君が何度も消えたように見えたのは君が崩れて地面に落ち、周りの土と同化したせいで煙のように消えたに過ぎない。そしてガゼルという役をした動像(ゴーレム)は何体もいる。いやこの地面にも何体かの動像(ゴーレム)が隠れている。違うかい、ウグイくん?」


「…。」


クイが掴んでいるガゼルは何も喋らない。目に映る光が一切無くガゼルの目は濁って見えた。


「…確かにお前の言う通りだ。」


そう話すのはサンライ族でありガゼルという架空の人物を造った男、ウグイ=サンライだった。


「まさか動像(ゴーレム)がバレるとはな。首を掴んだときにでも分かったのか?」


「700年生きた僕の知識を持ってすれば君の魔法も作戦も所詮は子供騙しさ。この僕を騙すことは出来ない。」


「なるほど、理解した。お前は俺の策略を邪魔する危険人物だとな。立ち上がれ、我が動像(ゴーレム)よ。」


ウグイの周りにガゼルの形をした動像(ゴーレム)が12体現れた。


「さぁ、第2ラウンドといこうか。」

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