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クイの本気

「ハハハハハハ!!…まずは1人だ。あとは貴様をやって次はあそこにいる女ヴァンパイアを殺る(や )だけだ!!」


ガゼルはラセンとミレイが戦っている場所を指さして高らかに笑う。


「ふふふ…。」


クイは不気味に微笑する。その様子はガゼルに対して馬鹿にしているように見えた。


「…何がおかしい?」


「ふっ…君は黒炎魔法を使う魔法使いが炎魔法ごときに倒されるとでも思っているのかい!?」


「なっ!?」


急いでガゼルは先程ラウルが炎の球体の中に取り込まれた場所を見る。しかしガゼルが後ろを振り返った時にはすでに炎で出来た球体は無く、そこには黒い炎が体を包む全身鎧(フルプレート)を着た男、ラウル=フレイムが赤き剣を振り下げていた。


「ぐはあっっっっっっっっっ!!!…今のは効いたぞ!!だが!!お前は最大の過ちを犯した!!」


「過ちだと~?…何のことだ?」


「それは、俺が確実にお前を殺したと油断しているあの瞬間に俺を殺さなかったことだ!!」


先程の隙にサンライ族のリーダーであるガゼル=サンライを倒せなかったことは最大のチャンスをものに出来なかったと言わざるを得ない。

だが、それは彼らではなかった場合だ。


「ヒャハハハハハハハ!!こいつは傑作だぜ!!」


「フフ、笑うのは失礼だぞ。フフ…。」


「な、何がおかしい!??それとも気が狂ったか!?」


少ししてラウルとクイの笑いが収まった。しかし未だに微笑して口元がにやけている。


「確かにお前を一撃で倒せなかったことは残念だったが、俺たちには夜が来る!!」


「夜だと~?……はっ!!!ま、まさか!!」


「そうさ。君たちサンライ族の種族バフは終わり、僕達ヴァンパイア族の種族バフが始まるのさ!!」


サンライ族の種族バフとは太陽が昇る限りサンライ族は全ステータスが向上する。しかしそれはサンライ族と対になるヴァンパイア族にも存在する。ヴァンパイア族は夜がくると全ステータス向上と似て非になる能力だ。


「は、初めから時間を長引かせるのが狙いだったのか!!?」


「ヒャハハハ!!先程まで同等の実力だったが今は違うぜ!てめぇの力は衰え、俺らの力は上がった!これで終わりだ!!」


ラウルが全力で走りだした。先程までのスピードとは比べものにならないほど速くガゼルに剣を突き刺そうと構えた。ガゼルは全ステータスがおち逆にラウルの全ステータスが向上したせいで反応することが出来なかった。


しかし突き刺そうとした瞬間、ラウルの黒炎で出来た全身鎧(フルプレート)が弾け飛んだ。


「なっ!!クソっ、さすがに魔力がきれちまったか。」


勇者である静香と対面した時から黒炎暗黒騎士モードを発動してすでに1時間は経っていた。ラウルの多大な魔力も尽き、全ステータスが大きくおちた。


「フハハハハ!お前もすでに魔力が無いようだな!!これならば俺のほうが有利だな!!俺は槍使いと肉弾戦が得意だがお前は魔法使い。つまり黒炎の鎧をつけなければただの魔法使いに過ぎん。それに魔力も空ではもはやボンクラよ!」


ガゼルは槍をラウルに向かって突き刺す。それは見事に当たり、ラウルの腹から刃が突き出る。


「ガハッ…………っけ、さすがに効いたぜ。」


「ラウル!!大丈夫か!?」


クイがラウルの元まで駆けつける。しかしサンライ族のウグイが前に立ちはだかる。


「どけっ!!」


クイの周りに半透明の青白い光が円上に現れる。そして瞬く間に魔術が構成され、発動する。


「世界の原種たる星の恵よ、我に力を貸したまえ!!《リーフカッター》」


クイは木属性魔法である《リーフカッター》を唱えた。クイの周りに無数の葉っぱが現れ、勢いよくウグイめがけて飛んでいく。


「…。」


ウグイは何やら小さな声で詠唱を唱え初めある魔法を発動した。

それは防御魔法である《土壁層(ウォールバリア)》だ。ウグイの周りにある土が動き出し、ウグイを包む。それにより、クイの放った《リーフカッター》は土壁に跳ね返された。


しかしクイはそれを気にする素振りはなく、ラウルの元まで走る。ウグイが《土壁層》を発動しているせいでウグイは外の状況を把握出来ず、クイをラウルの元まで行かせてしまった。


「…しまった。」


           :

           :

           :


「ラウル!!おい、ラウル!!生きているのか!?」


クイがラウルの元まで来たときにはすでに瀕死の状態だった。


「…ウグイめ、何をやっているんだ。」


ウグイのいる方向を見て、愚痴をこぼす。


「……なん、だよ…。こっち…は俺、が…死ぬと……思っ、ている…の、かよ。」


「ばかやろう、そんな状態でよく言えるな。今、回復魔法を使う!!」


「や、めろ。……その、魔力……は奴ら、を倒すの……につ、かえ。」


「そんなの出来るわけ無いだろう!!今治療しなかったら君は間違いなく死んでしまう、それでもいいのか!?」


「ふっ、クイ、お前……しかいないんだ。……あっち、の方も、お…わったみ、た…いだし、な…。」


それはヴァンパイア族のラセンとサンライ族のミレイのことだ。いくつものクレーターのような穴があいていた。そして2人とも横に倒れていた。どちらも死んではなく、気絶している。


「クソっ!ラセンも倒れているなら、マーレイに頼もう!!」


「や、めと……け。あい、つはし、んよう…なら、ねぇ。な、にかま………た…たく、らんでいる。」


「……この際なりふり構っている場合じゃないだろ!!」


「だ、めだ!!や、つは危、険すぎ……る。…この、勝負、が……終わっ、たら……何か、するだ…ろう。そ……のとき、にお、前が人間たち、を助け……るんだ。…………わりぃ、ちょっ…と眠い、から寝る……わ…。」


「ダメだ!!ラウル、寝るな!!」


ラウルはクイに笑顔を見せて静かに目を閉じた。

クイは歯を食いしばる。ここですべきは友を思い、泣くことではない。サンライ族を倒し、ラウルの望んでいた人間とヴァンパイア族が手と手を取り合った世界を目指すべきなのだ。しかしそう簡単に目的に向かって進むことは長年生きたクイでも出来ない。

少しクイは目をつぶり、5秒ほどで目を開けた。


「君の夢を果たすまでは僕も死ねないな。……サンライ族よ、覚悟しろ。これを使えばしばらくは何も出来なくなってしまうが仕方が無い。見せてやる、僕の奥義を!!喰らえ、ヴァンパイア族の血よ。そして対価として力を与えたたまへ!《自喰自強(オートファジー)》」

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