狂気のヴァンパイア
「おい、アンリ。てめえどういうつもりだ!?」
ヴァンパイアのラウルがメイを刺し殺した女、アンリ=ビィンデットに怒りをぶつける。
アンリは楽しそうに笑いながらラウルの問いに答えた。
「アハハハハハハハハ!!あの2人を見ていると無性に殺したくなっちゃってね!!女が死んだときのあの男の悲しみの顔や叫び声は最高だったわね!!あの男がすでに助からないと分かりつつも女を助けようとしているさまは、ほんっっっっとに笑かしてくれたわね!アハハハハ!!!」
アンリの狂気じみた笑顔と笑い声が響き渡る。その笑い声にアルスだけでなくなぜかラウルまで顔をしかめる。
「…んなこと知らねえんだよ!!せっかくいい女の血を飲めると思ったのによ…。おい、金ピカ。悪いがお前との戦いはやめだ。」
「へ?金ピカ…?俺のことを言ってるのか?……すまないが俺も冒険者として君たちを野放しにするわけにいかない。それにアンリという女は絶対に許さない!!何の罪もない人を殺すなんて!!」
アルスが剣を構えてアンリの元まで飛び出した。
「あら?次はあなたが私を笑わせてくれるの?」
アンリは嘲笑うようにアルスを挑発するがアルスは何も言わずに剣を振るう。しかしアンリはいとも簡単にその剣筋を避ける。
「フフフ、あなたさっきからラウルに対してもそれしかしてこなかったけど他に何もないの?」
「なるほどね。君も少しはやるようだから僕も力を解放しようかな。」
するとアルスの周りから金色の光が現れる。その光は徐々にアルスに近づいていき、アルスを包み込む。
その瞬間光が強くなり目を開けられないほどの光でアンリとラウルは目をつぶってしまう。瞼を開けるとそこには全身を包み込む金色の全身鎧を着てあり、顔も金色の鎧をつけてあり、まるでどこかのヒーローのような姿をしていた。
「何をしたのかしら?」
アンリは余裕げに聞くが本心では頭が危険と警告音が鳴っていた。
な、何なの!!?変な姿になってから雰囲気が先程までとは全く違うわ。先程までは取るに足らない弱い男だと思ったのに今はまるっきり逆で頭がこいつは危険と伝えてくるわ。…こちらも本気でいかないといけないわね…。
「この姿になった僕を止められた者は1人も居ない。君には罪を償ってもらう!!いくぞ!!」
「あなたにやれるかし、ギャァァァァァァァァ!!」
アンリが余裕ぶっている間にアルスが不意を突いてアンリの後ろをとり、剣で斬りつけた。
「悪いけど君をさっさと倒して他に助けを求めている人たちの元へ行きたいんだ!!」
「痛いわね…。よくも、よくも私の背中に傷を負わしてくれたわね!!もう、絶対に許さないわ!!!!」
アンリが激怒したときだった。
グサァァァァ!!
「え?…どういうことなの……ラウル?」
なぜかラウルがアンリの腹を爪で突き刺していた。
まるでメイがアンリにやられたときのように。
「どういうことなのよ!!ラウル!!」
「…ヒャハハハハハハハハハハハハハ!!!何でだと?そんなのてめぇが1番分かってんだろ!!俺の喉を潤そうとしたのにアンリ、てめぇが邪魔をしたからだよ!!俺が本気でてめぇを殺そうとしないとでも思っていたのか?…バカいえよ。例え、マーレイでも俺の邪魔をするなら殺すぜ。」
「…そ、んな……。」
バタッ!
意外にもアンリは呆気なく死んでしまった。アルスは先程よりも警戒心を強めた。
この姿になったのにラウルの動きが読めないなんて。
この男はかなり危険だな…。
「さて、さっさと次の血を求めに行くか…。」
「な、何!!?待て、ラウル!!逃げるのか!?」
「…さっきはそこに転がっている女の血を吸うために邪魔なてめぇを倒そうとしたがその女はアンリによって死んだ以上、てめぇと戦う理由がない。」
「ふざけるな!!君たちヴァンパイアを野放しにすることは出来ない!僕が全てのヴァンパイアを倒してやる。うぉぉぉぉ!!」
アルスは覚悟を決めて走り出す。その速さは並の冒険者には決して見ることの出来ない領域だ。
彼の姿の秘密はスキル《魔法憑依(光)》である。
《魔法憑依》とは決められた魔法の属性を体に憑依させ、力を得るスキルだ。その力は魔法の属性によって違うが必ず最低でも5000は上がるのだ。これによってアルスは伝説のSS級まで上がることが出来た。
しかし、このスキルにも弱点がある。それは憑依させるのに莫大な魔力を必要とすることだ。憑依を維持するために1秒に10の魔力を使うこのスキルは魔力切れになりやすく、アルスはアンリの戦いからずっと維持しているため、すでに魔力が切れかかっている状況だから短期決戦に持ち込もうと急いで勝負を決めるつもりだった。
「だ~か~ら~、てめえには興味ないって言ってんだろ!!」
ラウルは右手を前に出して詠唱を唱えだした。
「地獄より生まれし混沌なる炎よ、その姿を表せ!!
《黒炎竜》」
するとラウルの右手から黒い炎の竜がアルスを襲う。
「な、どういうことだ!!?」
「どうせ、この鋭い爪で戦う近距離型とでも思ってたんだろうが違うぜ。俺は魔法使いだ!!それも魔法の中でも上位属性の《黒炎魔法》を使うことが出来るな!!」




