彼岸花と薫衣草
ダン…ダン……
静かにゆっくりとバスケットボールを地面につく。そのままドリブルのスピードを上げて、複雑に足の間に通したり、回したりしてから、そのまま踏み切りダンクを決めた。
「相変わらず、豪快なプレイスタイルだな。リク。」「…なんやセイカかいな。何用や。用がないんなら帰ってや。」
ふと視線を上げると、コートの入り口にはセイカが、皮肉っぽい笑みを浮かべて立っていた。その皮肉っぽい表情をしていても、境界の主であるエリーゼから『花を征するが如く美しい』と評価されたその容姿では、何をしても美しく見える。
その事実が、余計に俺の中にある苛つきという名の感情を増幅させた。
「用がないなら話しかけたりするか、馬鹿たれ。ただ、お前に聞きたいことがあってな。…リクは自分が死んだ時や死ぬ原因を覚えているかい?」
「あ?…当たり前やろが。1日だって忘れた事ないわ。忘れられるわけないやろ。それがどうしたんや。」
そう問うと、曰く先程自分の過去を何となく思い出していたので、他の奴のも聞きたくなった、と答えた。コイツもコイツで相変わらず突飛な事を思いつくものだと半ば呆れた。
しかしまあ、練習するのも疲れてきたところなので気分転換とまではいかないまでも、休憩中に話す話題としては良いかもしれない。仕方ないので、今日くらいはこの性悪、セイカの遊びに付き合ってやる事にした