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「其方が我の声を聞いた者か?」
と人の声が聞こえ、キリコは腕を下ろし瞼を開けた。
そこにたって居たのは神主の様な格好をした男。
「…誰?」
怪訝そうにキリコは目の前の怪しい奴を見る。
「我は 安倍晴明」
「安倍晴明?」
キリコが聞き返すと、晴明はゆっくりと頷いた。
「我の声が聞こえるものを探していた、我の手を取り共に行こう」
晴明の手がキリコに差し出され、キリコも恐る恐る手を伸ばした。
刹那、目の前を何かが勢い良く通り過ぎる。
「!?」
キリコは驚いて手を引っ込め、晴明はその何かを睨んでいた。
「ようよう!久しぶりだなぁ、晴明!」
好戦的な態度でやってきたのは、鬼の様な風貌の男性。
「…酒呑童子…」
忌々しげに名前を呟き、その男性を睨んだ。
「相変わらず、手が汚ぇな!ソイツは俺が呼んだんだ!」
「……え?」
キリコは酒呑童子と安倍晴明を交互に見る。
「何を言う。彼女は我と行く」
さあ、と安倍晴明は再びキリコに手を伸ばす。
「おい!暁キリコ!」
「え?私の名前…」
「暁家!十三代目!暁キリコ!」
酒呑童子がキリコを指差し、叫ぶ。
「お前は!この酒呑童子の血を引く娘!」
「……え?どういうこと?」
酒呑童子の言っていることが分からず、キリコは首を傾げる。
「まったく、嘘の上手い鬼めが。我が祓おう!」
安倍晴明は五芒星の紙を空へ投げれば、細い狐が何匹も現れ、安倍晴明を囲う。
「キリコ!どっちが真実か、お前なら分かるはずだ!」
「そんな事言われてもっ」
「暁家の教えを思い出せ!」
「教え!?」
キリコは、幼い頃に母達から教わった事を一生懸命思い出す。
『キリコ…、あなたは鬼の血を引いているの。だから鬼の力になってあげなさい、いいわね?』
『はーい』
『まったく、ちゃんと聞いてるの?』
思い出せたという事は、ちゃんと聞いていたと言う事。しかし、キリコにはどうしていいか分からない。
「鬼の力…に……鬼の力って!?」
「行け!クダギツネ!目覚めたばかりの鬼、これで充分だ!」
安倍晴明が扇を酒呑童子に向ければ、クダギツネ達が一斉に酒呑童子へと襲いかかる。