あまつ空なる、君を恋ふ(4)
「――――――木津あまね、感情面にやや心配はあるも極めて優秀、と。さすが暴走除霊車。将来が楽しみだな」
あまねが無事なのを遠目から確認してから、直愛は吹っ飛ばされ、河原の片隅で意識を失っていた、頼朝に憑いていた「犬神」に近付いた。それは、小さな白い犬だった。
「やあ。平家の怨霊よ」
声をかけると、赤い目がぱっちりと開き、犬はしゃがみこんだ直愛を見た。
続いて、逆毛を立てて、威嚇を始める。
「随分、引っかき回してくれたけど……もう、遊びはお終いだ。ゆっくり眠ろうね」
直愛は、そっとその頭に右手を翳すと、呪を口ずさんだ。
「天切る、地切る、八方切る、天に八違、地に十の文字、秘音、一も十々、二も十々、三も十々、四も十々――」
そして、左手で印を切った。
「ふっ切って放つ、さんぴらり」
ジュッと音を立てて、犬神が消える。
直愛は、フッと短い息を吐くと、立ち上がり、両手を天へと突きだすように伸びをした。
そして、懐から黒塗りの手帳を取り出し中を覗き込む。
マーブル状になっていた頁に、意味を成さない文字が次々浮き上がり……やがて、それらはきちんと整列して、歴史を紡いだ。
「時の流れは無事、未来に繋がった」
直愛は、パタリと手帳を閉めた。
「これにて一件落着、っと」
そう言って、彼は悠然と笑み、片目を閉じた。
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