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恋焦がれ
細く、綺麗な指が、少女の頬に添えられる。
自分とは違う、暖かい温度が、男の手から伝わってくる。
少女はこの手が好きだった。少女を優しく撫でるこの手が好きだった。
いつからだったろうか。
自分がこの男に恋してしまったと気付いたのは。
だか、いつまでもこのままではいられない。男は明日にはここから離れ、自分の故郷へと帰るのだ。
「離れたくありません…」
知らず知らずのうちに、声が漏れてしまう。
離れたくない。
このままずっと一緒にいたい。
そう思ってはいけないのに、なかなか気持ちは収まってくれない。
自分と男は住む世界が違う。違いすぎる。
そう、自分に言い聞かせる。
「私はすぐにこの地に戻ってきますよ」
少女の不安を気付いたのか、男から優しく言われる。
「本当ですか?」
少しばかり不安げに問うと、男は微笑んで首を縦に降る。
少女は男の事を信じ、その場を離れた。
それは、この後待ち受ける、残酷な結末など知らず、少女は幸せに満ちていた日々だった。