不快な目覚め
初投稿です
暖かい目でお願いします
銃声。
怒声。
悲鳴。
母が叫ぶ。
逃げろ、と。
印を組む手は止めぬまま、母は必死に叫ぶ。
母に近ずく無数の人影。
母と自分を、守ってくれていた者たちは床に倒れ、息もしていない。
何故こうなった?
何故、皆倒れている?
突如、母の前に、一つの影が現れる。
母の体を貫く、黒い剣。
目の前に飛び散る鮮血。
「ごめんね」
それが母の最後の言葉であった。
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けたたましいアラームの音で目を覚ました。
先ほどまで目の前に広がっていた光景はどこにもない。
現状を理解できぬまま、枕元に置いてある目覚まし時計へと手を伸ばす。
午前四時。
どうりで窓の外が暗いはずだ。
少年は眠たい目をこすりながらアラームを止める。
とりあえず現状把握。
一、昔の夢を見ていた。
二、午前四時という時間に目覚ましが鳴った。目覚ましは六時にかけていたはず。
三、何故か掛け布団が一つも無い。
四、とにかく寒い。
そこまで考えて、少年は自分の置かれている状況を、全て理解した。
四月。
春になったとはいえ、まだ肌寒い。寒さに弱い少年には寒すぎるくらいだ。
それを知っているくせに、布団を一つ残らず持っていく馬鹿は一人しか考えられない。まして、目覚ましを四時に合わせる馬鹿となれば、尚更疑いは強くなる。
俺は眠たい目をこすりながら廊下へと出る。そのまま、隣の部屋の扉を開け中を確認する。
部屋の中は広く、布団が左右に分かれ二つ敷かれてある。
俺は扉側、つまり左側の布団に近づいた。頭まですっぽり被られた布団は規則正しく上下に動いている。
爆睡しているのだろう。
布団に手をかけ、ゆっくりと引き離す。この布団は自分のだ。
拳を握りしめ、思いっきり寝ている者の顔めがけ拳を下ろした。
「うわっ…⁉︎えっ?痛っ⁉︎」
悲鳴と共に飛び起きた瞬間に蹴りを腹に入れる。
「布団は返してもらおう」
「えっ⁉︎いや…ちょっと待てよ‼︎」
後ろから聞こえる声を無視し、部屋へと戻った。
不快な目覚めだと思いながら。