糸杉の森にて 4
短いです。・゜(゜⊃ω⊂゜)゜・。
何度目かのまどろみの後、レミニアリスはパチリと目を覚ます。心地よかった腕のぬくもりは既になく、男物の上着がかけられていた。
「…帰っちゃったのかしら」
確かシャロットの足跡を追ってきたと言っていた気がする。しかし、別の木に括りつけられた白馬がぐるぐると木の周りを回っていた。
「綺麗な馬……。てことは、まだこの辺りにいるのよね」
体に付着した木の苔を払い落としながら立ち上がると、不自然な光がよぎる。そういえば助けてくれた男の人はきらきらしい蜂蜜色の髪をしていたような……。
「あ、起きてるし……。なんだよ、びっくりさせてやろうと思ったのに」
やはり、きらきらしい髪をした彼は迷いなくこちらへ来るとぴたりとレミニアリスの前で歩みを止める。上着を羽織らず、ボタンをゆるめたラフな服装だ。
「どうだ、……覚醒したか?」
…思い出した。自分は初対面の人間に寝顔と居眠りというダブルパンチを食らわしてしまったのだった。
羞恥にかあぁっと頬が赤くなり、レミニアリスはぷいっとそっぽを向く。
「……ご迷惑おかけしました。それと、上着も」
「どういたしまして。…で、帰り方を教えて欲しいんだけど」
上着を受け取ると彼はバサリと羽織った。
なんだろう、この上から命令されている感じは。確かに自分のほうが圧倒的に否はあるものの、こうまで高圧的になられると少しながらムッとする。それを隠しながらシャロットに近付き、彼女の毛並みを撫でてやる。
「ここは糸杉の森の最奥。遊歩道まで戻れば厩舎に辿り着けます。あなたはどこの厩舎から馬を引いてきたのですか?」
「東の厩舎だ」
端的に応えた彼はひらりと軽い身のこなしで馬に飛び乗る。
「…同じですね。では、そこまでご一緒させてもらいます」
レミニアリスもシャロットの背に跨り、遊歩道へ向けて馬の足を向ける。
少し傾きかけた陽の中で、二人は無言だった。
──────だが、あえて名を明かさず、無言になったことで予想外のことが起こるなんて露ほども考えていなかった。
土日に書きまくります( ´o` )