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婚約者は 10

ノエルが「嗚呼…」とうめき声を上げ、シェスはあ然としている。


「……王太子殿下?どうかなさったのですか?」


手近なカウチに見を沈めたルベルトは胡乱げな目をレミニアリスへ投げかける。ルベルトが何故、そんな目をしてるのかレミニアリスにはわからない。


「私、何か変なこと言いましたか?」


首をひねると耳元でシャラリと天青石が鳴る。この衣装は派手過ぎると思う。ルベルトは「綺麗だ」と言ってくれたが、ドレスに着られているような気がしてならない。


ルベルトは「あー」や「うわー」と何かを嘆いている様だ。


「くくくく…。残念ですねぇ、殿下。私としては皇女殿下のようなお人を歓迎したいですけど」


あ然としていたシェスが立ち直り、ニヤニヤとしながらルベルトへ近寄る。


「……それどころじゃねぇだろ、この状況…」


「あのー?なぜ私はそんな可哀想なものを見る目で見られているのでしょうか……」


「姫様、もう…暴走しないでください。それと申し上げることがあったのでは?」


どこまでもマイペースな主を止めるべく、ノエルが動いた。そして、レミニアリスは昨日の湯殿の一件を思い出し、赤くなってその場にうずくまる。


「…どうした?どこか具合でも───────」


ルベルトは気遣うようにレミニアリスの隣へ来る。そんなルベルトをノエルは冷やかな目で見ていたが。


「私は大変なことをしてしまったのかもしれません…」


「は??」


うるうると瞳に涙を溜めてレミニアリスは上目遣いにルベルトを見つめる。こういう時にかぎってレミニアリスは無意識だからタチが悪い。


「……セシリアに、妹に王太子殿下の事を好きだと言ってしまったのです。……よもや、お姉様から逃れたいからなどとあの子に言えませんっっ!」


どう反応してよいのやら…。ルベルトは固まる。するとシェスがポンと手を打った。


「……ならば、お二人が本当に好き合う恋人になればよいのではありませんか?」


「「!!」」


レミニアリスは飛び上がってノエルの影に隠れる。(といっても、小柄なノエルの影に長身のレミニアリスは隠れられないのだが。)ルベルトはルベルトで副官の提案に頬をひきつらせた。


「……どうですか?名案だと思うのですが」


「賛成します、シェス殿」


ノエルからのまさかの同意にレミニアリスは「嘘っ?!」と珍妙な叫び声を上げる。


「本当に不本意ながら……姫様は王太子殿下のことを好いておられる、という噂がすでに宮廷中に流れておりますので。そのことを考慮してもよろしいかと思われます」


「…だそうですよ、殿下。ノエル殿のお許しも得ましたし、おふたりでどうぞ~」


失礼します、と礼を残して2人はさっさと退散してしまう。


「……ここへ来るまでに感じた視線はそーゆーことだったのか…」


「どーゆーことですか?」


「ええと…その、想い人…」


「………」


その意味をようやく理解してレミニアリスはまた赤くなる。さっきよりも体感温度が上がった気がしたレミニアリスは手で扇を作ってパタパタと仰ぐ。


「こ、こうなればいっそのこと、演じきってやります!」


意思表明をしたつもりなのだが、ルベルトの気はのらないらしい。


「……。頑張りましょう、王太子殿下!私、最低まで好きになれるようにがんばりますよ!」


これまた笑顔で、とことん自分の道を突っ走るレミニアリスに遂にルベルトは頭を抱えた。


「どうしろって言うんだよ………!!」

人物紹介について投稿するつもりです。


連続で投下します<(_ _;)>

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