婚約者は 5
するりと腕をからませた状態から抜け出す(自分からしたのだか)とミュリリアンヌは度肝を抜かれたようにポカンとしていた。
「……レア様の、婚約者…?」
「そうですわ、お姉様」
ですよね?とルベルトに同意を求めると彼は軽く頷く。
「あぁ。……ザーシュバルド王太子、ルベルト・シュリアード。…以後お見知りおきを」
そう言って軽く会釈した。2人へ跪いて挨拶するという事をしなかったのは、「俺に関わらないでくれ」と暗に言っているのかもしれない。
「……。第四皇女、エリザベートですわ。こちらはミュリリアンヌ」
端的にエリザベートは答えるとふいっとその足をエントランスの入り口に向ける。
「エルザ姉様?!お話はよろしいのですか……っ?」
これに慌てたのはミュリリアンヌだ。驚いたように姉に声をかけ、その後ろ姿を追いかける。
「……ええ。興味がなくなってしまったの。もういいわ。ミュリー、行きましょう」
先刻までの怒りはどこへ消えたのか、仮面をかぶったように無表情で淡々としていた。ミュリリアンヌは理解ができない、とでも言いたげに顔をしかめると姉に従って同じようにエントランスの奥に消える。
そして、エントランスに残された面々は皇女の急な変わり様に首をかしげた。
「………おかしいわ。少なくとも、お姉様はあんなにあっさりした性格ではないはずなのに…」
「姫様、それは言ってはなりませんよ」
ノエルが苦笑しつつ注意する。そしてレミニアリスは感謝の念を込めてルベルトを見据えた。
「王太子殿下、ありがとうございます。お姉様を追い返すことが出来ました」
「おいおい、かなり言ってることがきわどいぞ…」
姉妹の間の亀裂にルベルトは頬をひきつらせる。
「よいのです。……お姉様の癇癪でここにいる皆様に迷惑がかからなかったのですもの」
「……詮索はしないつもりだか、安心はしないほうがいいと思うぞ。あの2人、なにやら……」
異母姉妹の後ろ姿を見つめるレミニアリスにルベルトの忠告は、闇に溶けて消えた。
******
ミュリリアンヌは自分たちに与えられている宮殿の一部屋へ入ると、すぐさま声を荒らげてエリザベートを責める。
「エルザ姉様、どういうことですの!!お母様から───」
「お黙り、ミュリー。あの方の……王太子殿下のことが少しでも知れればよかったのですもの。……ふふ。いま見てなさい、レミニアリス。お母様を陥れたアリナディス様も許さいないわ。今こそ、お母様のお役に立つときなんだもの…」
赤い唇から紡ぎだす言葉には、長年の恨みと嫉妬、羨望が詰まっていた。
「レミニアリス……いいえ、レア様。あなたには、舞台から降りていただかなくては……」
怪しげに笑みを交わす2人を突き動かすのは忘れられた母への思いだった。
中間テストで更新が遅れていました。m(_ _)m
私事ですが、イイ線いくかも……です。
よろしくおねがいします.<(_ _;)>