双子と目 上
約30年前----
「いってきます!」
ある、暑い暑い夏の日。
白いシャツに半ズボン、麦わら帽子のそっくりな双子の少年のうちの一人、三蔵が手を上げた。
「行ってらっしゃい。気を付けてね。毎回言ってるけど、いい?二人とも、竜手さまのところへは、行っちゃダメだからね。」
赤い帯の和服を着た女性、三蔵の母親がそういって仁に水筒を渡した。
仁はそれを笑って受け取ると、背中のリュックに仕舞い込む。
「わかってるよ。じゃ、行こうぜ!仁!」
三蔵がそういって駆け出した。
「あ、待ってよ三蔵、、、いってきます!」
慌てて仁も駆け出し、三蔵の後についた。
「今日はどこいく?」
「んー、二枚岩までは?」
「えー、、、怖いよう。あんまり奥まで行っちゃいけないんだよ?」
「大丈夫だよ。俺たちもう五年生だぜ?」
「えー、、、、」
「行こうぜ、仁」
三蔵が仁の手を引っ張り、山道をあるいてゆく。刺すような日差しが、眩しかった。
やがて日光があまり届かない程深い森の場所へ来た頃、仁はある事に気がついた。
「三蔵、、、、僕たち、さっきからずっと同じとこ回ってるよ」
仁の言葉に三蔵は足を止める。
おかしいのである。三蔵の言う「二枚岩」は、深い森を3分も歩かず抜けてすぐだった。
ずっと前、上級生に連れられて二人は来たことがあるから覚えていた。
増してや確かに仁は帰り道を覚えようと必死に歩数を数えていた。
「えー。ほらみろよ仁、あの蝶珍しいんだぜ。ゲンじいんとこ持ってけば高く売れるって。そーすりゃあアレ、買えるぜ?」
三蔵は納得が行かない、とでも言うように不満そうに声を上げる。
アレ、とは。
仁が前に小間物屋で見た、珍しい懐中時計の事だ。
鎖は銀で出来ているが、時計盤はコバルトブルーの陽に当たると色々な色に輝く貝で出来ていて、見た者は一度は心を奪われる物だ。
「・・・・っ。いいよ、また今度にしよう。だから・・?」
三蔵がぴたり、とまるで時間が止まったように動かないのを見て、仁は不審に思った。
それから、嫌な雰囲気があたりを巡る。
気付けば霧が深くなり、三蔵の顔も霞む程だった。
夏だと言うのに鳥肌が立つような冷気が漂う。身体が硬直し、鉛にでもなったかのように怠かった。
逃げ出したい、という気持ちを必死に抑え、三蔵の顔を覗きこんだ。
どくん、と途端に心臓が高鳴り出す。
「・・・三蔵?」
喉の奥から、絞り出すようにつぶやく。
三蔵はゆっくりと、唇を動かした。
仁は本能的に、聞きたくないと思った。
「・・・・・兄ちゃん、
動かないよ、俺の足」