夜の決断
「桂!どういうこと?桂の瞳が選ばれたって!」
茜が焦った表情で桂につめよる。
桂は少し黙ってぼんやりと地面を見つめていた。
やがて顔を上げ、諦めたように笑った。
「・・・仕方ないさ。これも運命だ。」
その言葉に茜は益々顔を強張らせる。
桂の笑顔は、夕焼けに溶けそうな程眩しかった。
茜は地面に視線を下ろし、そんなの、と呟いた。
「・・・そんなの、許さないよ、旭ちゃんが。」
ぽつり、と蚊の鳴くような声で茜が呟いた。
その言葉に今はもういない彼女の姿を思い描き、確かに、と笑った。
確かに彼女なら、桂が危ない目に合うような時、決まって周囲に抗議をした。
「・・・旭、か。目が見えなくなったら・・会えるかな。」
「・・桂!?何を言ってるの!?桂までいなくなったら!私っ!」
茜が声を荒げる。桂ははは、と苦笑いした。
程よい風が吹き、葉を舞い上げた。
「・・大丈夫だよ、茜。俺は居なくならない。二人で、生きてくんだろ?ここで、自由になるまで。」
桂の言葉に茜はでも、、と言葉を詰まらせた。
「・・・大丈夫さ。それに、この村をこのままにはしない」
桂は自分に言いきかせるように、強く言い放った。
茜はただ泣きそうになりながら桂を見ていた。
夕焼けが黒ずんできたような空だった。