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 モニカは、雨の乾き切っていない斜面を滑り降りた。モニカに抱えられた修が悲鳴とも歓声ともつかない声を上げる。林道へ降りると、修を下ろして

背中を押した。

 「うわー、モニカ姉ちゃんすっげえ! もう1回やってよ!」

 修はジェラハに気付いていないようだ。

 「後で何度でもやってあげるから、今は走りなさい! 来た道を戻るのよ!」

 「え、なんで? 今やって・・・よ?」

 言葉の途中で修の顔が強張った。振り返ると、木々の間から大きな顎を持った8本足の大きな甲虫の4つの目がモニカの背後からこちらを見返していた。伏せた状態で頭をもたげると、頭の高さはモニカの胸ほどある。その巨大な虫は、前に突き出したノコギリのような顎をこすり合わせてギチギチと不快な音を鳴らした。ジェラハ・・・惑星ケトゥリの危険生物が、なぜ故郷から遠く離れた地球にいるのか。


 「パ、パープルレギオンだー!!」

 修は叫びながら踵を返すと、一目散に駆け出した。それを合図にしたように1匹、2匹と木の陰から同じ形の昆虫が姿を現す。黒い光沢がある甲殻は、先端が鋭い刃のようとがっていて、触っただけで切れてしまいそうだ。

 3匹が顎を開いてモニカめがけて迫る。モニカも反対方向へ走りながら素早くトスラー銃を抜くと、振り向きざまに先頭の1匹めがけて引き金を引いた。銃から放たれた光線が頭の横をかすめ、前脚の付根を穿つ。

 紫色の血液が飛沫を上げるが、ジェラハは気にも止めない様子で追ってくる。モニカが足を止めて何度も引き金を引くと、前脚が千切れ飛び、地面に倒れた。すぐに狙いを定め、4つ目の真ん中を撃ち抜く。ジェラハは顎を激しく打ち鳴らしながら、ひっくり返って地面をのたうった。後ろから来た2匹が、倒れたジェラハが格好の獲物と見るや、ターゲットを変えて仲間に襲いかかった。

 大きな顎で音を立てながら、仲間の体を噛みちぎった。解体されるジェラハの苦悶の声があたりに響く。仲間も見境無しか。モニカは嫌悪感を押し殺して仲間を喰らうジェラハに狙いを定めた。しかし、左手の斜面を別のジェラハが鋭い爪を突き出して駆け下りて来る。網膜のモニターで、一瞬先に気付いたモニカが大きく跳んでかわすと、ジェラハの顎が地面をえぐった。モニカは、着地した時に踏んだ石が靴の下で転がり、体勢を崩してしまう。そこに右手の茂みからさらにもう1匹のジェラハが飛び出した。膝を付いたモニカに逃げ場はない。ジェラハが顎を開き、モニカの喉元めがけて迫った。


 獲物を捕らえたと確信したジェラハだったが、急に4つの目に映る視界が回転した。モニカの目前でジェラハの頭が窪んだと思うと、大きく後ろに回りながら弾き飛ばされた。すぐにもう1匹のジェラハが襲いかかるが、やはりモニカの寸前で固まったように動きを止める。ジェラハは大きく顎を開いてモニカに食らいつこうとするが、様子がおかしい。よく見ると、もがくように顔を震わせている。何か力が働いて、顎を無理矢理開かされているようだ。限界を超えて大きく開いたと思うと、左側の顎がねじ切れて飛んだ。ジェラハの口から血が吹き出すと、モニカの前の空間が血の色に染まり、紫色の影が浮かび上がる。

 「全部で5匹ね・・・ゼキノスを連れてきて正解だったわ」

 モニカの背中の蝶の羽根が虹色に輝き始める。

 「ステルスモード解除、アサルトモードへ移行・・・出力は50000グルス、ターゲットは5、加減は無用、全部殺して構わないわ」

 見えない扉を抜けるように、銀色の体躯が頭から少しずつ姿を現す。長身で痩せぎすの体から長い腕が伸び、左腕がジェラハの頭を掴んでいた。その姿は機械というより人間をそのまま模したように思えたが、よく見ると体を突き破るように何本ものチューブが飛び出し、また体の別の部位に突き刺さっていた。禿げ上がったようにつるつるの頭には瞳のない、金色の目が3つ正三角形のように並び、口元には大きなマスクを着けている。マスクからは太いチューブがぶら下がり、腰まで伸びていた。

 「ゼキノス、排除しなさい!」

 ゼキノスがマスク越しにくぐもった咆哮をあげる。周囲の木々が振動で震えた。ジェラハは突然現れた銀色の乱入者を怯えた目で見上げた。ゼキノスは左手に力を込めると、左手を包むように大きな刃が手首のあたりから飛び出し、掴んだジェラハの頭を貫いた。ゼキノスの手の中でジェラハが痙攣する。先ほどゼキノスに殴り飛ばされたジェラハがゼキノス目がけて襲いかかるが、ゼキノスは掴んだジェラハを投げつけ、すぐに下敷きになったジェラハに駆け寄ると、頭を蹴り潰した。


 仲間を喰らっていた2匹のジェラハが、食事を止めてその様子を遠巻きに見ていたが、顔を見合わせると申し合わせたようにゼキノスに向かって走り出した。顎を突き立てるように前にかざして突進する。ゼキノスは瞳のない目でジェラハを睨むと、右の拳の骨に当たる部分から4つの小さな突起がせり出した。飛びかかるジェラハの顎を避け、横に回り込んで腹を殴りつける。拳がジェラハの腹に当たった瞬間、爆発が起きてジェラハの体は胴体から2つに千切れた。体液を撒き散らしながら大きな腹が転がる。

 もう1匹の顎を左手の刃で弾くと、背中から地面に叩きつけるように右手で殴る。爆発が起き、ジェラハは背中に大穴を空けて地面を転げ回った。驚いたことにまだ息があるようだ。棘の生えた前脚で必死に地面を掻き、ゼキノスから逃れようとする。しかし、ジェラハのゆがんだ視界を黒い影が覆った。立ちはだかったモニカが銃を向ける。

 「せっかくこんな遠くの星まで長旅をして来たのに残念だったわね。でも、あなたがいるべき場所はここじゃないわ。星へ帰りなさい」

 トスラー銃が光を放ち、ジェラハの頭を穿った。


 モニカは、ジェラハが動かなくなったのを確認すると、死体の検分を始めた。そばにはゼキノスが辺りを窺っている。右手の甲からは煙が上がっていた。

 どうして地球にジェラハが? データベースを参照すると、ジェラハの幼体は大型の生物に付着して体液を吸うという記述がある。他の生物に卵を産み付けることがわかっており、卵に産み付ける例もあるようだが・・・。

 「すっげぇー! モニカ姉ちゃん、パープルレギオンを全部やっつけたの?」

 遠くの木の陰から修が声をかけた。

 「パープルレギオン? ああ、さっき話してた悪いやつ? ちょっと違うわ」

 「パープルレギオンだよ! 町中の犬を食べちゃったやつ! 口から人間を骨だけにしちゃう唾を吐くんだよ!」

 「ジェラハはそんな唾液を吐かないわよ。それにどうして犬だけ食べるの?」

 「モニカ姉ちゃん、キャリバーの仲間だったの!? そのロボットもかっけー!」

 修はモニカの話を聞かずに1人で盛り上がっていた。

 「まったく・・・触っちゃ駄目よ、危ないから」

 モニカはゼキノスの状態を確認した。網膜にゼキノスの姿が浮かび上がり、体の各箇所の情報が表示される。今の戦闘による外装の破損無し、磨耗部品の状態も問題なし。エネルギーの残量、武装も十分だ。ジェラハならあと100匹は相手にできるだろう。勿論、そんなのは御免だが。


 ゼキノスの状態に満足し、ジェラハの死体を解体しようとナイフを取り出した時、モニカの網膜に赤い点が浮かび上がった。

 「修、もう一度隠れなさい!」

 「えっ!?」

 ゼキノスに近づこうとしていた修が足を止める。

 粘度の高い液体を掻き混ぜるような音が聞こえて来た。振り向くと、坂の下から大きな薄桃色の、手足の無い、長い体の怪物が這い上がってくる。表面は粘液でぬらぬらと光り、溶けたろうそくのように幾重ものヒダを作っていた。頭をもたげると、縦に裂けた口から鋭い牙が覗く。目のない顔がモニカと修を捉えている。頭の上から2本の上下にフリルのような襞の付いた触手が飛び出し、下に転がっていたジェラハの腹部を巻き取ると、口へ放り込んで噛み砕いた。怪物の呼吸に合わせるように、体の表面に赤い斑点が浮かんでは消え、再び浮かび上がる。

 「なにあれ!? 気持ち悪ぃ・・・」

 「逃げるのよ! 早く!」

 「う、うん!」

 修は、再び坂の上に向かって走り出した。外形からデータベースを検索してみるが、ツァガーンと地球に該当する生物はいない。生体パルスから判断するとゲムトスではないようだが・・・。

 「虫の次はナメクジ? 全く、この星はどうなってるのかしら? 小人にでもなった気分だわ。次は巨大な鼠でも出て来るの?」

 モニカは銃を怪物に向けて引き金を引いた。しかし、銃から放たれた光線は弱々しく怪物の体に吸い込まれた。慌てて銃のエネルギー残量を見ると、ほとんど空っぽだった。モニカは舌打ちし、銃を投げ捨てる。

 「ゲムトスじゃないなら役不足だけど、仕方ないわね。行きなさい、ゼキノス!」


 ゼキノスは左手の甲から刃を繰り出すと、怪物に向かって走り出した。上から叩きつけてくる触手をかわし、刃を怪物の頭に突き立てる。しかし、怪物の表面を覆う粘液が刃を滑らせ、怪物に刺さることなく、皮膚をなぞるだけだった。粘液のゼリーに埋まった刃をすぐに引き抜くと、右の拳で殴りつけた。水面を叩くような音が響き、粘液が飛び散る。左右の拳で何度も殴りつけ、振りかぶって右ストレートを叩き込むと爆発が起こった。怪物が声を上げて仰け反る。

 「つえー! かっこいい!」

 修がすぐ後ろから歓声を上げる。

 「逃げなさいと言ったでしょう!」

 殴られた怪物の皮膚は黒く焦げ、桃色の血が滲んでいる。だが、致命傷を与えるには至らない。すぐにゼキノスに向き直ると2本の触手をムチのように振るった。1本がゼキノスの右腕に絡みつく。引っ張っても触手が伸びるだけで手応えがない。そこへ、怪物が口を開けてのしかかる。

 「何をしているの! 早く振りほどきなさい!」

 ゼキノスは左手の刃で触手を切り離し、怪物の体をかわした。すぐに怪物の頭部を何度も殴りつける。だが、粘液と弾力のある皮膚で力が逸らされてしまう。怪物の触手が今度はゼキノスの体を絡め取った。

 「ど、どうしよう! あのロボット、やられちゃうよ!」

 修がモニカのスカートを引っ張った。

 「大丈夫、あのぐらいの牙に噛まれたところでどうということは無いわ」

 怪物が大きく口を開ける。喉の奥まで逆向きに生えた牙が、回転する洗濯機のように動いていた。

 「本当に大丈夫なの!?」

 「平気よ・・・多分ね。でも、肉弾戦では相性が悪いみたいだわ。あれを使いましょう」


 モニカが何かを呟くと、背中の羽根が赤く光を帯びる。炎が燃えるように羽根を包み、修は目をすぼめた

 「頭部噴射口解放!」

 ゼキノスの後頭部のマスクの留め金がカチンと音を立てて外れた。続けて顎の留め金が開くと、長いホースのついたマスクは、蛇のように身をくねらせながら滑り落ちた。

 マスクの下には、空洞があった。銀色の人型の機体は、鼻の下から胸にかけて縦に大きくえぐり取られていた。他の鋭角的な作りに反して、その穴は子供が粘土をこねたように、ぐにゃりとだらしなく開いている。それは、下顎が溶け落ちたかのようにも見えた。銀色の体に空いた裂け目の中には、有機的な肉の襞が覗いており、不規則に小さな歯と思われる白い破片が飛び出していた。その奥から、ゼキノスが呼吸をするように、周期的に黄色い湯気のようなものが上がる。

 「ど、どうしたの、あのロボット? パープルレギオンにやられちゃったの?」

 ゼキノスの、裂傷にも見える口部を見た修が声をかける。

 「噴射口周辺の侵蝕が少し進んでいるけど・・・やられたわけじゃないわ。少し目をつぶってなさい」

 モニカは修の視界を遮るように羽根が輝きを増す。


 「大気成分、風向問題なし・・・ギレミール・ガス噴射!」

 モニカの声と同時に、ゼキノスの口の周辺が金色に輝き始め、すぐに怪物の頭が金色の煙に包まれた。煙の中で、怪物が悶え始める。ゼキノスを放り出し、周りの木に体を打ち付けながら転げ回った。煙が薄くなり、怪物の姿が再び姿を現すと、その頭部は焼けただれ、至る所で剥がれた皮膚が垂れ下がっている。解き放たれたゼキノスは、すぐに逃げ出そうとする怪物の体に飛び乗った。

 「どう、気持ちいいかしら? 粘膜だらけのあなたには少し刺激が強すぎたみたいね」

 モニカが嬉しそうに笑いながら囁いた。

 「タンパク質と反応して瞬時に細胞を破壊する素敵なガスよ。化け物に苦しめられた我々が開発した最新の対生物兵装の1つなのだけど、気に入ってくれたかしら? ナノマシンで制御した極小のカプセルに包んで体内に送り届けるから、私達に付着してもカプセルを破壊する命令を出さなければ問題無いし、周囲の環境にも優しいの。それでも長時間触れているとカプセルが腐蝕して金属も溶かしてしまうのだけど・・・まだ改良の余地があるわね」

 モニカはゼキノスの胸元まで垂れ下がった口を見て眉をひそめた。ゼキノスが再度、金色のガスを怪物に吐きかけた。怪物の皮膚が見る間に焼けただれていく。怪物は表皮を剥がしながら転げ回る。

 「このまま全身を分解してあげてもいいけれど・・・流石に可哀想かしら。熱くて苦しいそうだから、冷やしてあげるわ」

 ゼキノスの額の目が顔から飛び出すように大きくせり出すと、モニカの背中の羽根が青白く光り始めた。

 「デュケイロン振動停止光線、照射!」

 ゼキノスの額から青い光が怪物に向かって降り注ぐ。光が当たった所から怪物の体を霜が覆い始め、体をうねらせてもがく姿をそのまま、氷の彫像に変えて行った。

 「これがもう一つの対生物兵器、分子の振動を止める光よ。凍りつきなさい、醜悪な魂とともに! ギレミール・ガスの特別な反応も見せてあげるわ!」

 ただ凍るだけではない。怪物の頭部が内部から膨らみ、瘤を作っていく。瘤はある程度の大きさに膨張すると弾け、気泡の形のまま凍り付いた。ゼキノスが噴射したギレミール・ガスに含まれる極小のカプセルが反応して弾け、中の物質が爆発的に膨張したのだ。凍った葡萄のようになった怪物は、体を軋ませながら瘤の間から覗く口をわずかに動かしたが、すぐに完全な氷柱と化した。



 ゼキノスが凍った怪物の頭部を蹴って飛び降りると、怪物の上半身は崩れ落ちた。あたりには白い冷気に包まれ、周囲の樹木には真冬の朝のように、霜が張り付いている。

 「急ごしらえで付けてもらったから少し不安だったけど、開発部の連中もなかなかいい仕事をするじゃない。帰ったら報酬をはずんであげようかしら」

 モニカはトスラー銃を拾い上げながら、満足そうに呟いた。ふと思い出したように振り返ると、修が放心したように大きく口を開けて怪物を見つめていた。流石に子供にはショッキング過ぎただろうか。修が口をぱくぱくと動かす。

 「すっ・・・げー! そのロボット、超つえーよ!」

 修は我に返ると、飛び上がって喜んだ。

 「あんなでかいパープルレギオンをやっつけちゃった! すげー! ねえ、なんていうロボットなの?」

 モニカはほっと息をついた。悪影響を残すほどショックを受けたなら記憶を操作しなければならないと思ったが、杞憂だったようだ。

 「人型奇襲兵器のゼキノス・アルバ・キメニス11032型よ。ゼキノスと呼んで頂戴」

 ゼキノスが主人の側で地面に膝をついて服従する。口元からは黄色い煙がわずかに立ち上っていた。

 「ゼキノスって言うんだ! すげー、モニカ姉ちゃんの言うことはなんでも聞くの?」

 「そうよ、でもあまり近づいちゃ駄目よ」

 モニカはゼキノスに駆け寄ろうとした修のシャツの後ろ襟を掴んで止めた。

 「えー!? なんで?」

 「とても力が強いし、人の体に良くないものも使っているからよ」

 「大丈夫だよ!」

 修が不満そうにモニカを見上げる。

 「駄目! 皮膚が焼けてしまうわよ、あの怪物みたいに」

 「え・・・わ、わかった」

 実際はターゲット以外には作用しないようにカプセルを制御しているが、万が一の事がないとも言い切れない。

 「あなたは早くマスクをつけてその醜い顔を隠して頂戴。戦闘終了よ、ゼキノス。スタンバイモードへ移行、各部の冷却が終わり次第ステルスモードへ移行するのよ。この周辺の光学迷彩もお願いね」

 ゼキノスの目が了解、というように明滅すると、転がっていたマスクを拾い、頭の後ろで留め金をつけた。

 「さあ、帰りましょう。お母さんが夕飯を作って待ってるわよ」

 修の目が、今度は凍った怪物を興味津々で見ているのに気が付いたモニカは修の手を引いて歩き出した。

 「ねえ、あの怪物達はどうするの? 誰か見つけたらびっくりするんじゃないかな? パープルレギオンはやられるとすぐに爆発しちゃうんだけど・・・」

 「大丈夫よ、奴らもすぐに消えてしまうわ。少し爆発が遅れているだけよ」

 「うん・・・。でも、少し可哀想だな」

 修はモニカの左手をぎゅっと握った。

 「可哀想? キャリバーはたくさんパープルレギオンを倒しているんでしょう? 悪い奴はやっつけなければならないのよ」

 「そうだけど・・・さっきの奴らは血が出て苦しんでたし」

 修は前を向いたまま考え込んでいた。

 「・・・それじゃあ、お互いに戦わないで済む方法を考えなさいな」

 モニカは修の手を強く握り返した。

 「うん」

 修は、左手で絆創膏の上から頬を掻きながら答えた。

 「さっきの傷が痛むの?」

 「ううん、痛くないよ! でも、少し痒いんだ」

 「それじゃあ、家に帰ったら絆創膏を貼り変えましょうね」

 モニカ達が去った後の林は夕闇が濃くなり、後に残ったゼキノスも闇に溶けて行った。


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