サラリーマン、ドラゴンと戦う
「じゃあやろうか!」
いつものメンバーが集まった。何をするかと言うとTRPGである。おかりんが考えた、トランプを使った誰にでもできるTRPGだ。
「設定は?」
「やっぱりファンタジー?」
「いや、現代日本にしようよ! きっと笑える」
「真面目にやれ」
「いいんじゃね? ただし、敵が強いことが前提な」
「ドラゴンとか?」
「まぁまぁ、それはこのスペードの数で決めよう!」
進行役が引いた。
「ジャック!」
「なんだろ? 魔王とかはキングだろ?」
「やっぱりドラゴンだって!」
「はいはい、じゃあドラゴンね。で、三人は?」
「現代日本でしょ? フリーター? ニート? ユーチューバー?」
「これは山札からで」
「そうだね」すっ。
「クローバーの5、ダイヤの2、ダイヤの7」
「これは?」
「クローバーは登山家とか? ダイヤはなんだ??」
「じゃあ、俺はダイヤの2でいいよ! サラリーマンで!」
「なんで?」
「なんとなく!」
「ダイヤの2がサラリーマンなら7は国会議員とか?」
「それで行こう! ただ、クローバーは農家か漁師では?」
「あ! そだな……、じゃあ、農家! ヒーラーに徹します!」
「男ってほんとそういうの好きよね。恋愛ものしなよ」
彼女は紅一点のアドバイザー。自分たちでは気づかないことも、俯瞰して見てくれる。ただ、毎回お金を払っている……。
「と、言っても、まともにドラゴンと闘えるはずがないな。これはカードで」すっ。スペードの9。
「んー、翼を怪我して飛べないってことで!」
「いいよ!」「よし!!」「それで!」
「そして、フィールドは山札から」ハートの5。
「なるほど! ここは温泉だ! ドラゴンは傷を癒す為に来た!」
「歩いて?」
「あ、そか。なら翼を怪我してるのは、空を飛んでいて、飛行機とぶつかったとかで、落ちてきて、たまたま温泉だった?」
「性別は? きゃーのび◯さんのエッチ!」
「逆に傷広がらないか?」
「いや、そこはハート、やっぱり効能があるんだよ! だから、三人がダメージ受けたら入浴すればいい」
「それは人間ってか人数が多いこっち有利じゃない?」
「いや、アリを一度に踏みつける数は大きな動物ほど多いだろ? 仕方ないんだ」
「う、じゃ、じゃあもう一つ! 国会議員ってなんじゃい! 格闘家とかいくらでもあるでしょ!」
『あー!』四人の男がハモった。どれもバスくらい。
「国会議員やめて、剣道師範なんていい?」
「いいんじゃん?」「そうだな」
「サラリーマンは? 変えないの?」
「押忍! 2でしょ? クローバーでもハートでもあまり変わらんだろ。ならなんにでもできそうな、ファンタジーで言うなら転職前の無職!」
『サラリーマンじゃねぇじゃん!』三人と女一人がハモった。ゴスペラーズ。
「いや、だからサラリーマンなんだって! あとでわかるから!」
「ってかさ、とっとと始めない?」
『たしかにーぃー』ゴスペラーズ。
1ターン目。
「ドラゴン! ハートの6、スペードの3」
「俺! 農家はダイヤの3、スペードは8! なんだなんだ?」
「引くよ! ハートの7、スペードはエース……ぐは」
エースをキングより強いという設定にもできるが、それをすると、じゃあ2はその上だな、となり、果てしなくなってしまう。そこで作り出されたのが、おかりんTRPG用トランプ、各種類百まである!
「サラリーマンが通るよー! ダイヤの4、スペードは3」
「ドラゴンは間違いなく傷を治してるだろ? でも、初期ライフポイントから上がることはないだろ? だからドラゴンは何もなしじゃね?」
「いや、ハートは魔法にもなる。だって命を左右するんだからね。でも、そうだな、威嚇だな、三人が出てきたことにビビって炎でも吐いたんだろ。しかし、威力はほぼなし。ライフポイント判定はまだね? で、農家のダイヤと言えば野菜か農具による打撃、スペードが8もあるなら、農具はよく知らないけど、ドラゴンは結構痛かったんだね。「なるほど!」で、格闘家がハートって、これは魔法の一種だけど、強化だね。スペードがエースだから、攻撃型の強化じゃない。珍しいけど、防御にでもしてみるか。で、サラリーマン! 君は自分より強いダイヤだ。なんだね?」
「ふふふ! 簡単なこと! サラリーマンの武器は、営業!」
『は?』ゴスペラーない。
「だから! ドラゴン相手に戦わないで済む方法を模索するんだよ!」
「それいいかもね、どんな動物だって殺されたくないはず」
「でしょ!?」
「じゃあダメージ判定! ドラゴンはマイナス8、農家は変わらず、師範は強化されたが、炎で2くらいかなマイナス。サラリーマンは上手くいかなかったみたいだね。んで、多分装備もスーツだろうから、ちょっと火傷、但し、一過性のもので、マイナス4。異議は?」
「なし」「いいよ」「おーけー!」
「アドバイザーは?」
「まぁ、いいわ、今は」
「よしじゃあ次のターンだ!」
日本の空、突如何かが現れた。飛行機? いや、ドラゴンだ! ドローンと激突! そのドローンはプラスチックだが、ドローンショーのため集まった質のいいものだ。ドラゴンは飛行速度が速すぎてただのプラスチックどもがショットガンのようにドラゴンの翼へと当たり、ドラゴンは重傷を負った。そのまま落下し、そこは温泉街だった!
農夫、格闘家、サラリーマンとかち合い、炎を吐いて威嚇する。農夫は勇敢にもトラクターでぶつけ、ドラゴンは日和った。格闘家は気を溜めて隙を伺っている。そんな中、零細企業の営業である者がドラゴンと会話を試みるも危なかった。
2ターン目
「言い忘れてたけど、名前どうする? いる?」
「農家は俺だけだし……」
「俺もそうだ」
「サラリーマンサラリーマン、って面倒だから皿利と書いて【サトシ】!」
『……』なんだろう。ちょっと空気清浄機回したい。
「じゃあ、ドラゴン! ダイヤの5、スペードのクイーン!!!!」
『ええええ!』なんてこった!
「ヤバくないか?」
「いや、カード次第だよ」
「農家は、ハートの3、スペードは2かよ!」
「師範は、クローバーの9、スペードは4」
「サトシはダイヤの7、スペードは4」
「これは、大変だ。ドラゴンのダイヤ、つまり道具とか金とかってやっぱり、誰かを、ぱっくん?」
「かな?」「う」「そうでしょ!」
「農家っぽいな……、さっきの攻撃で恨み買っちゃったんだ……。師範は防御、もとい、臨戦態勢だからクローバー、温泉街……。そうだ! 木刀にしよう! 師範は格闘家ではなく、剣道の師範だった! 「なんで?」知らない? 剣道三倍段って。剣道は剣があれば、空手とかより三倍の段になるというやつ。だけど、ダメージはそんな与えられなかったみたいだね。食事に夢中なのかな? で、サトシはなんでダイヤばっか引くんだ?」
「サラリーマンが持ってるダイヤの7と言えば、車! 営業車でぶつかるよ!」
「でも、ダメージが低いんだが。まぁ、いいか。ドラゴン、ダメージ4くらいかな? 農家は防御系思い付かないから噛まれて、死んでなくても致命傷だろうな。あえてダメージ数は言わないよ。師範は、ドラゴンが激しく動いて、まあ、2くらいはダメージあってもよさそうかな? サトシは車の中ならノーダメージか」
ドラゴンが農夫をパクり! 口の大きさは余りないが、農夫は瀕死! 格闘家は剣道もやっていて、観光客から木刀を奪い、メーン! そのおかげで、農夫は助かったが、ダメージはほぼなし。サラリーマンが営業車で突っ込むも、尻尾から背中に乗り上げて、意味なし。
3ターン目
「さあさ、ドラゴン、ハートのジャック! スペードは6」
「農夫、一旦離脱します! 温泉で休む!」
『ダメ!』
「なぜ! 始めに温泉入れって!」
「多分そんな悠長にしていられないほどだと思うぞ?」
「むしろ、カード引いてハートのキングとか狙ったほうが」
「じゃ、そうするわ!」すっ。
「……。6。クローバーの……。これどうなんの?」
「まあ、待て、まだわからないから」
「師範いきます! クローバーの2、スペードはキング!!!!!」
「おお! でも、農家はダメでしょ……」
『落ち込みすぎ!』ゴスペラる。
「サトシ! いっきまーす! ハートの9、スペードは、も、9!」
「あれ? 今回結構ドラゴンやばくね? 農家よりヤバいかも」
「まじで?」
「ええと、まずドラゴン、ハートのジャック、これは間違いなく炎吐いたね。でも6か。あれだな! 弱っている農夫目掛けて、バーナーで炙るように吐いた、と。そういえば農家はスペード何?「なんだっていいよ。もう無理だよ」そんなことないぞ? スペードは確かにダメージの計算に使われるが、もし、ドラゴンより多かったら? あわよくば!」
「じゃあ、引こうかな」すすすさ。
「3……」
「御愁傷様です!」一同敬礼!
「んで、師範はクローバーの2ってのは、一見低いように見えるがスペードがキングなら、目とか弱点に当たったってことだな! と、なると、ダメージは20くらいはありそうだ。サトシー! お前いい仕事したな! 多分、ガソリンが漏れてる。んで、ドラゴンの吐いた炎で着火した。ドラゴンは火の耐性あるが、顔とか、絶対どこか弱いところはある! ドラゴンに追加でダメージ10しとこ!」
「なんか気前いいね」
「だって、次から、二人でドラゴンと戦うんだぞ? だからおまけ」
ドラゴンはレアは好きじゃないらしい。農夫をこんがり焼きあげた! その隙に師範は木刀で眼を潰した! が、完全には潰れていない! 背中のサラリーマンを気にして、振り返ってみると、営業車からガソリンが漏れてて、ドラゴンを包む!
「あのさー、もうここらへんでいいんじゃなあい?」
「なんでだい?」
「いや、アドバイザー的に、プレイヤーが一人抜けたら私いらなくなっちゃうじゃん」
「そんな事ないと思うけど、女性である必要が今回なかったかも知れない」
「じゃあ、ギャラは口座に、タクシー呼んで!」
渋々と女一人に男四人が対応。まるで、ドラゴンと人間みたいだ。




