表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

その3 何よりも体力が必要でしょう・・・具体的には若さかな、それ以前にまず健康である事じゃねーのかな

俺は救い手から暗殺者へ切り替わったオッサンの逃亡に唖然としながら、状況が何も好転していない事に気づかされて困惑した。


オッサンの立場からすれば、恐らくは自分の狩場である森に、見知らぬ格好をしたオッサン(不本意だが俺のコト)が座り込んでいて、話しかけても応えない上に手を上げて立ち上がった事に恐怖を感じたのだろうか?


俺は自慢ではないが、若い頃に空手を少々嗜んだ程度で、背が高いわけでも筋骨隆々と言う訳でもない。


つまり、見かけは普通の中年のオッサンだ。


それも少々メタボ気味な。


若い頃についた筋肉はダルダルで脂肪へとジョブチェンジし、偏った食生活で生活習慣病も患っている。


定期的に通院する必要がある程だ。


愛犬の散歩すら妻に任せっきりの状態では体力に自信なんてものはない。


それに・・・俺はオッサンが置いていった銃を持ち上げて見た。


俺が『銃』だと認識したそれは、オッサンがライフルのように構えていたからそう思ったのだが、手にすると俺が見知っていたものとはかなり異なった。


引き金が無いのだ。


第一、俺は本物の銃を手にした事が無かったし(モデルガンですら)シューティングゲームは不得意分野だった。


ゲームといったらRPGだろ?


使い方が全く判らないモノを使って狩猟民族になりきるには無理がある。


もし、使い方が判ったとしても、捕獲した獲物をどう処理すれば口にすることが出来るのか判らない。


動物の毛皮を裂いて骨を絶ち肉を切り裂くなんて事が文明社会で長年暮らしてきた俺に出来るはずも無い。


ああ・・・やっぱ死亡フラグが立つしかないのか?


大体、『異世界』に跳ばされるのは高校生と相場が決まってんじゃねーの?


オンノベじゃそーだろ?


それも美形でチートな能力を持ってる、っーのが流行りだと聞いてる。


小学生でも外見だけで中身は社会人とか、巫女とか神子とか、王子様にお姫様に惚れられて玉の輿だとか、魔王を倒す勇者だとか、逆に勇者を倒す魔王だとかの使命があったりするモンじゃねーの?


何もかもが俺には当て填まらない。


まず美形とは程遠いし、寒さに震えるだけでチートな能力とやらもなさそうだし、着ているパジャマに濡れている以外の違和感が無いから若返ったわけでもなさそうだし、神様の声とやらも聞こえてこないし、お城からの出迎えもなさそうだ。


何より俺、結婚してるしな。


不惑を過ぎてお姫様とのロマンスを期待するのは痛すぎるだろ?


妻に不満が無いわけじゃないが、それはお互い様だし。


子供が居ない分、夫婦とペットだけの生活は、いつまでもお互いの趣味を楽しんで気楽に過ごせていた筈なのに。


定年退職したら沖縄に引っ越して悠々自適に過ごそう何てアホみたいなこと話していたのは夢でしかないのかな。


何しろ、俺が病気をしちまったからな。


心臓近くの血管が詰らないように埋め込まれた金属のお陰で、血流を滞らせないように常に飲み続ける事が必要とされる薬。


1日たりとも飲むことを怠ってはいけないと医者にきつく言い渡されている薬は、身一つで跳ばされた俺の手元には無い。


リビングのカウンターに置かれたピルケースに納まっている薬を思い浮かべたところで手元に跳んで来る訳でもなさそうだ。


益々もって死を覚悟せねばならないのだろう。


何故、この俺がこんな目に逢うのだろうか?


いい加減に生きてきたツケを払わされたのだろうか?


家の事は全て妻に任せっきりで、家事を少しも手伝わなかったから?


俺が行方不明になって死んでしまったら・・・妻は泣いてくれるだろうか?


それとも老後の介護の必要が無くなってホッとするかな?


会社は急な事に困っても変わりはいくらでもいるだろうし、親は既に居ない、たった一人の姉も遠い外国で幸せに暮らしている。


思い残す事は・・・妻をあまり幸せに出来なかった事ぐらいだろうか?






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ