その2 異文化コミュニケーションには言葉が通じるか意志の疎通が最低限必要です・・・つーか言葉も意思も通じないんじゃ、誰が状況説明してくれんのよ
濡れたハジャマ姿でガタガタと震えている俺の目の前に現れたのは、髭だらけのむさ苦しい親父だった。
ここで現れたのが美少女だったり、美青年だったりすれば少しはホッと出来ただろうか?
いやいや、見覚えの無い場所で、綺麗なお姉ちゃんやお兄ちゃんと出会っても、怪しいだけだろう。
しかし、銃を持った厳ついオッサンと出会うのも、更なる生命の危険が増すばかりで、何の救いにもならない。
そして更に俺を不幸に陥れたのは、オッサンの言葉だった。
『△○×□』
ゲームのCMじゃないが、全く聞き取れなかった。
俺は自慢じゃないが、英語ならある程度理解できる。
しかし、オッサンが喋った言葉は全く聞いたことが無いものだった。
そしてオッサンはどう見ても日本人には見えなかった。
ああ・・・俺は心が折れる音を聞いたような気がした。
この寒さと冷たさは夢ではない事を激しく主張している。
自分の家の寝室から見知らぬ森の中のような場所に身体一つで運ばれるなんて。
同衾している愛娘は勿論の事、隣に寝ていた妻にだって出来る事じゃない筈だ。
いや、それとも妻は実は魔女だったとか?
稼ぎが悪い上に病気持ちの亭主に愛想を付かして異世界に飛ばしたとか?
在り得そうだな、と考えて俺は自分が居る場所が『異世界』である事をすんなりと受け入れている事に気づいた。
あ~ゲームのし過ぎかな?
それとも、オンノベに填まっている妻の影響か?
でも、だって、それ以外にこの状況をどう考えたらいい?
呆然としたまま問いかけに答えない俺を不審に思ったのか、猟師のような格好をしたオッサンが持っていた銃を構えた。
銃を向けられた俺は驚いて我に返り、両手を挙げて見たが、それが『降参』や『無抵抗』を表すものだと通じるのかという疑問が頭を過ぎった。
案の定、オッサンは銃を構える姿勢を崩さない。
「ま、待てよ!撃つな!」
思わず立ち上がると、オッサンは大きな声で何かを喚きながら銃を置いて走り去った。
おいおい、欲しいのは武器じゃなくて着替えと、取り敢えずは靴なんですけど。




