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夫が愛する妾との子供を認めない私は酷い悪女ですか?それならどうぞ、お好きになさって旦那様  作者: はなたろう


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3/4

【結婚生活 0年3ヶ月】 初夏のブルーサルビア➀

「今日もいいお天気ですね」



でも、少しばかり良すぎるかしら。白いコットンでできたパラソルでは、日差しは遮れても、暑さは防げません。



「急に暑くなりましたね」



マルス子爵夫人は、お茶をすすると同時に、おでこから出た汗を拭いました。私も扇子でパタパタと風を起こします。


初夏の庭園には、ブルーサルビアが見事に咲いています。色鮮やかな濃いブルーが一面に広がり、水辺を思わせました。


ここは、海から離れた領地なので、海水浴には縁がありません。川や湖にでも行きたいものですねぇ。



「たらいに水を入れて、足を浸しましょうか?」


「あら、それは涼しそうね」


「では、用意させましょう。メイドに声をかけてきますね」



マルス子爵夫人は、そう言って屋敷の中に入っていきました。話し相手がいなくなり、ふと、花壇に目を向けます。



「あら、雑草が目立つわね」



庭師に伝えておかないと。


夏場に元気なのは、雑草くらいかしら。すくすく育って困ります。


そのとき――。



「おーい、ルイディア」



先ほどの言葉を訂正いたしますわ。暑い夏場に元気なのが、もう1つ、いえ、1人おりました。



「どうかなさいました?旦那様」


「聞いてよ、ルイディア」



お祖父様と街に視察へ行っていたはず。今日の戻りは遅くなると聞いていたのに、なぜお茶の時間を邪魔するのでしょうか。



「おじいさま、腰痛で明日に延期だってさ」


「あら、そうですか。もうお年ですからね」



伯爵家の次男である旦那様は、婿養子として、数か月前に我が侯爵家に来たばかりです。家のしきたり、人間関係、領地について、覚えることは山ほどあります。


私たちの結婚を決めたお祖父様が、率先して教えていました。



「ルイディアはいつも、お茶をしてるね」



いつも――?人を暇人みたいに。


私の眉間がピクッと痙攣しましたが、そんなことに気がつく方ではないですね。悪気はないのでしょうが、暇人のように思われても困ります。



女性と言えども、私は正当な侯爵家の跡取りです。


数年前、爵位継承に関する法改定が行われました。


ひとつ。爵位の生前譲渡が認められたこと。

これにより、私のお祖父様は息子であるお父様に、侯爵の爵位を譲りご隠居されました。


ふたつ。女性の爵位継承が認められたこと。

ただし、嫡男がいない場合に限る。これにより、侯爵家の一人娘である私が、跡取りとなりました。


このような改革は、近隣諸国では珍しいと聞きます。


それでも、まだまだ男性社会。女性で自ら爵位を望む方は少ないのが現状です。女は政略結婚の駒であり、子を産む道具、美しく着飾る、夫を立てる、ましてや、政治には口を出さないことが美徳。


私のように、好んで領地経営に首を突っ込む令嬢は、希だと聞きます。


大好きな領地を離れ、知らない土地に嫁ぐのはまっぴらでしたから、これは願ってもないことでしたが。



「この焼き菓子美味しいね」



ただ、ひとつワガママを聞いてもらえるなら、結婚相手は自分で選びたかった――。



お祖父様と旦那様のお祖父様が決めたこと。当主の意向は絶対です。


とはいえ、頑固なお祖父様も、そろそろ後悔されている頃だと思います。



「私はこのティータイムを大切にしております。ですが、他のことはちゃんと行ってますから。旦那様も、私と共に領地を守り繁栄させる職務を、お忘れなきよう、お願いいたしますわ」


「うん、まかせて!ルイディアのためにもがんばるよ」



初夏の日差しと同じくらい、爽やかな笑顔ですこと。ただ、言葉にはまったく重みが感じられません。



「それより、はい。これあげるよ」


「あら、美味しそうなびわですね」



オレンジ色が美しい、ふっくらとした実が、籠にたくさん入っています。



「屋敷の裏山から取って来たんだ」



屋敷の北側は、森番の小屋や納屋、使われなくなった調度品を置く創庫があります。私を含め家族が行くことはほとんど無い場所です。



「なぜそのような場所へ?」


「え?」



声がワントーン上がりました。



「屋敷の周りも色々知っておこうと思って。ルイディアはびわ、キライ?」


「いえ、そんなことはありません」



ただ、妙にソワソワした素振りが気になるだけです。



「ルイディア様、お待たせしました」



マルス子爵夫人がメイドを2人連れて戻ってきました。メイドはたらいと水瓶を持っていました。



「あら、マートル様、ごきげんよう」



旦那様に気付き、片足を引いて挨拶をします。私の教育係だった彼女の挨拶は完璧です。



「やぁ。ごきげんよう、マルス子爵夫人、今日もきれいだね」



このような世辞の挨拶は、何ら不思議ではありません。



「じゃ、僕は席を外すね、やらなきゃいけないことを思い出した!」



そそくさと、逃げるようにする旦那様。


――なるほど。ピンときました。



「お待ちになって、旦那様」



背中がビクっと停止します。どこかで見た動き、そう、猫が驚いたときに似ています。



「お尻に葉っぱが付いてますわ。まったく、子供みたいですね」


「え?そう、ごめんよ」



スラリとした長身、程よく筋肉質な旦那様。そのお尻も、キュッと引き締まっているのが魅力的です。えぇ、とっても可愛いお尻だこと。



「いっ、痛い!!」


「あら、ごめんあそばせ。葉だけをつまむはずが、私ったら」



力いっぱい、つねり上げてしまいました。



「ドクダミの葉ですね」



マルス子爵夫人が呟きました。



「ドクダミなら、裏山にたくさん生えていますが……。何か気になるのですか?お嬢様」


「旦那様は、先ほど裏山に行かれたと言っていましたね。このびわを取られたとも」


「う、うん」


「美味しくいただいたのは、びわだけでしたか?」


「え?」


「食べたのは、甘いびわだけですか?」



ええ、さぞかし甘かったでしょうね――。


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