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第4章:我がレオンハルトは銀の道にあり ( 5 )


目的地である北の第一村に到着した時、時計の針は出発からわずか一時間半を示していた。以前なら半日はかかっていた距離だ。



ここから先にはまだ「銀の道」は伸びていない。



馬車を降りたオズワルドは、自分の足元の「銀色の道」を何度も杖で叩いた。



そこには泥一粒ついていない。



「……情報の檻、そして距離の檻。お前は、我々貴族が『統治の限界』だと諦めていた物理法則を、数字と技術でねじ伏せたというのか」



「いいえ、大叔父上。私はただ、無駄を削ぎ落としただけです」



アルスは、深々と頭を下げた。



「この道が王都まで繋がった時、レオンハルトの名は、王国で最も『富を運ぶ血脈』として語り継がれるでしょう。……予算の凍結、まだ続けられますか?」



オズワルドは長い沈黙の後、天を仰いだ。



「……アルス。法務官の優秀な若造がいたな。」



「はい、カイルと言います。」



「この道の全線開通に向けた、王都への認可手続きを急がせよ。……アルス、お前の言う『共同投資』とやら、私も一口乗せてもらおう。レオンハルトの威光を、この銀の道で証明して見せろ」


オズワルドは言葉を切ると、少し考えたあと目を上げた。その目にはぬらりと怪しい光が宿り、杖を握る手が白くなった。


オズワルドはポツポツと話し出した。


「……違うな。ワシにも手伝わせてくれ。アルス、いやレオンハルト子爵。ワシの負けだ。ワシは領地を見て回ったが、最初から最後まで王室に金を納めるべきだという考えは変わらなかった。しかし、実際に素晴らしい道と馬車に触れることで考えが変わった。実はな、領地を見ている時から気が付いてはいたのだ。ワシが知っていた領地とは全く違うという事を。」



「だが、私は認めたくなかった。兄として弟が治めていたこの土地が良いものだと言いたくなかった。私は父から受け継ぐはずだったこの土地を捨て、王都で生きようと決めた。ここの冬は厳しすぎる。逃げたのだ。」



「王都では誰も民のことなど気にしていない。私腹を肥やし、贅の限りを尽くし、王室からの甘い蜜を吸うだけの虫と化している。俺はこの領地の経営を見て、希望を持った。あぁ、俺がやりたかったことはこれなんだ、俺はこれを目指して生きるべきだったのだと思った。」



オズワルドは話しているうちに目が爛々と輝き、声も朗々と響き、杖も必要にならないくらい背が伸びた。



「………アルスよ、ワシ(・・)はな、昔から国とは民だと思っておったのだ。民の生活が無ければ我々貴族も生活できん。貴族がおらねば王一人で国を守らねばならない。民の生活を守るためには貴族が民を他国から守らねばならん。ワシは長い間、王を支えることこそ国を守ることだと信じてきた。国を強くするためには貴族や豪商が潤うことを良しとしてきたが、これからは違う。民のために金を使わせることこそが国を豊かに強くしていくのだ」



オズワルドは独白をした後、恥ずかしそうにアルスに背を向けてポツリと呟いた。



「ワシも少しは兄らしく、エドガーに一杯奢るとするかの。」



アルスからは見えなかったが、そこには背をピンと伸ばし、目を鷹のように鋭く光らせた財務局の重鎮がいた。



「さて、アレンよ。カイルを借りていくぞ」


目を爛々と輝かせた魔王オズワルドが従者のエレナと一緒に、笑顔でカイルを連れ去り、財務局という勇者を倒し『未来』を掴み取るために王都に向かった。


同時に自らの過去も受け入れた瞬間でもあった。


アルス、カイル、ジャック。そしてテラ。


異端の才能たちが紡いだ糸が、ついに巨大な権力を動かし、王国の形を変えようとしていた。

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