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境界の灯  作者: えるま
第二章 熾火の夢想

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第七話

「フェンリルにも確認するけど、魔術師って、どんな人間を想像する?」

 今度は、エリオットの方からフェンリルに疑問を投げかけた。

 フェンリルは、『……そうだな。』と呟いた。しばらく沈黙が流れる。

『……まぁ、俺たちが戦うには面倒くさい奴らってところだな。――お前の中に入って初めて知ったが、お前ら人間は俺たちと違って、魔力を集めないで体に貯蔵しているんだな。だから最初から集める俺たちより、魔法の発動が早い。』


 その言葉に、エリオットは感心したように声を上げた。

「よく分かったね、その通り。僕ら人間の魔術師は、世界樹から循環している魔力を自分の身体に貯めて、その魔力で魔法を使っているんだ。この『貯蔵する場所』があるか、ないかが、一般の人と魔術師の違いってところかな。……ただ」

 エリオットは、徐に腕を組み、困ったように笑った。

「知っての通り、僕の場合、貯蔵量はおそらく一級品なんだろうけど、魔法の出力はできない。逆に魔法の使い手だけど、貯蔵量が少ない場合もあるだろうね。――つまり、魔術師といわれる人間の質はバラバラで、フェンリルが『面倒くさい』って言っている魔術師の人たちは、貯蔵量も出力も申し分のない精鋭部隊だろうね。」

『なるほど。それでさっき言っていた、「こちら側の事情」っていうのは?』

 フェンリルは、そう言って続きを促した。


 エリオットは「そうだな……」と呟くと、まだお茶が僅かに残っているコップに手を伸ばした。

 コップをフェンリルに見せる様に手元に持ってくると、中で少しだけ波打つお茶が、ゆらゆら揺れた。

「魔力の貯蔵量は、生涯変わらないとされているんだけど……、お茶が魔力、このコップが魔力を貯める貯蔵庫だとして……フェンリルは、ここから魔力が溢れたらどうなると思う?」

『溢れることがあるのか?』

 魔力は使う分集める。という感覚のフェンリルには、今一つ感覚が理解できないようだった。


「普通は生き物の体にも魔力は循環しているから、入って出ていくものだけど。例えばお年寄りが排出不全を起こしたり、稀に事故や病気が原因で起こることがあるんだ。」

『それなら……そうだな、体の調子が悪くなる、とかか?』

「……実際に見てみれば分かるかな。」

 そう言うと、エリオットは立ち上がり、ポットがある机の前まで行った。

 持っていたコップを置いて、お茶を注ぎ足していく。

 トットットット……と静かにコップの中のお茶がかさを増していく。

 既にコップの7割まで注がれているにもかかわらず、エリオットの手は傾いたままだ。

『おい……。』

 勢いが止まらない様子に、フェンリルは声を掛けた。

 少しずつ、少しずつ増えていくお茶。

 もう漏れるといったところで、フェンリルは叫んだ。

『エリオット!』

 その瞬間、エリオットの手首はフェンリルによって勝手に動かされ、ポットを持ち上げた。

 コップには溢れんばかりのお茶がなみなみと注がれ、あと一瞬でも遅ければこぼれていただろう。

『何やってんだ、お前!こぼすぞ!』

「何が?」

 当たり前のことを聞かれ、「は?」とフェンリルは言葉を漏らした

『……お茶が、だろ?』

 フェンリルが困惑しながら、そう答える。

「—―そう、魔術師の魔力も同じ。今はコップを貯蔵庫に例えたけど、生き物の身体を巡る魔力と同じように、貯蔵庫内の古い魔力は少しずつ外へ流れて、新しい魔力が溜まっていく。……でも、その排出口が何かの原因で塞がれると、今みたいに水位が上がって溢れる。身体から、魔力が溢れてしまうんだ。」

『それは、どういう……』

「溢れた魔力は、魔石に変わって体の表面に出てくるんだよ。」

 エリオットは、他人事のように淡々と告げた。

 フェンリルは言葉を失ってしまった。

「生えてくる魔石の形は動物の特徴を持っているんだ。例えば、このあたりから鹿の角の形の魔石が生えたりね。」

 そう言いながら、エリオットは自分のおでこを、トントンと指で軽く触れた。

『……その、魔力が溢れた人間は生きているのか?』

「生きていると言われれば、生きている……かな。僕がこの――魔石化症候群って呼んでいるんだけど。教科書には、「体は生きているが、感情や意思はなくなった。」と載っていたから。……もし、人間の魂っていうものが魔族みたいに魔力だったら……――魂が溢れ出てしまった。という事なのかもしれない。」


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