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この世界の真実

「ゲームの世界……ですか?」


 午後の魔法特訓にやって来た麻倉は、待っていたアネモネに開口一番その事を告げた。


「そう! 今朝思い出したのです。ルミナス学園。どこかで聞いた名だと思ったのですがわたくしが前にいた世界でプレイし始めたゲームの設定とこの世界が酷似しているのですわ。最初のところしかやっていないので詳しくは知らないのですが、きっとここは〝ドキ学〟の世界に違いありませんわ」


「そもそも〝ドキ学〟以前にゲームというのが何かを存じ上げないのですが、その話を裏付ける確証とか他に何か思い出したことはありませんか?」


「他に思い出したこと……ですか。その前に一つ聞いていいかしら?」


 重要な情報を思い出した事で興奮してすっかりスルーしてしまっていたが、これは流石に聞かねばならない。


「なんでしょうか? お嬢様」


「なんで怪我が増えていますの!? 昨日は右手だけだったでしょう!?」


 アネモネと顔を合わせた時に真っ先に聞くべきだった。アネモネの素肌が見える部分の大半は包帯でグルグル巻き。辛うじて顔のみ無事のようだが、そういう問題では無い。なんというかもう既にボロボロだった。特訓に付き合うより今すぐ屋敷に戻って安静にしているべき状態にしか見えない。そもそも何が彼女の身にあったというのか。


「今朝、派手に階段から転んでしまいました。大したことはありませんのでお構いなく」


 クールな顔で平然と明らかな嘘を口にするアネモネ。


「理由が雑過ぎますわ! 嘘を吐くならもっとまともな内容を考えておいてくださいまし!」


「私の事より、そのゲームとやらの話を詳しくお聞かせください。その情報の内容次第では、アサクラ様の——いえ、この世界の有り様が根本から覆り兼ねません」


 確かにアネモネの言う通り。

 もしここが麻倉の予想通りゲームの世界であるなら、自分のやるべきことの道筋が定まるだけでなくこの世界に住まう人々の常識を大きく変えてしまう可能性がある。しかし麻倉はこのゲームのことを熟知しているわけではない。何故なら、チュートリアルと説明書を一通り目を通しただけである。この先で何が起こるのかなどわからない。ただ、不確かな記憶の断片を紡ぐしか出来ないのだ。まずはゲームのあらすじを思い出してみる。


「確か……イーストエンドと呼ばれる貧民街にセーラ・マーガレットという少女がいて、その娘が聖女としての資質を見出されてルミナス学園へ異例の入学。そこで出会う四大公爵家の子息たちと恋愛をしていき、魔王を倒して世界に平和をもたらす。そんな内容だったかと」


 その話を聞いたアネモネは少し考える素振りを見せ、ロザリアの目を見て口を開いた。


「イーストエンド。このイースト領地の極東部にその名で呼ばれる貧民街があるのは事実です。今でこそ私はこのお屋敷でお世話になっていますが、元々私の一族はそこの出身です。また、四大公爵家ですが、確かに存在します。セントラル王国を中心とした東西南北。東側に位置するここイースト領はスパーダ家が。西側に位置するウェスト領はランスロット家が。北側はアロウズ家、南側はモルゲンシュテルン家と王家に仕える四つの公爵家が統治しており、彼らの子息はお嬢様の一つ上の学年。ルミナス学園の二年生として既に在籍しています。ここまではお嬢様の記憶でも補完出来る情報ですが、聖女の話に関してはまだ誰も知り得ていないはずです。聖女とはこの世界では伝説で語られている存在であり、もし誕生したとしたら王国から大々的な発表があるはずですから。これまでのアサクラ様の話には妙な信憑性がございます。ですので、一度私の方で真偽を確かめにイーストエンドへ向かおうかと思います。ですのでお嬢様。申し訳ありませんが二週間ほど魔法の訓練はお休みさせて頂きます」


「それは構いませんが、大丈夫なのですか? その、色々と……」


「旦那様には里帰りと称してお暇を申請します。それと、私はこのマルグス家のメイド兼隠密ですので諜報活動は本分でございます。幸い、名前が分かっているのであればその人物を探し出すのは比較的容易でしょう。それと怪我ですが、任務に支障はありませんので御心配なく」


「そ、そうですか。それなら、私はアネモネが帰るまで一人で魔法の特訓を——」


 そう言い掛けた直後、アネモネが喰ってかかる勢いで言葉を遮った。


「それだけはなりません。一人で魔法の特訓をなさるのだけは絶対におやめください」


 普段のアネモネとは違い、やや強めな口調。

 無意識にとはいえ、主人を威圧してしまったことに気づいたアネモネはすぐさまロザリアに向かって頭を下げた。


「申し訳ありません、お嬢様。ですが、魔法の特訓は一人で行なうのは大変危険なのです。今はまだ魔法が発動出来ていませんが、それは言い換えれば噴火してないだけの活火山のようなもの。何かの弾みやちょっとした刺激など予期せぬ方法で魔法が発動した場合、思いもよらぬ暴走事故を誘発しか兼ねないのです。そうなれば最悪お嬢様だけでなく屋敷全域を爆心地にする可能性も決してゼロではございません。ですので万一に備える為にも私が側にいる時のみにしてください。どうかそれだけは約束して頂けないでしょうか」


「わかりましたわアネモネ。あなたが戻るまでの間、私は勉学と筋トレに励みますから」


「そう言って頂けると私としても安心です。それでは、私は早速旦那様に休暇申請をしてきますので今日はこれで失礼させて頂きます」


「え、ええ……どうかお気をつけて」


 アネモネはロザリアに一礼すると、屋敷の方へと向かって行ってしまった。


 一人残されたロザリア。

 魔法の特訓を禁止されて出来ることが制限されてしまった。

 

「……とりあえず懸垂でもしていましょう」


 手頃な木の枝にしがみつき、若さ溢れる肉体を鍛えるため健全な汗を流していくことにした。

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