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ELYSION  作者: 秋風スノン
第4章 正義の境界
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第47話『駐在任務は唐突に!』

 いつものように雲ひとつない空の下、ホワイトランドの西のミラナ領ベレット村。

 農業が中心のこの村に派遣されているのは、おなじみエリュシオン傭兵団のAHOU隊の五人。


 リーダーのジーク・リトルヴィレッジは、村の入口にある門の前でコール部隊の同僚から手紙を受け取っていた。

 

 伝令や補給を行うコール部隊には、レオンドール本部からの指令書を各地に運ぶ役割もある。


 ジークも一応はコール部隊だが、今は巡回している同僚に報告書を渡すばかりだ。

 

 オレンジ色のジャケットを着た女性団員から手紙を受け取り、去って行く同僚に挨拶をすませて踵を返す。

 

 これがいつものやり取りなのだが、実はジークは本部から手紙をもらうのがちょっとだけ怖かった。


「うーん、今回こそジゼルさんのこと、バレてる気がするんだぞ……」


 そう、ひと月ほど前に魔女であるジゼルを始末する命令に背き、こっそり報告書に嘘を書いて彼女の髪の毛を同封した事がバレていないか。

 

 バレたらバレた時だと思いつつも、内心はひやひやしているのだ。

 

 何が書かれているのかわからないので、いきなり手紙を開けるのが怖い。


 覚悟を決めようと、太陽に透かして中身をみようと手を掲げたところで、背後から聞き覚えのある明るい少女の声が聞こえて来た。

 

「ジーク、今日はいい天気ね!」

「フィア! おはよう!」


 ジークは背負っていた大鎌から、風のようにスルリと姿を現した桃色の髪の少女……フィアと目を合わせニッと笑う。

 

 彼女はジークが扱う武器に宿る霊であり相棒で、笑顔の可愛い女の子だ。


 かつてエリュシオン傭兵団で『剣の乙女』と呼ばれていたフィアは、亡くなって霊体となった今でも世界に残っている不思議な存在だが、ジークにとっては一緒に戦いを乗り越えたかけがえのない存在だ。


 フィアはふんわりとウェーブがかかった髪を揺らし、手紙をポケットへしまうジークに微笑んだ。

 

「ん? それ、新しい指令書?」

 

「そうだよ。本部から来るものは、毎回どんな無茶が書かれているか不安になるんだぞ!」

 

 苦笑い交じりに答えるジークは、頭の後ろで両手を組むとゆっくりと歩き出す。

 

 人口たった数人のベレット村は狭く、畑仕事をしている人たちに挨拶をしながら進めば、彼女もジークに合わせてついてくる。

 

 彼女の姿はジーク以外には見えないので、はたから見ればジークが一人で喋りながら歩いているように見えているが、不思議と気にしている様子はない。


「ふぅん、それでも頑張っているジークは素敵よ!」


 フィアがそう言って笑う。


「い、いやぁー、そんなの照れるじゃないか」

 

 対して、だらしなく「うへへ……」と笑うジーク。

 

 繰り返すが、他の人にフィアの姿は見えないのでジークが一人で喋って、うへへと笑っている。

 

 ふふ、とまた可愛らしく笑ったフィアは、ある建物の前に着くとジークの背後に回った。

 

「……じゃあ今日も平和の世界の為に頑張りましょ!」


 そう言って彼女がジークの肩を後ろから抱いて目を閉じると、また(もや)のように消えて大鎌の中へと戻ってしまった。


 

「……そうだな! 今日も頑張るんだぞ!」


 ジークは、ちょっとだけ名残惜しそうに彼女が宿る大鎌をチラリと見ると、顔を上げてAHOU隊の宿舎のドアを押し開けた。

 

 フィアとはこうして彼女の気が向いた時にだけ話しているが、このドアの向こうにも仲間がいるから寂しくはないのだ。


 なんてことはない日常、ジーク以外の仲間の四人はこの日も仕事の準備をしていた。

 

 ……はずだった。

 まず、飛んできたのは罵声。

 

「だから、制服はしっかり着るべきだっつってんだろ!」

 

 あちこちボロボロの古い宿舎へ足を踏み入れると、目に入ったのは赤髪吊り目のレイズと、ハニーブラウンの髪でまん丸の目を吊り上げたシャオロンが言い合いをしているところだった。


「ったく、亜人は服の着方も知らねぇのかよ!」


 苛立ち、目を吊り上げるレイズは、自分よりも背が低いシャオロンの額を右手で押さえつけ、彼の緩い服装に文句を言い放つ。

 

 対してシャオロンも負けておらず、ガード部隊の上着を中途半端に袖を通している彼は、レイズのネクタイを掴んで反撃を食らわせている。

 

「うるさいナァ、人間の服ってどれも窮屈(きゅうくつ)なんだヨ! 動きづらいノ!」


 単純な腕力はシャオロンの方が上なので、彼がその気になればレイズの首はポッキリ折れてしまうのだが、さすがに手加減しているようだ。


 何事も真面目で計算高く、さらに几帳面なレイズと、人当たりはいいが自分の意志は曲げない性分のシャオロンは相性が悪い。

 

 この二人は、互いが嫌い合っているというよりも純粋に相性が悪い。

 しかも、亜人だの人間だの言い合っているが、内容はわりとどうでもいいときた。

 

 レイズは、生真面目なクセして相手が誰であっても口が悪いし、癒し系の雰囲気のシャオロンも意外と悪態をつくので、この問題に種族は関係ないのである。

 

「……二人とも、ほどほどにするんだぞー」

 

 もうこの光景を見慣れてしまったジークは、止めることもせず彼らの横を通り過ぎ、ポケットから手紙を取り出してテーブルの上に置く。

 

 座って一息つこうかと思っていると、意外な二人がソファに座っているのが見えた。


 モッサモサの金髪に特徴的なアホ毛が飛び出ているハツは、銀色に輝く器具で向かいに座るリズの口の中を()ると、持っていた医療器具を置いて唸っていた。


(のど)()れはないさな……」


「……ん!」

 

 彼の前に座るリズは、ジークに気付いて大きく開けていた口を閉じると、明るい空色の瞳を輝かせる。

 

「ああ、ジーク、戻ったかさ」

 

 ハツもジークに気付いて手を止めた。

 右頬に(あざ)のある彼は粗暴(そぼう)な見た目によらず、医療知識が豊富で薬学にも詳しい。


 余計なことは話さないが、なにかと無茶をしがちなジークを影で支えてくれる、思慮深(しりょぶか)く理性的な良いやつだ。

 

 給料が安く、貧乏すぎてろくなものを食べていないAHOU隊が健康なのも、彼が栄養剤を作ってくれるおかげと言っても過言じゃないくらいだ。


 今日はリズの健康診断の日だったようだ。


「本部から手紙が来たけど、あとにするよ」

 

 ジークはリビングのテーブルに手をつき、椅子に腰かけるとそんな仲間たちに笑いかける。

 いつの間に言い合いが終わったのか、レイズとシャオロンがやってきた。


「……どうだ? 異常はないか? リズ、辛かったらすぐ言えよ? 俺がついてるからな?」


 レイズは心配そうにリズの顔を覗き込む。


「今んところは健康さな」


 ハツはそう言うとリズの腕を取って脈を測り始めた。

 

「……ん」


 リズはいつもの無表情でレイズを見ると、過保護な片割れからすぐに目を逸らし、無言の拒否を示していた。


「リズ、俺はお前が大事だからだな! そろそろレイ兄さんと呼んでくれ……!」


「レイはレイだ。リズは呼ばない」


 抑揚のない声で即、拒否。

 レイズはショックを受けて情けない声を上げるが、リズは相手にしていない。


「またフラれたな、レイズ……。リズも、無理はしないでくれよ?」


 見かねたジークは助け舟を出してあげた。

 レイズはリズの兄であり、とある事情がある彼らは便宜上(べんぎじょう)、双子という事になっている。

 

 二人は四大貴族のルーク家の出であり、魔法使いのスペル部隊だ。

 とくに、レイズがリズを気にかけており、ここ最近は拗らせ具合が勢いを増して溺愛(できあい)に近い。


 ジークとしても、規則だ礼儀だとクソ真面目で頭の固いレイズのこんな姿は意外だった。

 

「……診たところ、異常はねぇさが、夜中に発狂して暴れるのが治まるには時間がかかるさ」


 真剣な顔のハツはリズの腕を放し、「脈も正常さ」と息をついた。

 

 リズは、最近までルーク家の仕事を無理にこなす為に強力な薬物を使っており、薬をやめた今でも心と体がボロボロの状態だ。


 幻覚を見て眠れなくなったり、夜中に何かに怯えていたりと今も薬の爪痕(つめあと)が残り続けている。


「……昨夜、リズはまた暴れた。とても悪いことだ」

 

 ソファに座ったまま力なく項垂(うなだ)れるリズがポツリと零す。

 

 心が七歳のままで感情が発達しきっていないリズは、自分の気持ちを言葉にするのが苦手だ。


 それでも、拙い言葉で続ける。

 申し訳ないという気持ちでいっぱいなのだろう。いい子だ。


 リズは賢く素直で倫理観がないまっさらな状態のうえ、他人の感情に敏感だ。

 

 そんなあの子だからこそ、ジークは放っておけなかった。

 

「気にすることないぞ、誰も怪我なんてしてないんだ」

 

 少しでもリズが心配しないよう、ジークはわざと明るく振る舞う。


「……ん、でもリズはみんなをまた傷付けた……ごめんなさい」

 

 リズは目線だけ上げると口を固く引き結ぶ。

 

「いや、気にすることないよ。俺は寝ていて覚えてないからね!」


 パッと明るく笑って見せたジークがリズに笑いかけると、話を聞いていたシャオロンもニコニコと笑いながら加わる。


「ソウソウ、隣のおばさんは起きてるカモだけド」


 いや、隣に住むおばさんのことはいいのか。


 実際、ジークは寝ていると言うよりもリズを助けようとして返り討ちにあって気絶しているので、ある意味、寝ていることに変わりはなかったりする。


 目覚めればベッドの上というやつだ。


「心配すんな。解毒はゆっくりしていくものだ」

 

 レイズは青いラインの眼鏡の端を指で押し上げて頷く。

 これは、彼が照れたり何か間が持たない時によくやるクセである。

 

「それに、前と比べると無事に半殺しで済ませている分、お前は偉いぜ?」

 

 それでこそ、俺のリズだ! と続け、自慢げに片割れの頭を優しく撫でている。


「イヤ、半殺しは無事じゃないシ、なんならレイズも返り討ちにあって寝てるカラ役に立ってないネ?」


 そんなアホ丸出しのレイズに、シャオロンは死んだ魚のような目で辛辣なツッコミを入れた。


 とはいえ、リズの中に残る毒は少しずつ治療しているが、神経毒であるケラティスは簡単には抜けてくれない。

 

 自我を失うまで過剰摂取をしたならなおさらだが、リズの体調は少しずつ良くなってきていた。


 二人がAHOU隊にやって来て数日。


 初めはどうなるかと思っていた共同生活も今はいつもの光景となっているし、ジークは少しずついい方に向かっていく毎日に満足していた。

 

「デモ、魔法を使わないでくれる分には助かるヨ」

 

 亜人は魔法に弱いからネ、と苦笑い交じりに肩をすくめるシャオロン。


「そうさな。奇襲をしかけてくるだけで腕力はそこまでねぇさからな」

 

 我を忘れて暴れるリズを止めるのは、エリュシオン傭兵団のガード部隊のシャオロンと、睡眠剤を扱うトリート部隊のハツだ。

 

 昨夜も二人のおかげで何とかなっていた。

 

「そうだぞ、君はもう仲間なんだから遠慮することはないんだ!」

 

「ん……ありがと」


 そう言ってジークも頭を撫でると、落ち込んで下がっていたリズの眉が少し上がったように見えた。


 なんとなく、ふわふわとした雰囲気になってきた所で、レイズは盛大な舌打ちをした。

 

「おっ俺は、お前を認めねぇ! リズを撫でていいのは兄貴の俺だけだァ!」

 

 ただでさえ吊り目がちな炎眼(えんがん)をもっと吊り上げ、忌々し気に下唇を噛む姿は溺愛を越えている。

 そして、ちょっと泣きそうなのがまた恐ろしい。

 

「やっぱり君、ものすごーく面倒くさいんだぞ!」


 ジークは、嫉妬で睨みつけてくるレイズをジト目で見て、これ見よがしに溜息をつけば、何倍にもなって返ってくる。


「うるせぇ! このアルティメットお人よしショッカク虫野郎が!」

 

「ショッカク虫⁉ この前髪は自慢なんだぞ!」

 

 ああ言えばこう言う……。そんな二人のやり取りを、呆れたように見ているリズだった。

 

 

「……あとは、このケラティスに効く薬を飲み続ければ、毒素が自然と排出されていくはずさな」

 

 気を取り直したハツは、リズに小さな丸薬を渡すと手早く医療器具を片付け、用は済んだと去って行く。


「お、おう。ハツ、あ、ありがとうな」


 リズがシャオロンから水の入ったコップを受け取っているのを横目に、レイズはお礼を言う。

 あまり礼を言い慣れていないのか、ぎこちなさは否めない。

 

 ハツはそんなレイズを一瞥すると、意外だというように片眉と口の端を吊り上げ、「へぇ、お貴族サマも礼は言えるんさな?」とだけ返していた。


「ハツ、そんな言い方……」

「かまわん、一般民から見た貴族の印象が悪いのはわかってるからな」


 あまりの言い草にジークは止めようとしたが、レイズは気にしていないと言う。

 

 ホワイトランドは階級社会であり、レオンドール王を始めとする四大貴族の下に下級貴族がいて、一般民、その下に亜人奴隷という仕組みだ。


 下級貴族の中には、一般民に重い税をかけたりとやりたい放題の者もいるので、ハツのように貴族をよく思わない人も多い。

 

 レイズは皮肉を受け流し、最上位の貴族の振る舞いも身に着けている本物の貴族なのだ。

 

 

 ジークは重くなりかけた空気を払うように、テーブルの上に置いていたレオンドール本部からの手紙を手に取る。

 

「……そうだ、たったいま手紙が届いたんだぞ!」

 

 明るい声でそう呼びかければ、仲間たちもテーブルに集まってきた。


「ネェネェ、早く開けようヨ! 前に書いた給料改善・どブラック環境の訴えは通ったカナ?」


 はやる気持ちを抑えてシャオロンは椅子に腰かける。

 どブラック環境とは、夜間警備の次の日も寝ずに日勤をしなければいけないという労働環境のことだ。


「給料は無理さろうな。派遣先が変わらん限りはな」


 ウンウン、とハツが頷く。

 エリュシオン傭兵団の給料の仕組みは、派遣する街や村から支払われている。

 だから、小さな村に派遣されてしまえば給料も低く、生活も苦しいままだ。


「……派遣先、変わるの嫌だ。リズはベレット村が好き。薬草スープはホワイトランドで一番美味しい」


 ぴょこりと顔を覗かせたリズも、テーブルに着くと利き腕である左手を上げて謎の宣言している。

 

「俺は反対だ。こんなレディの少ないむさ苦しい場所にいるのは耐えられねぇ」


 レイズはうんざりしたように首を振る。彼いわく、ベレット村には若い女性がいないので物足りないのだという。


 それぞれが手紙の内容を予想している中、ジークは封を切って中身をゆっくりと取り出す。

 

「まぁまぁ、とりあえず読んでみるんだぞ!」

 

 レオンドール王の象徴である金箔が貼られた用紙を広げれば、信じられないことが書かれていた。


 金箔がペタペタ剥がれて地味にストレスだが、ジークは目を通すと仲間たちにも見えるように広げて置いた。


 

 ――辞令、ソールの月二十四日をもって、AHOU隊に駐在任務を言い渡す。

 

 ――常駐部隊が近隣の労働力の捕獲に向かう為、ソールの月二十八日までの四日間。

 『機工都市ガリアンルース』へ駐在することを命じる――。


 

 文字以外、真っ白で金箔が貼り付いた紙面には確かにそう書かれていた。


 

「……」


 …………。

 

 誰も、何も喋らない。

 

「……きょ、今日って何月何日だい?」


 ジークは震える唇を動かし、恐怖で痙攣する体を抑えて訊ねる。


「ソールの月、二十三日……だな」

 

 まるで、壊れたおもちゃのようにギギギ……と首を向けてきた真っ青な顔のジークに、レイズは汚いものを見るかのような目で答える。


「ちなみに、機工都市ガリアンルースって、ここからどれくらいなんだい……?」


 次に、ジークはゾンビのようにハツにしがみつき、歯をガタガタと鳴らしながら訊ねた。

 動揺のあまり彷徨う視線、意識がどこか別世界に行ってしまっているようだ。

 

「……歩いて、四日さ……」


 軽くホラーな展開にハツは目を逸らし、ぼそりと答えてあげた。

 

「……」

「…………」


 リズは無言、無表情でジークを見つめ、ジークも無言でリズと見つめ合う。

 一体、何の時間だ。

 

 何か、以前にもこれと同じようなことが起こっていた気するのだ。


「……ウン」

 

 最後に、シャオロンは死んだ魚のような目で溜息をつく。

 

「これは、またあの王女の嫌がらせが続いてルってコトだネ。ジークが殴ったカラ……」


 そう、ジーク達AHOU隊はエリュシオン傭兵団の入団試験に受かってベレット村へ派遣される時にも、これと同じような目にあっている。


 原因は、ジークがレオンドールのタテロル王女をぶん殴ったことで間違いない……。


 今日はソールの月()()()()で、任務開始が()()()()

 そして、機工都市ガリアンルースへはここから歩いて()()()()()()


 たった一日でどうしろと言うのだろうか。


「いや、こんなことしてる場合じゃない……‼」


 AHOU隊の五人は一斉に顔を見合わせ、死に物狂いで旅立ちの準備を始めた。


 旅立ちはいつも唐突で、窓の外の鳥たちは夢と希望にあふれた新生活を謳うようだ。

 けれどAHOU隊は違う。


「なんでなんだい⁉ またあの強行移動はとんでもないんだぞ!」


「人間ってシツコイネ!」


「薬草庫の中身、全部は無理さな……ふぅむ」

 

「リズは薬草スープが好きだ。もらってくる」


「あぁ? あのわがまま腹黒王女をぶん殴ったとか何やってんだよ! そこ、持てるモンだけ持ってこい! あと呪いのスープはいらねぇ、戻してこい!」


 順番にジーク、シャオロン、ハツ、リズ。そしてレイズ。

 

 大混乱の中、どたどたと走り回りながら小屋中のものを慌ただしくかき集め、それぞれが必要なものをバッグに詰めていく。

 

 駐在任務なのでベレット村には帰ってくるのだが、出発の挨拶もしないとならない。

 

 話す時間も惜しい五人は真顔で身支度を済ませ、村長に事情を説明して、その日のうちに嵐のように出て行った。

 

 実に、夢や希望もない始まり方であるが、AHOU隊らしいといえばそうだろう。

 もはや、お決まりとなっている強行移動はもちろん徒歩で。

 

 こうして大荷物を背負ったAHOU隊は、死に物狂いでミラノ領の大草原を走り抜けていくのだった……。



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