第23話『本当の色』
雨上がりの露が木を伝い、鼻先に落ちてきたことで我に返ったジークは、目の前の惨状に唇を震わせる。
何か言わないといけないと思いつつ、扉の向こうでは恐ろしい悪魔が待ち構えているかのように、言葉は喉の手前で引っかかって出てこない。
テーブルに重なって倒れているジゼルとオルムの下には、小さな子供の手が見えていた。
抵抗の傷が生々しく残る室内は荒れており、壁やキッチンにまで飛び散った命の跡は、ここで何があったのか考えなくてもわかる。
魔物と戦う時とは違う、言葉に表せない恐ろしさが背中をなぞっていく。
ジークは、ピートを保護する名目で村まで逃げて、後ろにいる仲間へ頼ってしまいたいと一瞬だけ思ってしまい、口内を強く噛んで狡い自分を叱咤する。
「ネクラーノン……君がやったのか?」
そして、ゆっくりと冷気に包まれた室内へ足を踏み入れ、やっと出てきた言葉は、震えて情けない音で消えていった。
ついさっきまで笑っていた人が、仲間の手によって死んでいる。信じたくない気持ちと、これは現実だと囁く痛みが混乱しそうな頭の中で騒ぎ、じわりと口の中に滲んだ血を飲みこんだ。
「おや、その声は?」
こちらに気付いて振り返ったネクラーノンは、眼鏡に飛び散った返り血を、ナイフを持っていない右手の指で拭う。
けれど、分厚いレンズを覆うほどの血液を拭いきれるわけもなく、絵の具のように伸びて広がってしまった。
鬱陶し気にそれを捨てたネクラーノンは、体ごと向き直ってジークやハツ、シャオロンに『狩りの成果』が見えるよう体を横にずらし、両手を広げいつものようにおどけた調子でこう言った。
「……これは、ジーク殿にみなさま! 小生、仕事をこなしておきましたぞ」
「なっ……!」
嬉々として自分がこの惨劇を作り上げたのだと言うネクラーノンは、上機嫌に鼻歌を歌いながら亡骸の服の裾でナイフを拭う。
「そんな……なんで、こんな……?」
「なに、とは。小生は、仕事をしたまでです」
ジークの問いかけに、ネクラーノンは倒れたカップを横にずらす。破片を払い、割れた皿からスコーンを摘んで何でもない事のように口に含んだ。
それは、得体のしれない化け物が獲物をじっくり味わうように咀嚼し、ごくりと飲み込むものと似ていた。
最後に口の端に付いた欠片を舌で舐めとる姿は、異様としかいえない。
「魔女の討伐は完了しました。これで彼女も追われる心配はなくなり、小生らもまた星送りのごちそうが食べられるのですぞ! どちらにとっても良いことだらけではないでしょうか!」
ネクラーノンは、嬉しそうに声を上げて子供のように飛び跳ねた。
その拍子に長い前髪から両眼が覗き、ジークは顔をしかめる。
口元は笑っているのに、ネクラーノンの深い青の目は少しも笑っていなかったのだ。
明るい仕草や声と反対のアンバランスな表情は、道化師のような不気味さを感じさせ、深淵に吸い込まれそうな目を直視できなかった。けれど、同時に別の感情も浮かんでいる。
「な、なんでだよ……俺は、ジゼルさんを悪い魔女だなんて思ってなくて、帰ろうって言ったじゃないか……子供達だってなんの罪もないのに……可哀想だとは思わなかったのか!?」
「ジーク殿は、仕事をこなしただけで、なぜそのような顔をするのですか?」
震える声を荒げたジークを見て、キョトンとしたような顔をしたネクラーノンは、いいことを思いついた、というようにナイフをテーブルに突き立てる。
何をするのかと警戒するジークを気にすること無く、ネクラーノンは細い指で椅子に溜まった血を拭い、自身の口元にあてると道化師のメイクのように赤を引いた。
その場でくるりと回って見せたネクラーノンは、きらきらと輝く氷の結晶を降らせて遺体を飾る。
「人が死ぬと笑って送ると知りました! 人が死ねば、いいことばかりです。お祭りをして踊って、楽しみですな!」
まくし立てるように一気に言い切り。
そして、最後の仕上げだというように両の人差し指で口角を持ち上げ、歪な笑顔を作って見せた。
「それに、両親と一緒ならば子供も幸せだと思います! ずっと一緒にいられるのですから!」
「……気持ち悪いやつさな」
淀む空気へ、吐き捨てるようにハツは言った。
「ふざけるな!」
その狂気としか思えない行為に、ジークは怒りをあらわにし、ネクラーノンへ詰め寄る。
「なんで命が大切なものなんだって……! なんで、人の想いがわからないんだ!?」
激高するジークを、深い暗闇が捉える。
「たくさん殺せば、ほめてもらえるから」
ネクラーノンは、途切れとぎれに答えては幼い記憶を思い出すように表情を緩めていく。
「いいこにしていたら、母様も迎えに来てくれて……レイだって守ってあげられるから」
どこか物語を読んでいるかのように、穏やかな表情でそう話すネクラーノンは、人格が変わってしまったように静かになった。
「……また会いたいなあ」
そう言って黙り込んだネクラーノンは、パッと顔を上げ、また歪に口の端を吊り上げて嗤う。
「それに! 魔女ジゼルが死んだことできっと賃金もあがりますぞ! そうしたら、今度は村のみんなでごちそうを囲みましょう! 食べるためなのでしたらあのウシだって解体して、火を囲んでみんな楽しく……」
「いい加減にしてくれッ!」
これ以上は耐えきれず、ジークは叫んでいた。噛み合わない的外れな話も、目の前にいるはずなのに誰と話しているのかわからなくなる異常な状況にも。
何もかもがうんざりだった。
「何故怒るのですか? みんな、ジーク殿が小生に教えてくれた事ではありませんか」
「違うッ!」
ジークは、壊れたおもちゃのように嗤うネクラーノンに舌打ちをし、ずっと握っていた細剣を抜いて掴みかかる。自分でも驚くくらいに頭は冷静だ。
「ジゼルさんやオルムさん……あの子たちが、お前に何をしたんだよ! お前のやったことは、ただの理由がない殺人だ! 命の意味がわからないのは、人間とはいわない!」
「人間……じゃない?」
「何度でも言うよ! あんなに話したのに、何もわかっていない。お前は人間じゃない、化け物だ!!」
首元に剣先を突き付けられたネクラーノンは、驚いているようで、どこにも居場所のない群れからはぐれた子供のような顔でジークの言葉を繰り返す。
周りを見渡すと、ジークと同じような目をしたハツとシャオロンがいる事に気付く。
何度も飽きるほど向けられた憎しみや軽蔑の視線。
頭の中で、何かがざわついていくのがわかった。
「ぼくは……ばけものなの……?」
耳が痛くなりそうな静かな夜に、か細く泣きそうな声が落ちて消えた。
誰もなにも答えない。それが、答えだと言うように。
「れいに会いたい……」
ネクラーノンが大きく息を吸った瞬間、口から出てきたのは濁流のような悲鳴だった。
「うわっ! 耳が……」
ジークは驚いて剣を下ろし、足元が冷たく凍り付いていることに気付いて後ずさる。
ネクラーノンは……『リズ』は頭の中に聞こえる声を振り払うように両手で顔を覆った。
「ほら、やっぱりレイの言った通りになった! あいつをなんで殺さなかった? なんで? いつだって狙えた、なのに!」
「仲間だと言ってくれたんですぞ。小生はやっと居場所が出来て本当に……」
「信じたから! 人を信じたからこうなった! お前が人を信じたせいでレイは殺される、母様にだってもう会えない!」
「嫌です! それでも、友は殺せないですぞ!」
「うるさい、殺せ!」
言葉は堰を切ったように次々と流れていき、悲痛な叫び声を上げる。
一人の体で意見や口調が変わり、言い合いをする姿は本来の人格である『リズ』との間で揺れて暴走しているかのよう。
甘い記憶と薬物で保っていた心はとうに限界を迎え、些細な物事で砕けてしまう。
『リズ』が息を吐き出すたびに、制御できなくなった魔力が暴走し足元から凍り付いていく。
それは、『リズ』自身だけでなくジゼルやオルムの亡骸までも拒絶するかのように閉じ込めていき、小屋中が凍り付くのも時間の問題かに思われた。
「何が起きてるんだい……?」
小さな子供のように蹲って顔を伏せている目の前のこの子は、誰なのだろう……。
無差別に飲み込もうとする冷気に混乱し、問い詰める事も出来ないジークを後ろに押しやったのはシャオロンだった。
「話には聞いていたケド、あまりに惨いネ……」
そう言ったシャオロンの背中越しでも伝わる感情は、怒りじゃなく哀れみだ。
『リズ』は、立ち上がりテーブルに突き立てたナイフを乱雑に抜くと、支えを失った人形のように、ゆらりと顔を上げた。
暖かく穏やかな夕闇は飲み込まれ、静寂と無情な夜闇が訪れる。
「……そうだ、れいを守らないと。また泣いてる……」
長い沈黙の後、『リズ』は表情のない顔で小さく呟くと、視界から消えた。
ジークがそれに気付いた時には、ハツが倒れた後だった。
「なっ……!」
肩から胸下を深く切り裂かれ、膝をついたハツは傷口を押さえようとするが、痛みで手が震えている。
今まで隠れていたピートが松明に火を灯し、辺りを照らす。
「何か来るぞ!」
明かりのない闇を音も立てずに何かが迫り、ジークは咄嗟にピートの上に覆いかぶさった。
直後、ピートの頭があった高さを冷たい氷の刃が襲う。
かろうじて直撃は免れたものの、ジークの腕に掠ってしまったようで鋭い痛みが走る。
「気を付けテ! 移動しながら魔法を使ってルよ!」
闇夜に紛れて無数に放たれる魔法は、一切の容赦がなく急所を狙う。
シャオロンは、ジークとピートをかばうように次々と襲い掛かる細い氷の矢を受け流しているが、結界の影響もあり動きは鈍い。
ジークはシャオロンが魔法に対抗出来ないと言っていた話を思い出し、這ってピートを物陰に連れていく。
ハツもあの怪我で動けない今、この場でまともに戦えるのは自分しかいないのだ。
体力も、精神力も削られて気力で立っている状態のシャオロンは、出来る範囲の風を操り攻撃の軌道を読んで立ち回る。
元々、夜目が効く種族ではないので、頼れるのはわずかに残った風龍の力だけ。
力の半分以上を失っている上、コンディションも最悪な状態で仲間をかばうには限界があった。
「いっ……!」
躱しきれなかった一矢が脇腹に深く刺さり、体内から内臓を破壊される痛みで脳が揺さぶられる。
堪えてきた吐き気と頭痛が一気に押し寄せ、立っていられず膝をついた。
無理にでも立ち上がろうと動くと、頭上から氷矢が飛び、余らせている上着の右袖を射抜いた。
「最初からこうしていればよかった」
暗闇から姿を現した『リズ』は、顔にかかる長い髪をかきあげると口に咥えていた青いリボンを使い、後ろ手でひとつにまとめる。
それにより、丸く青い大きな目に中世的な顔立ちがあらわになっていく。
均斉がとれて目鼻立ちがはっきりしている様子は、少年と呼ぶにはあどけなく、少女と言うには柔らかさを感じさせなかった。
「人間に見下ろされる気分はどう?」
「ゲロどころか、血も吐き出しそうだネ」
嘲るように投げられた言葉に軽口を返すシャオロンだが、実際はあと一撃入れられるかどうかの力しか残っていない。
「コレが、キミの答えなんだネ」
既に口の中は血の味しかしなかったが、シャオロンは『リズ』へ笑いかける。
「……お前たちは嘘ばかりだ」
感情の色が込められていない言葉を返すリズは、魔力で作り出した氷の刃をシャオロンの頭上に浮かべた。
「捉え方の問題だと思うヨ? そう思わない?」
それでも笑みを崩さないシャオロンは腕を伸ばし、リズの手を掴むと一気に自分の傍に引き寄せ、全体重を乗せた一撃で、肩の肉を抉った。
狙いは利き腕であろう、左肩。今はこれが精一杯の反撃だ。
「……!」
驚き、左肩を押さえて後ずさるリズ。抉り取った肉片を投げ捨てたシャオロンは、金色に閃く両眼を細め、そのままうつ伏せに倒れてしまった。
「シャオロン!」
そこへ、ピートとハツを物陰に移動させたジークが戻ってきた。この状況に説明はいらない。
シャオロンに駆け寄ると、かろうじて息はしているものの、もうまともに動けそうにはなかった。
ジークは、未だに仲間だと疑わない彼に向き直る。
「ネクラーノン、もうやめよう。君は、こんな事するようには見えなかったんだぞ。俺が知っている君は、魔法もダメ、体力もなくてその辺に倒れて……そのくせ、よく食べてよく喋って女神様が大好きで……」
ひとつずつを思い出しながら話していけばいくほど、怒りよりも先に悲しさが追い抜いてしまう。
なぜ、あのネクラーノンが人を殺して、仲間も傷つけて平気でいられるのかわからない。
裏切られた、という思いがジークの胸の中を巡っていた。
左肩を押さえていた『リズ』は、あれだけの傷を負っていながら顔色ひとつ変えずに瞬きをする。
確かに肉を抉られたはずの左肩には淡く緑色の炎が上がっており、傷口を包み込むように燃え尽きると、まるで最初から傷なんかなかったかのように、綺麗に再生していく。
「……君は……」
ネクラーノンだった人物は、軽く左肩を右手で払うとジークへ近づいて来る。
恐怖と驚き、悲しみに戸惑いの感情を全部混ぜたようなジークは、細剣を向けて構えた。
迷うな。今、戦えるのは自分だけだ、と心の中で自分に言い聞かせ奮い立たせていく。
その時、どこからか小石が投げられ、『リズ』の頭に当たって落ちた。
視線が流れる。
ジークは咄嗟に走り出していた。
抱えられるだけの石を持ち、細い腕で懸命に石を投げ続けているのは、物陰に隠れさせたはずのピート。
「パパとママを……みんなを返せよ!」
幼い顔を必死に引きつらせ、涙をこらえて声を上げていたピートは、父や母、兄妹の仇を討とうとしているのだろう。
ジークはすぐにピートを守るように立つと、振り下ろされた刃を受け止める。
「やめろ! この子は関係ないだろう!」
一撃の重さはそれほどない。けれど、魔法で作り出された氷のナイフは冷たく、受ける度に冷気が舞う。おそらく、フィアが宿るこの武器でなければまともに受けられていないだろう。
双腕でナイフを操る『リズ』に迷いはなく、ジークだけではなくピートまでも始末するという確固たる意志が見て取れた。
「ママのシチューは甘くておいしくて、パパも色んなことを教えてくれた! 寝る前には抱きしめてくれたのに……お前が、お前なんていなければよかったんだ!」
ジークの後ろに隠れながら、ピートは涙でひりつく頬を拭って叫ぶ。
その辛さを見ていられなくて、ジークは細剣を振るうが、技量の差で圧されてしまう。
「わっ……!」
自身にしがみついたピートに気を取られ、ほんの少し、受け流すのが遅くなってしまった。
「パパ……ママ……!!」
ピートの訴える声も虚しく、無情にも刃が振り下ろされる。せめてピートだけは守ろうと、ジークは子供である彼を抱き込んで身構えた。
だが、次の瞬間に聞こえたのは、苦しげな『リズ』の呻き声だった。
「……!」
ピートを放し、顔を上げたジークは目の前の光景に目を見開く。
自作の細い糸を両手に握り、起き上がれないほどの大怪我を追っていたはずのハツが、後ろから『リズ』の首を締めあげていたのだ。
「ぐッ……!」
体格もいいハツが全力で引いているにも関わらず、意識は落ちない。
『リズ』は、糸と自分との間に指をかけ、辛うじて完全に窒息するのを防いでいるが、鋭利な素材で出来た糸は指に食い込んで皮膚を切り裂いていく。
「こっちもあんま見えねぇさからよォ……! ちゃんと掴んどけさなァ!!」
「ホントムリ……」
ぜぇぜぇ、と肩で息をするハツは、さらに後ろに体重をかけて締め落とそうとする。
逃れようともがく足を掴んでいたのはシャオロンだ。
二人とも、満身創痍の状態でこれ以上のことは出来ない。
「あれで、死んで、なかった……?」
後ろから首を締め上げられ酸素を求めて顔を上げたリズは、夜空を睨み、視界に飛び込んできた星の海を見つけた。
あの日の星送りと同じ、濃紺の空を泳ぐ美しい星の群れと思い出がよぎる。
自分は、あの時なにを思ったのだろう、と考えたところで心がざわつき、頭の中は絶えず騒ぎ立てる声で考えがまとまらない。
ただ、わかるのは、ここに居てはいけないというものだけだった。
直後にブツリ、と糸が切れる。
「クソが! 斬ったそばから再生するんじゃキリがねぇさ!!」
あともう一歩、という所でハツは舌打ちをすると地面に腰を落とした。
急ごしらえの応急処置で済ませた傷口が開いてしまい、じくじくと痛む。
持てる力を使い切ったのか、シャオロンも動かなくなっている。
「……君は、誰なんだい?」
空を見上げたまま佇む『リズ』に、ジークは緊張を解かないまま訊ねる。
ゆっくりと双玉が動き、深い青はジークを真っ直ぐに見つめると一歩、また一歩と近づいてきた。
手を伸ばせば届く距離に立った『リズ』は、真面目な調子で子供のように首をかしげると、
「幸せって何? おいしいってなに? 怖いって、悲しいって……痛いって何?」
と続けて聞き返してきた。
「どういう……?」
「リズには、何もない」
リズはそれだけ言うと、答えに戸惑うジークを満足そうに眺め、白い狼を模した仮面を付ける。
見覚えのあるその白狼の仮面は、ジークが乗っていたあの船を襲撃していたルーク家のものだった。
氷の魔法を自在に操り、実力の差を見せつけられたジークは、フィアを固く握りしめる。
リズの首の傷は先ほどと同じように癒えていて、ジークの脳裏に、ジゼルさんの話していた言葉が蘇る。
死なない人間は、人間じゃない。彼女の言っていた言葉の意味が、繋がった気がした。
「君は、女神様が好きだって話してくれたことも試験で合流した時のことも……全部、嘘なのかい?」
女神エリュシオンのことを話す姿は本当に嬉しそうで、聞いている方が疲れてしまうくらいだった。それすらも、この時の為に騙していたのだとしたら……。
ジークはもう少し何か言おうと口を開いたが、これ以上何と言えばいいのかわからずに固く閉ざしてしまった。
白狼の仮面からは、表情は分からない。
「女神様なんて、どこにもいなかったよ」
ジークの問いには答えず。
リズは、仲間だったネクラーノンと同じ声でそう言うと、元の闇夜へと消えていった。
仲間の裏切りによる完全な敗北。それどころか、ジゼルさんやオルムさん、ピート以外の子供達も守れなかったという事実が重くのしかかっていく。
夜の静寂の中、後に残されたのは軽い怪我で済んだジークとピート、意識のないシャオロンと、飛びかけの意識を痛みで必死に繋ぐハツだけだった。




