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記述主義者がペンを捨てるまで。  作者: ほんの未来
第7章:記述主義者と努力嫌いのための努力論。
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73 クソどうでもいい仕事<ブルシット・ジョブ>3

 ただ、もう少し、背景(やみ)を探ってみるとしよう。何故こんな、馬鹿げたクソどうでもいい仕事(ブルシット・ジョブ)なるものが、世の中に蔓延(まんえん)してしまうんだ?


 その主たる理由は、『余裕(スラック)』が見つけにくいものだからだろう。

 これまで、数多くの『余裕(スラック)』について考えてきた。しかし、その全てが本当に見つけにくいものだったろうか? となると、まず例外がひとつ。

 金銭的『余裕(スラック)』だ。お金は、数えられる『余裕(スラック)』だ。むしろ、『余裕(スラック)』の中で、もっとも古くに注目された『余裕(スラック)』であるから、ここまで私たちを振り回すのだろう。

 次いで、時間的『余裕(スラック)』。古くは太陰暦や太陽暦、日時計などなど。機械式時計ができたのは1300年頃、それからルネサンス期、大航海時代を経て時計の精度・小型化が進む。さらに産業革命を経て時間の管理は労働者にも徹底して浸透したことだろう。

 また、現代ではSNSがある。お気に入り登録数、チャンネル登録数、フォロワー数などなど……人間関係的『余裕(スラック)』が数値化される時代である。

 他にも、先の例に比べればローカルなものかもしれないが、学力や学歴、健康診断の結果なども数値化・言語化されていると言える。

 今後を踏まえると、ややSFチックなところとして、リアルタイムで血液診断をすることができれば、体内のセロトニン量の変化などを記録して、心理的『余裕(スラック)』を数値化するなどということも可能かもしれない。まぁ、いくぶんナンセンスだと思うけどね。複雑な心の問題を強引に数値化したって、見落としが多すぎるだろうから。

 だが、私たちは数値化するのが好きだ。単純化された数字を競うのが好きだ。数字の大小で意味もなくマウントを取るのが大好きだ。たやすくゲームに夢中になって、大切な約束事さえすっぽかす生き物だ。

 時代は進んでも、いまだ数字にしたり、言葉にしたり、目に見える形にすることが難しい『余裕(スラック)』はたくさん存在する。それらを全部投げ出して、スコアに夢中になってしまう。気付けば、それ以外の『余裕(スラック)』をぽろぽろ失っていく。

 お金はあるはずなのに、幸せを感じることができない。

 時間はあるはずなのに、(さみ)しさがただ(つの)るばかり。

 そんなカタチになりがちだ。

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