72 クソどうでもいい仕事<ブルシット・ジョブ>2
ただ、ここは『余裕』の視点から再定義してみよう。
クソどうでもいい仕事とは、まともな『余裕』を消失させる仕事のことだ。
社会的に有意義な仕事というのは、従事者たちの時間的、体力的、知的『余裕』をほどほどに消費し、顧客に大量の『余裕』を提供する。社会全体で見て、『余裕』の量が増える仕事のことだ。
また、普通のまともな仕事は、『余裕』を別の『余裕』へと交換するものだ。食べ物屋であれば、金銭的『余裕』を食料的『余裕』と交換できる。多少の割高・割安感はあるにせよ、社会全体でみて、『余裕』はあまり増減していない。だが、それでいい。『余裕』を過剰に貯め込んだり、拗らせればロクなことにならない。『余裕』の交換それ自体、とても意味のある行為だ。交換できることで、社会全体の『余裕』の質が良くなっているからだ。
だが、クソどうでもいい仕事はダメだ。貴重な『余裕』を消失させるだけの行いだ。あるいは、あらゆる『余裕』を拗らせた人間関係的『余裕』へと引き換えてしまう。まともな『余裕』が消え失せてしまうものだから、クソどうでもいい仕事自体をどうにかしようという『余裕』もない。というか、気付く『余裕』すらないだろう。クソどうでもいい仕事が背景に融けてしまう。星空のバイアスだね。クソどうでもいい仕事は、無責任カードで即座に突っぱねるのが自衛であり、正しい対処法だ。