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記述主義者がペンを捨てるまで。  作者: ほんの未来
第7章:記述主義者と努力嫌いのための努力論。
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49 距離感的余裕<スラック>~人間×空間軸

 今度は人間(ヒト)×空間軸で話を進めてみる。


 ひとつ。自分の心の距離感的『余裕(スラック)』。

 適度なら、心と身体の二元論。宗教的とみる向きもあるかもしれませんが、筆者(わたし)の信心は流石神(さすかみ)さん相手にムキになる程度です。ただ、人格(ソフトウェア)身体(ハードウェア)を分けて考えた方が精神(システム)的に安定すると思います。心を脳の庇護下に置くイメージでしょうか? なので心は胸の辺り((※心臓に限らない))にある、ということにしておいた方がなにかと便利かなと。

 過剰であれば、周りからは冷静で客観的に見えるものの、糸の切れた(たこ)のような不安定さを抱えることになります。熱中と中毒の区別がつかない。ときに心ない行動をしてしまって他者に嫌われるが、それにも頓着(とんちゃく)がない。合理的経済人がごとく、冷徹な損得計算をしてしまう。自分の心を遠くに置いてしまうが故の行動をしてしまう。身体、つまり行動を優先する。中身、心は(ともな)っていない。だからこそ冷酷に勝利を求め、挫折(ざせつ)を味わえば容易く破滅願望に身を投げる。私小説でも書いてしまえば危うさは明らかなのですが、普通は心って目に見えませんからね。ある意味、メタ認知ができている。でも心が定まっていなければ、ただの皮肉屋に収まりがちです。

 不足すると、感情的で直情的になります。癇癪(かんしゃく)持ちの場合もあるでしょう。外部刺激に対する『余裕(スラック)』がないために、反射的で無計画な行動が目立ちます。中毒性・依存性のあるものには、特に初回、本当に注意しましょう。反射的な行動が失敗を招き、更なる反射行動を取ってしまう混乱の無限ループが怖いですね。解決するには、まず刺激の少ない安全な場所に逃げ込んだ後で、ゆっくり刺激に()らしていくこと。刺激と反応の間に、一拍おけるようになれば、解決の兆しが見られるでしょう。

 (こじ)らせると、一例としては意識高い系になりたい人(wanna be)でしょうか。実力に見合わない拙速(せっそく)なグローバル化や、社会問題・環境問題への手間やコストを無視した非現実的アプローチを提案するなど。周囲との話し合いが建設的なものにならず、批判したいだけの人なのかと白い目で見られたりします。本来、そんな私心で振る舞っているのではないはずですが。これを防ぐコツは、意識の高みへ行くのにどこでもドアを使わないこと。一歩一歩階段を上るように、階段がなければ自ら作る気概で、焦らず『余裕(スラック)』をもって、気高く現実と向き合うこと。


 ふたつ。周囲との距離感的『余裕(スラック)』。主に知人や同僚、たまたま居合わせた他人など。

 適度なら、良好な、あるいは悪くない関係を保つことができる。世間のニュース・話題に興味を持っている。なんなら、自分から話題を振ることだってできる。

 過剰であれば、孤立ですね。大きく傷つけられることこそないはずですが、いざというときに助力も得られないのでジリ貧になりがちです。嫌なこと、人間関係に疲れてしまうことは誰にもありますが、えんえんと人間関係を拒否し続けるわけにもいかない。世知辛いなホント。

 不足すると、軋轢やトラブルの多さに苦しむか、ブラック企業のように息の詰まるちいさな絶望郷(ディストピア)か? いずれにせよ近視眼的な視野の狭さ、感覚的『余裕(スラック)』も(あわ)せて不足しているはずです。まずは物理的に距離を取ることから始めましょうか。恐らくは、周りや全体、あるいは相手のことを思った上で上手くいっていないのでしょう。そういうときに体当たりで突っ込んでいくと、かえって悪化します。意外かもしれませんが、距離を取りましょう。必要なのは回り道だったり、第三者に意見を求めることだったり、または放っておけば時間が解決したりもするものです。

 拗らせると、トナラー問題はその典型例かもしれません。何故、場所は空いているのに隣に来るの? と電車の座席や、車の駐車場などでストレスを感じるやつですね。痴漢やセクハラの類であれば、普通に犯罪なので警官対応で。ここではそれは除外します。適法の範囲内ですぐ隣を使う理由は、主にスペースを合理的に使うためです。縦座席(ロングシート)であれば、まず両端に座り、隣を順に埋めていき、最後に真ん中が埋まる。すると無駄なく多くの人が座れる。駐車場であれば、空いている場所が分かりやすく認知的な意味でスペースを合理的に使えますね。ドアの開閉で困らない程度に間があれば、車1台分も空ける必要はないという考え方。ドアの開け閉めで困るほど近いのは、単に駐車が下手なだけ。あるいは、ふたつ隣の車が微妙に近くて、強引に間にねじ込んだ可能性もある。あと、隣の車をバック駐車の目印にするというテクニカルな面もあるかと思いますね。まぁ、出入り口が決まっている以上、自然と無意識に合理的な判断をした結果、同じような場所を使ってる可能性もあるでしょう。シンプルで優れたデザインは誤誘導(ミスリード)をしないので、結果的に皆が同じ攻略法を考えちゃうわけだ。コロナ禍からのアフターコロナ。社会的(ソーシャル)距離(ディスタンス)という文化が生まれ、消えゆくのか残るのか。私たちは不要不急への向き合い方、『余裕(スラック)』を見失っているのかもしれません。どうか、お互いを許し合い、認め合えますように。前を向いて一緒に生きていけたらと思います。


 みっつ。個々の距離感的『余裕(スラック)』。友人や親友、恋人や家族など。

 適度なら、お互いを尊重し合える素晴らしい居場所が手に入る。

 過剰であれば、孤独ですね。特に個人主義が広まった現代では個々がバラバラになってしまい、宗教的求道者のような孤高、人の群れから離れる形にはなりづらい。また、社会的分業が高度に進んだ結果、独りでは真面(まとも)に生きていけない世の中になってしまいました。なので、孤独感という不安に苛まれる。

 不足すると、イジメ、家庭内暴力や児童虐待、DVなど。仲良しこよしができたら良かった。たまには喧嘩することもあるだろう。しかし、それが一方的な加害者・被害者関係になったらもはや犯罪だ。下手を打ってしまったな。そりの合わない奴はいる。気に食わない奴もいるし、心底嫌いな奴だっているだろう。ぶっ殺したい奴の1人ぐらい、誰だっているものだろう。それに感情的な例だけではなく、相手が自分を一方的に利用しようとしてくる場合もあるだろう。直接的な暴力でなかったとしても、精神的な暴力、ハラスメントへの理性的な反撃という場合もあるだろうね。私たちは人間関係の初歩を、大抵学校で学ぶことになる。よくある小学校の教室は、奥行7メートル×間口9メートル×天井高3メートルの空間に、40人近い生徒を詰め込む。基本的に教員不足なので上限40人に近くなる。過疎地域の場合もあるけど。そして戸を閉めた先生が、仲良くしなさい、と言った瞬間、人間関係デスゲームの始まりだ! 仲良くできなきゃ問題児扱いで、冷え切った目で見られるんだろう。ロクでもない話だよな。先生を除外して生徒数40人とすると、1人当たりの面積は1.575平方メートル。これはおよそ畳1枚分のサイズだ。お互い腕を振り回せば、誰かしらに当たる程度の距離感だ。元気な子供には窮屈(きゅうくつ)だろう。嫌いな奴には距離を取って、冷静に遠巻きに観察し、なぜ嫌いなのか、どうして上手くいかないのか、そもそも上手くいくべきなのか、前提(やみ)の部分を考える。人間関係の距離の(はか)り方を学ばずに、表向き仲良くやっているように見せる(はか)り方を先に学んでしまうのは、残念なことだ。本当に教職って難しいな。これで成績上げなきゃとかモンスターペアレンツとか絡んでくるのか?

 拗らせると、共依存になる。排他的で、長い目でみれば成長が望めない。だが、今だけみれば上手くやれているように見えなくもない。恐らくは時間系の『余裕(スラック)』も不足してしまっている。閉鎖性に問題を抱えているので、窓を開けて外を眺め、一緒に出かけたりするのがいいのでは。


 空間軸を掛け合わせてみました。

 人間関係、本当に悩みの種ですね……。


 さて、ここまでで『余裕(スラック)』について、人間(ヒト)軸そのものと、他4軸(存在(モノ)軸、評価(カネ)軸、時間軸、空間軸)との2軸掛け合わせについて考えてきました。

 ここから先は、3軸以上の掛け合わせについて考えてみたいと思います。


   †

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