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記述主義者がペンを捨てるまで。  作者: ほんの未来
第7章:記述主義者と努力嫌いのための努力論。
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43 ゲーム×中毒と依存症<ドラッグ>2

 そして、後に引けなくなったプレイヤーをどう中毒に追い込むのか考えてみよう。


 まずはゲーム音楽について。

 BGMはややゆっくりとしたメロウっぽい楽曲で、実体としては単純で短めのメロディーの反復。低刺激で周期的なもの。

 SEは一転、尖っているエッジの利いた音。攻撃的な音で、金属音や破裂音のような音である。

 BGMと、SEは中毒の方向性が別物である。

 BGMは背景になる前提の音。周期性によりプレイヤーの頭をぼうっとさせてリラックスさせる。悪く言えば、思考停止させる。

 SEは、プレイヤーの行動に合わせて鳴る音だ。中毒性の極地は銃火器の音。自分で撃鉄を起こして金属音、トリガーを引いて破裂音。ついでに敵が苦しんで倒れてくれてアドレナリンが出て、安全を得ることでセロトニンが出る。トリガーハッピーだね。筆者(わたし)も仕事で鉄砲を使うんだけど、気持ちよくて困っちゃうよねぇ、あれ。(※鉄砲=釘打ち機のこと。たぶん倫理的な職場なので御心配なく)

 まぁ、戦場でやると人死にが出るので倫理観と衝突する……が、ゲームなら誰も死なないよね? 人間性は死ぬかもしれないけど。


 逆に言えば、ゲーム状況の微細な違いによりBGMに変化があれば上質なBGMだ。1曲の長さが適度に長いのも良い。1曲数分でいいから。刺激としては馴れにくいが、感情に上手く寄り添っていて邪魔にならない。必要な時機に、必要な場面で、必要なだけの感情をそっとさりげなく後押しできていれば最上である。感情のジャストインタイムだ。

 SEは厄介だ。中毒性があることを分かった上で、中毒性を減らすのが望ましい。もちろん、平和的でスローライフなゲームも色々とあるので、不穏当なものばかりではないが。ただ、長閑(のどか)な音と物騒な音が混在するゲームもあるだろう。感覚的に剣呑(けんのん)な音を嫌うプレーヤーと、好むプレーヤーでプレイスタイルが二分されてしまうかもしれない。何らかの解答は必要になる。MMORPGでよくあるような、生産職と戦闘職で分業するとかね。プレイヤータイプが分かれることを逆手に取るのもいいだろう。生産職が剣を打つ、金属音っぽい音(中毒性軽減)、戦闘職の戦いの音も中毒性は控えめにして、ゲーム全体でバランスが取れていると良い。


 続いて、映像について。

 まず、何の映像表現が目を惹くか考えてみよう。

 上手に焼けたお肉とか。ちょっとしたお色気シーンとか。ジャックポットでお金ジャラジャラみたいなね。食欲や性欲や金銭欲を刺激するものは夢中になりやすい。

 あとはパトランプのような警告灯も目を惹くけど、こっちは中毒性はなさそうだ。

 視点を変えて、数字はどうだろう? インフレゲーム、数字の桁がどんどん上がっていくやつ。あれも中毒性が高いね。あとちょっとで桁が上がる。桁が上がる速さがおよそ一定になるようにデザインされているわけだ。

 もっと抽象的に見ていくと、音のSEと同じだね。

 プレイヤーの行動に合わせて何らかのエフェクトが発生するのは気持ちがいい。それが派手なエフェクトであると中毒性があるし、ちょっと上手くやっただけで更に派手なエフェクトになるなら完璧にドツボだ。

 ただ、サブリミナル効果を利用するのは論外としても、短時間のフラッシュエフェクトにはSEに似た中毒性があるかもしれない。光過敏性発作を起こす場合があるから、ハーディングチェック(パカパカチェック)が必要なんだろうけど、現状ゲームに関してはあまり調査されていない気がする。実際どうなんでしょうね? 私の心配しすぎなら別にいいのですが。


 最後に、ゲームデザインについて。

 仕様に中毒性があるとすれば、ゲーム内報酬(リワード)をどう与えるかの問題になるだろう。

 例えば、広告は基本的につまらない。広告単体で面白いと思えるものは非常に(まれ)で、大抵の場合要らない誘惑ばかり寄越(よこ)してくる。しかし、30秒の広告を見るだけで、30秒以上の……例えば30分間の経験値増加が得られるなら、つい見ちゃうだろ? それも、喜んで見てしまう。

 もちろん、刺激には()れてしまうもの。同じ繰り返しなら段々面倒になる。だったら、初回は5分間のボーナスタイム、2回目は10分、3回目は15分……と徐々にボーナス量を増やしていけば、喜んで何度も広告を見てくれる。なんて私たちはチョロいんでしょうかね。

 まぁ、広告自体はゲーム維持に必要なのだとしても、1時間おきとか休憩がてら……というタイミングで流すのがプレイヤーに対しては親切だと思います。まぁ、内容もろくに見なくて広告主(スポンサー)には親切ではないかもしれないけどね。その辺は難しいところ。

 賞罰さえ適切に設定すれば、プレイヤーは大抵のことはやってくれる。闇バイトの斡旋(あっせん)が時折ニュースになるのをみれば分かるとおり、それが犯罪行為であっても手練手管で絡め取ることができる。弱みを握って追い詰めて、視野狭窄(きょうさく)(おちい)らせ、あとはしょうもないアメをチラつかせるだけだ。だからこそ、開き直って拒絶して、周りに頼って相談し、公権力にでも強烈なムチを振るって貰うのが効果的な反撃(カウンター)になる。

 報酬を与えられる立場であれば他人の行動を誘導できる。そも、承認欲求でも人が動く以上、「ありがとう」の言葉や、褒めるだけで人は簡単に操れる。

 認知的背理法(ツンデレごっこ)で遊んでみようか。

「か、簡単に操られたりなんてしないんだからっ!」

「でも簡単に操られてしまうのかも……」

「うう、気をつけよう」

 となった方が、慢心しているよりはよほど安全だ。

 学校だったり、会社だったり。賞罰のある場所では、行動を操られてばかりだろう。

 だからこそ、その行動に賛同しているのか? それとも気に食わないのか? 人間性を豊かにしてくれるか? それとも削り取っているのか?

 そういった視点や感覚を大事にしたい。

 そして、もし刃向かうのであれば、自分のことぐらいは自分で気遣いたい。

 なんということはない、自分への優しさ。それが最良の予防薬になるだろう。

 自分への信賞必罰なんてのは、自分で決めちゃっていい。なんでもないことを、自分の好きなように調節、あるいはデザインすること。それが「あそび」の本質だ。


 さて、いつも通り話が逸れてしまったが、総括していこう。

 私は模擬実験(シミュレータ)些細(ささい)な人間的成長、自身への行動誘発を学ぶ上で、ゲームはとても有意義なツールだと思っています。きっと、他にもあるんでしょう。自己表現や、何より気張らしとしてとか。

 そういったものを後押しするようなゲームデザインであって欲しい。


 そうすれば、あの大好きだったゲームが取り返せるんじゃないかな、と思います。


   †

 おすすめゲームコーナーその8。

「君主Online」

2022年3月9日サービス終了。「政治」「経済」を学べるMMORPG。


 というわけで、最後はお約束として、サ終したゲームを紹介。

 

 これまで多くのゲームが生まれ、私たちの心に思い出を残しました。

 ゲーム機はどこまでいってもただの電化製品で、ある日あっけなく動かなくなってしまう。

 ちいさな世界の寿命は、人間のそれよりよほど短い。それがレトロゲームというものだ。


 まして、それがネットワーク上のサービス、すれ違うほどに一期一会、人との繋がり、抱いた感情。

 衝突、喧嘩別れなんて散々やった。普段は仲良くともしょっちゅう大喧嘩し、和解してはまた喧嘩、最後は違う道を進んでいった。

 ことあるごとに壊れていく人間関係。半分になり、半分になり、半分になり……私は一体どれだけの人の手を取れただろう?

 そんな(はかな)いものに根ざしたゲームが、16年近くもサービスを継続できたのは本当に幸運だった。


 そういえば、私が「ほんの未来」なんて名乗って小説をアップしたのだって、元々はゲームの内と外の繋がりを求めてのことだった。

 まぁもっとも、現代ではV-tuberというアバターをまといながら、社会的に外部と繋がっていく人たちがいます。

 MMORPGにハマった人からすると、どこか懐かしく、社会性においては完全に上位互換だよなとも思う。

 広告収入に依存しすぎると色々と振り回されそうな気はするが、その辺は各々なんか上手いこと工夫してるんだろう。たぶんきっとな。(無責任カード)


 話を戻して。

 このゲームから学んだことは、バランス感覚でしょうか。得をしようとしても、損をしようとしても上手くいかない。かといって、なにもせず損得なしというわけにもいかない。ほんの少しだけ、自分が損をする。それぐらいが一番、自分らしく自由に振る舞えるということ。

 それ以外に得たものと言えば……いつも感想をくれている友人さんや、あるいはこの小説の空気感なんかもあの世界と変わらないのかもしれないね。


 願わくばこの世界が、私や君にとって、忘れられない世界でありますように。

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