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記述主義者がペンを捨てるまで。  作者: ほんの未来
第5章:記述主義者と自殺の論理。
6/519

01 自殺ってなんだ?

 2023年8月8日初掲載。まえがき・あとがきも当時のまま掲載します。あらすじもリンク先以外はまえがき文頭に含める形で。



 友人から、とある相談を受けた作者は……?



 3日連続で短編アップ!

 先日友人から、こんな話を受け取った。


 ――日本人の自殺率を低下させる研究者になるにはどうしたらいいんだろう?


 なるほど、遠大で素敵な夢を描いたものだ。

 私も少し考えてみよう。


 厚生労働省と警察庁の共同資料によると、日本の2022年の自殺者は2万1881人いたらしい。うち、男性1万4746人、女性7135人。男性は13年ぶりに増加、女性は3年連続で増加。男性の自殺者は女性と比べ約2・1倍。


 これだけでは理解しづらいので、ハインリッヒの法則を当てはめてみよう。

 ヒヤリ・ハット対策で、思い出す人もいるかもしれない。

 重大な事故1件の裏側に、軽微な事故29件が存在する。

 そして、さらにその背景には事故未遂が300件ほど起きている。

 この比率について異論反論もあるだろうけど、全体のイメージをざっくり掴むのには非常に便利だ。とりあえずやってみよう。


 2022年の自殺者が2万1881人いる。

 2022年の自殺未遂者はその29倍? 63万4549人と推定できる。

 2022年の「死にたい」と呟いた人の数は300倍? 656万4300人ぐらいかな?


 別資料では、2022年の日本総人口は1億2494万7000人と報告されている。


 ざっくりと言って、人間誰しも生きていれば、20年に1度ぐらい死にたいと思う瞬間がある。日本人の平均寿命が80歳を超えていることを思えば、決して他人事とは言えないと分かる。


 先の厚生労働省・警察庁の発表では、自殺には多様な原因があるとしている。

 健康問題、経済・生活問題、家庭問題、勤務問題、学校問題、交際問題と大きく6つに分類していて、それらをいくつも抱え込んだり、連鎖的に巻き込まれたりして自殺行動を取ってしまうと分析しているようだ。遺書や家族の証言などから、健康問題がもっとも多く、ついで経済・生活問題と家庭問題がそれに次ぐ。そして、勤務問題や学校問題、交際問題と続く形だ。

 学校問題は少なく見えるが、少子化の影響もある。決して軽んじることはできない。

 交際問題も少ないが、晩婚化や生涯未婚率が増加の一途をたどっている現状、甘くみることはできないだろう。

 様々な理由で、人は自ら死を選ぶということだ。


   †


 興味深い資料だったけれども、これは脇に置いておく。

 引用したのは、「他人事じゃないんだなぁ」って意識を共有したかったから。

 死にたいなんて、さして珍しい愚痴じゃないでしょ?

 問題のひとつやふたつ、誰だって抱えているでしょ?

 客観的で信頼のおけるデータだ。

 自殺者の置かれた環境をパターン分類する辺り、よく自殺を観察していると思う。


 ただ、これでは自殺者の内面を捉えているとは言えないのでは?

 確かに、官僚組織や警察組織は民衆に環境を提供する側だ。この資料は本当によくできていると思う。

 人々の行動を、外側からよくよく観察している資料だ。

 けれどもそれゆえに、私や君の立場に寄り添ったものではないと思う。


 情報収集力で巨大組織と競っても息切れを起こすだけだ。

 ゆっくり、呼吸を整えるように、自殺心理と向き合ってみよう。


   †

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