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記述主義者がペンを捨てるまで。  作者: ほんの未来
第7章:記述主義者と努力嫌いのための努力論。
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12 星空のバイアス

 いつもの友人さんが「君の知らない物語」を聴きながら投稿を待つって言ってました。

 なので(?)、私は「あの春を返して」を聴きながら読み返そうと思います。

 どこまでも夜空が広がっている。

 私と君は(そら)を歩くような、不思議な感覚を味わった。


 ここは無限図書館?

 いやいや、魔王の城じゃないさ、ごくごく普通の星空だ。


 君は星空を見て、何を思い浮かべる?


 織姫(ベガ)? 彦星(アルタイル)? デネブ? 夏の大三角かな?

 悪魔の星(アルゴル)? 天の河に、アンドロメダ!

 ちょっと真北からズレてるところがとってもキュートな北極星?

 そうそう、いっとう輝く人工衛星(アイツの星)? 通だねぇ。

 私? 晩秋の満月も忘れられないけど、オリオン座かなぁ。

 冬にバイトの帰り道で、よく見上げたんだよね。

 星座にはそう詳しくないけれど、あれだけは一目ですぐ分かる。


 さて、君が何を思い浮かべたかは、私には判らない。

 けれど、この星空にはあるのに、絶対に思い浮かべなかったものなら見当がつく。


 宇宙質量の95%を構成する、ダークマターやダークエネルギーのことを、ちらとでも思い浮かべたかな? まぁ、最近は宇宙年齢(137億9700万年)約2倍(267億年)で再計算すれば、なにもなくても宇宙は説明できるんじゃ、なんて新説も出てるらしいけど。

 星々の間に広がっている、闇に気づけなかったのは、なんでだろう?


 気づけなかったのは君だけの落ち度じゃない。

 ド・シェゾー=オルバースのパラドックス。

 星は無数にあるのに、夜空が暗いのはなんで? という議論がされるようになったのは16世紀ぐらいから。

 問題が定式化されたのはクリンケンベルグ彗星の論考が出た1744年のこと。


 つまり、有史以来、何千年もの間、人類はその恐るべき鈍感さでもって、星空の暗さを見落としてきた。


 不思議な現象だ。

 人間は容易く、浮かんだ疑問への答え探しに夢中になってしまう。

 その疑問を持つのに、何故こんなにも時間が掛かったのか? だって、毎夜毎夜私たちの頭上には夜空があったのに? いやまぁ、北欧とか白夜って現象もあるけども。一部の例外的な環境はあるにせよ、気付くチャンスは星の数ほどあったのに、何故こうもあっさり見逃してしまうんだ?


 人は見ているものしか見ていない。考えていることしか考えていない。

 当たり前の無知の知だ。けれど、そんな哲学上の問題と捉えていいのだろうか?

 もっと、認知システム的な偏向があるのではないだろうか?

 しかし、それはどんなものだろう?

 後光(ハロー)効果や悪魔の角(ホーン)効果というには、評価の歪み、上下がない。むしろ評価そのものをしていない。

 正常性バイアスなら、都合の悪い情報を無視していなければならない。だが、むしろ空きがあるという都合の良い……または中立的な情報を無視している。

 主観に根ざせば何もおかしいところはない。知らないことは知らない。解らないことは解らない。当たり前だ。だが、そこから導かれる認知や行動は、客観的な記録を基に考えると、明らかに偏っている。

 ダニングクルーガー効果やインポスター症候群? というには、自己評価の過大・過小なんて枠に収まっていない。

 自身の判断・評価に対する強い依存への無自覚さ。そこから生まれる偏った認知行動。何故こうも主観に偏向してしまう? 客観的な判断は難しいと嘆く前に、そもそも何故主観に縛られなきゃいけないのかを疑問に思うべきだったんじゃないか? 問題(ほし)に目を奪われて前提(やみ)を見落とす。人は、光にこそ捕らわれる囚人なのか?


 この現象に名前がないと不便なので、名付けてしまうことにしよう。


 星空のバイアス、なんてどうだろう?


 緊急で重要なことに疲れてしまったそんな夜に。

 君がこの言葉を思い出せるように。

 責任なんて、夜の闇に()かしてしまえばいい。


 なに、その場しのぎの責任を背負い続けて、問題が肥大化してどうにもならず破裂してしまうぐらいなら、自分からさっさと砕いた方が被害は小さく済む。

 場当たり的な行動を延々と続けるなんて、隠蔽(いんぺい)体質を(わずら)ってるだけなのだから、いずれ炎上ニュースになる展開(オチ)は普通に予想できる。

 だから、これを損切りと思うなかれ。

 ただ、『無責任(なんでもないこと)』を対価に、自分の主導権を買っただけだ。

 急かされることなく、重要なことにだけ集中すればいい。

 責任ある大人っていうのは、目先の責任に潰される人のことじゃない。人生全体で結果的に多くの責任を負った人のことだ。目先の無責任さでどうこうなるほど、この人生は軽くない。それだけのことだ。


   †

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