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記述主義者がペンを捨てるまで。  作者: ほんの未来
第7章:記述主義者と努力嫌いのための努力論。
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10 余裕を手に入れよう

 いや、びっくりした。

 君に渡した瞬間、希少性(ありがたみ)が消えてしまうなんて想定外だった。


 まぁ、でもそりゃそうか。

 私が用意した、私の『あそび』、これを持つ正統性は私にあって、君にはなかった。


 隠してても仕方ないし、『あそび』の作り方を紹介するね。


 ひとつ。『余裕(スラック)』を見つけること。(ここではまだ、『ゆとり』でしかない)

 ふたつ。『余裕(スラック)』を手に取ること。(ここでようやく『あそび』へと()わる)


 これだけだね。ちょっと想像(イメトレ)してみようか。実際やってみても構わない。


 状況開始。


 朝目が覚めて、しばらくして。

 ぼんやりしていた意識もはっきりしてきて、お腹がくうと鳴る。

 朝ご飯にしよう。

 君は茶碗(ちゃわん)を手にご飯を盛り、続いて汁椀(しるわん)に味噌汁をよそう。


 状況終了。上手くできたかな?


 もしパン派だったら、申し訳ない。

 食パンを焼いてマーガリンやバター、好きな味のジャムなどを塗って貰ってOKだ。

 イメージできただろうか?


 さて、ちょっと思い返してみて欲しい。

 汁椀に味噌汁はどのようによそってあるのかな?

 椀の(ふち)ぎりぎりまで、今にもこぼれそうなほどよそってあるかな?


 多分、そんなことはないと思う。

 そう信じて話を進めるけど、味噌汁本体ではなくて、一応まだよそおうと思えばできるけど……という無意識の空間、それが『余裕(スラック)』だ。

 ぼんやりしていたら気付くことさえできない、でもはっきりと認めてしまえば確かにそこに存在しているモノ。見つかったかな?

 それがあるお陰で、多少眠気が残っていても味噌汁をこぼすことなく、きれいに朝食を()ることができる。

「なにもない」が君に不利益から守ってくれるわけだ。これが『ゆとり』の段階。


 さて、『余裕(スラック)』を見つけたら、それを手に入れよう。

 どうやるか? 自分の都合で操作しちゃえば、その『余裕(スラック)』は君のものだ。


 たとえば、ものすごくお腹が空いている……なら、ちょっと多めによそってしまう。

 ちょっとまだ食欲ないかな? でも食べておかないと……なら、少なめにしよう。

 そうすれば、その『余裕(スラック)』は君のものだ。これで『ゆとり』は『あそび』に換わる。

「なにもない」が君に利益をもたらすわけだ。これが『あそび』の段階。


 朝はパン派の場合は、食パンに塗ってあるジャム、ではなく、ジャムを塗っていない部分を意識しよう。あるいは、ジャムの塗りムラ……もっと厚く塗ろうと思えば塗れたけど、の部分を意識しよう。それが『余裕(スラック)』だ。それを意識し、君次第の調整をすることで、君は『あそび』を手に入れる。


 ご飯茶碗の例なら、もっと大盛りしても良かった、でもしなかった。その部分が『ゆとり』であり、意識的に並盛りを選んだなら『あそび』に換えることができている。こっちはちょっと気付きにくかったかな?


 これが行き過ぎると、ご飯を超々々々々々々々々々特大大盛りてんこ盛りヒャッハー世界は今日も狂ってるぜ盛りにしなかったことを理由に、無限の『余裕(スラック)』があるかのような曲解もできなくはない。

 もっとも、物価高の社会情勢下で実際にやったら常識的に炎上リスク案件だ。社会的に死ぬのも嫌だし、追い詰められての精神病んでの自殺も嫌だ。その他、トラック転生や過労死も極力ご遠慮願いたいところだ。ふと魔が差して、それも良いかもな、と瞬間でも思ってしまう自分が居たら危うくて仕方ない。


 とまぁ、心配性な私の杞憂話が暴走しかけたところで、本筋に戻そう。

 さて、『余裕(スラック)』『ゆとり』『あそび』の基本を押さえることはできただろうか?


 これさえできれば、私も君も、もっと楽しく生きていけるだろう!


 そう、できれば、だ。

 ここで考えを止めてしまうと、またも空虚な理想論に終わってしまう。

余裕(スラック)』があれば良いなんて『余裕(スラック)』のある奴の戯れ言だよな、となってしまう。

 よし、その諦観を叩き割ろう。

 てやばち(以下略(照れくさいので))、すると、4つの疑問が現れる。


 疑問その1。『余裕(スラック)』を大量に手に入れる方法はないか?(難易度を下げたい)

 疑問その2。『余裕(スラック)』を見失う原因は何があるだろうか?((おじゃま)キャラの特徴は?)

 疑問その3。『余裕(スラック)』の正しい扱い方は?(闇堕ちルート&バッドエンド回避)

 疑問その4。『余裕(スラック)』で不慮の死を防げるか?(デッドエンド回避)


 これぐらい徹底しておけば、ノーマルエンド以上はほぼほぼ確定できるだろう。次の話以降はこのような疑問を解いていく形で進めていこうと思う。


 なんの因果か、世界が隙を見せるときが来る。チャンスだ。

 なあんて、因果もなにも隙間(スラック)だらけというか、世界は隙間(スラック)でできているようなもの。

 でも、必死になって小さな隙間(スラック)を探していたら、私や君の心の『余裕(スラック)』がなくなりました、となれば本末転倒だ。


 私たちが、自分の人生に負けずに居られるように。

 そして、ただ負けずにいることが、つらくなって(しま)わないように。

余裕(スラック)』のない社会に生きる私たちでも、『戦略予備(あそび)』を手に入れることができるだろうか?


 それじゃ、次は『余裕(スラック)』をガツンと大量入手する方法を考えてみよう。


   †

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