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記述主義者がペンを捨てるまで。  作者: ほんの未来
第7章:記述主義者と努力嫌いのための努力論。
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09 余裕、見つけました

 前回の話を読んだいつもの友人さんが、いきなり『余裕(スラック)』を自覚し始めててびっくりしました。

 読んで数時間のはずなのに……理解(わか)ってきてしまったというのか……っ!

 『余裕(スラック)』をもって大変美味そうな飯テロ画像をアップしてくるとかホントもう。


 予告:5月の連日更新を皆勤したら、5月31日の更新分は飯テロ話になります。第7章35話『お手軽クッキングコーナー』。お、覚えてろよっ。

 さて、『余裕(スラック)』について考えていこう。

 しかし、困った……『余裕(スラック)』は、目に見えない。聞くことも触ることも、嗅ぐことも味わうこともできやしない。

 五感では判らない、物理的実体のないものとどうやったら向き合えるだろう?


 案外、コロンブスの卵だと思うんだよ。

 割ってしまえば、卵を立たせるのが容易になるように。

 気付いてしまえば、あとは簡単な問題だ。


 よし。

 とりま、『余裕(スラック)』を叩き割ってみることにしよう。

 粉々になっちゃったらゴメンね!

 でも大丈夫、証拠も何も残らないはずだから。

 警官に追われるようなへまはしないさ、大丈夫!


 てやー。ばちこーん。


 気の抜けた感じで、肩の力を抜いて割ってみた。


余裕(スラック)』が2つに割れちゃった?

 一方は、あまり珍しさを感じられない。

 他方は、とても希少なものに思える。


 なんだろうこれ?

 名前がないと不便なので、名前を付けることにしよう。

 それぞれ、『ゆとり』『あそび』と名付けてみる。


 この『ゆとり』は……まるで降り積もる雪みたいだ。年中降るわけじゃないし、手に取れば儚さもある。でも、いざ降り積もるとなれば、要らんほど降ってくることもある。どこか冷ややかな、そんな印象だ。

 では『あそび』はどうだろう? 雪うさぎや雪だるま、雪まつりのように。降り積もる雪がなければできないが、見ているだけで……いや、思い馳せるだけで心が暖かくなる。


『ゆとり』と『あそび』、これはどちらも『余裕(スラック)』であることに変わりない。

 しかし、『ゆとり』は儚くもありふれていて、反面、『あそび』には希少性(ありがたみ)がある。


 この違いはどこから来る? 偶発的なものだろうか?

 確かに、初めは偶然だったのだろう。自然発生的で、大量の『ゆとり』の中から、『あそび』がたまたま生まれたのだろう。

 でも、気付いてしまえば、あとは簡単な問題だ。

『ゆとり』を意識的に『あそび』に換えてしまえばいい。

 輝石(あそび)が作れることに気付いてしまったら、当たり前に量産すればいい。


 ……そしてしばらくして。


 ほら、まだまだ改良の余地はあるけど、それなりの『あそび』を用意できたよ!

 皆に大々的に売り出す……には足りないけど、小さなお店ぐらいなら開けそうだね。

 ほら、君が最初のお客さんだ! お試しに、おひとつどうぞ!


 そして、君は『あそび』を手に取った。


 すると、その輝石はあっという間に色褪せてしまったんだ。

 

 あれっ!? すぐ返品して貰い、詳しく調べる。

 こんなの、どこからどう見ても『ゆとり』じゃないか!

 そうして慌てている内に、それすら虚空に融けて消えていった。ああもう儚すぎる!


 そして、ああだこうだと、色々試してみて解ったこと。


 この『あそび』は誰かに受け渡すことができない。

 自分で用意しなければ、決して輝くことはなかったんだ。


   †

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