06 奇術主義者と0の概念
さぁさ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!
毎度いつもの悪い冗談!
奇術主義者のマジックショーの時間だよ!
見るだけならお代は無料! 隅の広告はご愛敬。ああ、ここに来るのに掛かった交通費は各自負担でお願いするよ?
この度お披露目するのは、定番にして世紀の大奇術。
虚空から様々なものを取り出す、という例のアレ。
まぁ私には流石神さんほどの技量もないので?
世界平和とか、世界を買えるほどの富とかは無理だけどね。
多少なり珍しいものぐらいなら取り出せる心算さ。
例えば……、そうだね。
『君の幸福』なんてどうだろう?
『心安らぐ穏やかな時間』、あるいは『明日を変える勇気』。
『君の心』、『充足した人間性』。
『生きる理由』や、『才能』なんてどうかな?
それらをぽんと、いとも容易く取り出して見せたなら、君は笑ってくれるだろうか?
Q.種や仕掛けは?
A.『なにもない』
Q.でもでも実際、ホントのところは?
A.いやいや、本当に『なにもない』んだ。
むしろ、『なにもない』ことが種や仕掛けになってるからね!
種も仕掛けもない手品のことを魔法と呼ぶのならば。
『なにもない』ことが種や仕掛けである手品は、魔法域に迫れるだろうか?
人間性における0の概念。次はそんな話にしよう。
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