07 世界の仕組み
まずは、世界の仕組みについて。
――世界は構造でできている。
以上。たったこれだけです。
まぁこれだけだと何が何やらだと思いますので、例を示しますね。
宇宙という大きな構造があります。
その中に、地球という構造があります。
その中に、日本とか、アメリカとか、中国みたいな構造があります。
その中に、私だとか、君のような構造があります。
それとは別に、宗教や人種、思想のような構造が重なり合ったりもしています。
そして、大事なことは、私や君も構造だということ。
君の中にも心とか、身体とか、細胞とか、カルシウムとかがあって、それらも全部構造です。
構造には外側とか内側とか、重なっているとか重なっていないとか、そういう関係性はありますが、優劣や上位・下位という概念はありません。
あくまでも、ただの構造です。
たとえば、君は宇宙や地球、国や地域、会社や学校、そういった外側の構造の奴隷ではありません。なぜなら、君自身も同じく構造であり、構造同士の関係性を変えようとすることができるからです。
あるいは、君は物を作ることができる。言葉を投げかけたり、文字を並べることもできる。それらも全て構造です。君は新しい構造を自分の中に作ることもできれば、自分の外に解き放つことさえできます。
そして、世界を構造だと考えるメリットはなんだろうか?
まず、自分を含めて、客観的に全体を眺められるようになること。
そして、構造を知っていくことで、それが長く続きそうな構造なのか、今にも壊れそうな頼りない構造なのかの判断ができるようになること。
さらに、似た構造がないか前例を知っていれば、この先その構造がどう変化していくのか予想できること。
ちょっとやってみましょうか。
昨今、化学調味料の是非が話題に上がっている。
これからどうなっていくのか、今後の予想をしてみよう。
どうやら、ラーメンには化学調味料が多く使われているらしい。
化学調味料というのは、非必須アミノ酸のひとつ、グルタミン酸のことだ。
自然界にもありふれていて、特に人体に害があるとは考えられない。
なぜ化学調味料を毛嫌いするんだ?
ここで、構造を考えてみる。
ラーメン業界という大きな構造がある。
その中に、ラーメン屋という構造がたくさんある。
ラーメン好きのお客さんという構造がさらにたくさんある。
ラーメン業界という構造の中で、ラーメン屋という構造が、お客さんを奪い合っている。
ここに、化学調味料という、お手軽にうま味を付け加える調味料が登場する。これを使えば、お客さんが喜んでやってくる。
ラーメン屋は競い合うように化学調味料を使う。他の店よりたくさん使うことができれば、お客さんが喜んでくれる。油や塩をどんどん入れれば、化学調味料をもっと入れることができる! これでお客さんがもっと喜んでくれるよ!
ここで、おや? と気づく。
これって、チキンレースのような構造ではないか?
あるいは、バブルの構造と似ていないか?
今後、それらと似た展開になるのでは?
つまりこうだ。
何らかの事故が起きて、注目を浴び世間から叩かれて、政府の規制が入って終わる。
何らかの事故とはなんだろうか? 味が濃くなりすぎることで味覚障害が出たとか、どこかの学者さんがラーメンと寿命の関係について論文を発表したとか、まぁそんなところだろう。繊細な味わいを! 健康的な和食は日本が誇るユネスコ文化無形遺産だぞ! とか世間が騒ぎ出す。で、最終的に政府が化学調味料規制法みたいな法律を作って、騒ぎが落ち着く。ラーメンは急に味が薄くなり、客離れが起きてラーメン屋は潰れまくる。大衆はそれを見て、当然だろうと鼻で笑う。同情なんてカケラもない。あんなに美味しいラーメンだと言っていたのに! そりゃ、ラーメン屋も頑張って立て直そうなんて考えない。そして、ラーメン業界は衰退する。
という展開が予想できる。
ついでに言えば、自由競争という構造の中ではこういう流れで政府の規制がいっぱいできて、どんどん生きづらくなっていきます。ありふれた話ですね。ラーメンぐらい好きに食べたいのに。
欠点は、大まかな流れは予想がつくけれど、いつこうなるかは分からないということ。明日かもしれないし、百年後かもしれません。
それでも、実際に味わってみれば、大体分かると思いますけどね。
これを事前に防ぐとなれば、ラーメン業界が自主規制をすることでしょうか。あるいは、皆がラーメンをよく味わって食べるというのも良いと思います。
そういうことを、ラーメン業界という構造の中だけで実現できるか、が事の明暗を分けるのではないでしょうか。政府という外の構造に〆られたくないなら、ね。
――という感じで、ラーメン業界の未来に想いを馳せることができる訳です。
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