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D・六日目

 月曜日の朝、俺はある実験をしていた。いつもとは違う場所に立っていた。ここは次に到着する電車が停止する、その四両目の後ろ側の更に後ろ。つまりは電車が通り過ぎる場所だ。そして体を右に向けている。彼女が現れるであろう方向を見ているのだ。


 やがて彼女が現れた。先週と同じく、見慣れない制服に大きなバッグという出で立ち。跨線橋の階段を下りてきて、クルリと反転してホーム脇を進んでいく。しかしすぐに立ち止まり、キョロキョロと首を振った。程なくして、こちらを見た彼女。そうして近寄ってくるのだが、決して急がず、ゆっくりといつもの速さで歩いてきた。


「おはよ」


 笑顔でそう言った彼女は、またいつもの場所へと歩いていく。


 ・・・なんで?


 俺はまた戸惑っていた。いや、もはや混乱していたと言っても良いだろう。


 彼女は跨線橋を下りてから、いつもの場所に俺の姿がないのを確認すると立ち止まって俺を探し、わざわざ電車が停まらないこの場所までやって来て俺に挨拶をした。


 どうしてそこまでして俺に挨拶をしたいのか。その理由が俺には分からない。もちろん彼女が誰なのかも分からない。


 立ち尽くしていた俺は、到着した電車に駆け寄った。そして、この日は四両目に乗った。




 実をいうと土日のあいだ、俺は彼女のことを考えていた。今日の実験を思い付いたのは日曜の夕方だ。さらには小学校と中学校の卒業アルバムを久々に見返していた。その2日間で何度も何度も見返した。だけど彼女の姿は載っていない。とはいえ小学校の卒業アルバムでは意味がないのかもしれない。彼女が俺と同い年なら、もう三年も経っている。この時期の三年は、ただの三年とは言えない。急激に成長したり大きく変化したり、そういうことが充分に有り得るからだ。よって、顔立ちが変わっていてもなんら不思議はない。




 座席の上で体を揺られながら、思案する。彼女は先週から俺に挨拶をしてきた。それまでに彼女の姿を見掛けたことはない。いや、もしかしたらあるかもしれないが、記憶にはない。少なくとも彼女の顔は見ていない筈だ。そして彼女は俺に挨拶をするだけ。会話はしないし、同じ車両に乗ることもない。だけど今日みたいな状況でも挨拶だけはしてくる。それは、なぜなのか。


 他にも妙なことがある。跨線橋の階段は二つ、東側と西側にある。彼女はいつも西側の階段から降りて来ているようだが、二両目の前側に並ぶなら東側から降りれば良い。その方が近いからだ。彼女はわざわざ遠回りをしていることになる。それは俺に挨拶をするためなのか。


 更に不可解なのは、彼女が着ている制服だ。あんな制服は見たことがない。この辺りの学校に、彼女と同じ制服を採用してるところはない筈だ。


 それらのことを夢中で考えていたため、遅刻しそうになった。降りるべき駅を、危うく見送るところだった。




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