B・二日目
翌日の朝、いつもと同じように電車を待っていた。四両編成の電車の三両目の後ろ側。そこが俺の定位置だ。その場所に今日も一人で立っている。
時刻は午前七時過ぎ。俺はこのあと七時十五分発の電車に乗って、およそ四十分ほど体を委ねて、そこから十五分ほどのウォーキングをして学校へと向かう。ホームルームが始まるのは午前八時二十分。結構ギリギリの登校時間だといえる。しかし学校に早く着いたところで特にすることもないから、これで良い。だろう。そんなことよりも気になることがある。
昨日のは、なんだったんだ? 誰かと間違えたのか? 知り合いではないよな?
小学校、そして中学校のクラスメイトなどの顔を思い出しながら、昨日の女子の姿と照らし合わせる。
・・・やっぱり、あのコの勘違いか?
そう結論付けようとしたとき、
「おはよ」
と、あの声が聞こえた。またしても左耳の後ろからだ。俺はすぐに首を右に振った。そこには、あの女子がいた。
昨日と同じ制服を着ていて、昨日と同じようにえらく大きなバッグを右肩から提げて、昨日と同じように髪をフワフワと揺らして、昨日と同じように俺から遠ざかっていく。そんな女子の姿を俺の目が捉えた。その距離は約一メートル。昨日よりも素早く彼女の姿を捉えられたが、顔を見ることはできなかった。フワフワと揺れる髪の先にある左頬と、その奥にある鼻先を視認するのがやっとだった。
しかし気付いたことがある。彼女が通り過ぎたあとに漂う香り。それはなんというか、とても甘く、とてもイイ香りだった。シャンプーなのか、リンスなのか、はたまたコンディショナーか。それは分からないが、昨日は気付かなかった香りに鼻をくすぐられた俺は、少し嬉しくなった。
彼女は昨日と同じ場所に辿り着くと、体を横に向ける。そこは次に到着する電車の二両目の前側。俺たちの間には、やはり二つの列がある。なので今日も彼女の横顔をシッカリと確認するのは難しい。昨日のように手前の列に並んでいる人から顔を向けられても困る。だから早々に彼女の横顔から視線を外した。
あのコの勘違い・・・だよな?
そう思いながら、到着した電車に乗り込んだ。




