表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/13

M・十八日目の夕方前

 愛の告白にも聞こえた彼女の言葉。


 それは気のせいだろうか、勘違いだろうか・・・。俺には、よく分からない。しかし彼女が俺の気を引こうとしていたのは間違いないようだ。


「気にして欲しい、って・・・。えっと・・・、な、なんで?」


「さぁ。なんででしょうか?」


 おどけた表情をする彼女。それは照れ臭さの表れか、それとも俺をからかっているだけなのか。


「いや、俺に訊かれても・・・」


「気にはなったでしょ? 色々と」


「そりゃあ、まぁ・・・」


 たしかに気になった。それは間違いない。なぜ毎日挨拶をしてくるのか、どこの制服なのか、彼女は何者なのか・・・。


「ワタシね・・・。キミに助けられたの」


「え? 助け・・・?」


「小五のとき、塾に通ってなかった?」


「小五? あ~・・・。小三から小五まで行ってたけど・・・」


 俺はその期間、家から少し離れた場所にある塾に自転車で通っていた。しかし、あまりにも成績に変化がないので小六になる前に、親にやめさせられたのだ。


「ワタシも、その塾に通ってたの。キミとはクラスが違ったけど」


「え!? そうなの!?」


「うん。小五から」


「え? あれ? ・・・キミ、いくつ?」


「十五だよ。九月で十六になる」


 俺と同い年だ。


「あ、そうなんだ・・・。ん? ちょっと待って。あの塾、キミの家からは遠いんじゃない?」


「うん。だからお母さんに、車で送り迎えをしてもらってた」


「あ~、そういうことか・・・。えっと、それで? 『助けられた』って、どういうこと?」


「小五の四月から塾に通ってたんだけど、全然知ってるコがいなくて・・・。ワタシ、苛められてた───っていうか、からかわれたりしてたの。半年くらい、ずっとそんな状態で・・・。そんなとき、キミが助けてくれたんだよ。覚えてない?」


「・・・全然覚えてない」


「ま、そうだよね。そういうのって、助けられた方はずっと覚えてても、助けた方は覚えてなかったりするんだよね」


「・・・本当に、俺なの?」


「うん。そのあと、塾の先生からキミの名前、教えてもらったから」


 おい、個人情報・・・。


「あのときワタシ、すごく感動したの。王子さまが現れた、って」


「いや、そんな大層な・・・」


「そんなことないよ! すっっっごく、カッコ良かったんだから! 『そんな大勢で女子一人を囲んで、恥ずかしくないのか? 情けないな、オマエら』って、言ってくれたんだよ?」


 え? 小五の俺、そんなこと言ったの? なに? なんか俺のキャラじゃないんだけど・・・?


「でもワタシ、そのときにお礼を言えなくて・・・。『ちゃんと、お礼を言わないとイケない』って、ずっと思ってたんだけど、なんか恥ずかしくて、なかなか言い出せなかったの。そしたらキミが、塾に来なくなっちゃって・・・」


「・・・・・・・」


「それからは、ずっとキミのことが忘れられなくてね・・・。友達とかにキミの名前を教えて、知ってるコがいないか尋ね回って・・・。それをこの前まで、続けてたの」


「え? 尋ね回ったの? つい最近まで?」


「うん」


 おいおい、個人情報・・・。それにしても、なんという執念だ・・・。


「そしたら先月、キミと同じ高校に行ってる友達から、『見つけたよ』って連絡が来て・・・。それで、あの駅に会いに行ったの」


「え!? その友達って、俺のクラスメイトなの!?」


「ううん、違う。でも、入学式のクラス分けの貼り紙に、キミの名前があったみたいで・・・」


 あ~、なるほど、なるほど。たしかに入学してすぐに、やたらと俺のことを聞いてきた女子がいたけど、多分あのコがそうなんだろうな。


「でも、『ただ会いに行っただけじゃ、それで終わりだ』って思ったから。キミの気を引くために、色々と考えたんだよ」


「それが、『挨拶とか制服だった』って、こと?」


「うん」


「そっか・・・。そうだったんだ・・・」


 それなりの期間に(わた)って抱えていた俺の疑問は、一通り、答えを得た。


 それにしても、意外なことが多かった。制服の正体、彼女の住所、そして彼女と俺の接点。


 だいぶ小さくなった氷が浮かぶ飲み物を一口飲み、俺はようやく一息ついた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ