表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/13

J・十八日目の午前中

 それから二十分と少し。ようやく到着した電車に乗り込んだ俺たち。車内で色々と話をしたが、彼女は肝心なことは、なにも教えてくれなかった。そして約一時間ののち、街へと着き、大きな駅から出る。


「わ~。やっぱりこの辺は都会だね~」


「うん。そうだね」


 しみじみと言った彼女に素直に同意した。ここの駅前は、それなりの高さのビルが建ち並び、行き交う人の数も結構なモノだ。本当の都会に住んでいる人間からすれば『しがない地方都市』にしか見えないだろうが、田舎に住んでいる俺からすれば、ここは立派な都会だ。


 ん? 彼女が住んでる場所も田舎なのか?


 平日は毎日同じ電車に乗っているのだから、彼女は俺の家の近くに住んでいるのだろうけど、彼女に関しての手掛かりは皆無に近い。だから俺は、ちょっとした彼女の言動がすぐ気になってしまう。


「八時半過ぎかぁ。お腹空いたし、なにか食べようよ」


 キョロキョロと辺りを窺う彼女。この時間だと開いている店はまだ少ない。飲食店となると、ファストフード店やコーヒーショップくらいだろう。しかし、そんなことよりも・・・。


「え? 俺、食べてきたけど?」


「なんで!?」


 目を見開いた彼女の様子に、少し驚く。どうして食べて来なかったのだろうか、と。


「いや、いつも食べてるし。今日も普通に食べたんだけど・・・」


「そりゃあ、学校があるときは食べるだろうけど。こんな早くにお出掛けするのに、なんで食べてくるの?」


 眉間に(しわ)を寄せて唇を尖らせた彼女。どうやら少し怒っているようだ。すると、


『ググゥ~~~・・・』


 と、彼女の腹の虫も怒り始めた。


「・・・・・・・」


 体内に棲むペットの鳴き声を聞き、顔を少し赤らめて俯いた彼女。なんだか可愛らしい姿に笑い声が漏れる。


「プッ・・・。とにかく、どこか入ろうか。俺は飲み物でも注文するよ」


「・・・うん」


 そうして俺たちは歩き出した。




 駅から程近い大手チェーン店のドーナツ屋へと入り、軽い朝食を済ませた彼女。俺はそのあいだ、カフェオレをチビチビと飲みながら、その姿を見ていた。


「・・・あんまり、見ないでよね」


 と言ったときの彼女の顔はそれなりに照れ臭そうで、これまた可愛く感じた。




 ドーナツ屋をあとにすると、彼女からの質問が。


「・・・今日のカッコ、どう? 変かな?」


 未だに謎な存在ではある彼女だが、その問いは、よくあるモノだった。


「いや、変じゃないよ?」


「・・・・・・・」


「・・・・・・・」


「・・・え? それだけ? 他になにかないの?」


「へ? え~っと~・・・」


「はぁぁ~~~・・・」


 なんとも深く長い溜息と、残念そうな表情。そして、そのあとには少し怒ったような顔つき。


「もうイイ。会った瞬間になにか言ってくれると思ったんだけど、それもなかったし」


「いやいや! に、似合ってるよ うん、似合ってる!」


 可愛いと思ってはいたが、そんなことを口にするのは、なんだか恥ずかしい。だけど正直に言うべきだったようだ。彼女はその後、不機嫌になってしまった。






 午前十時過ぎ。この時間になると、商業施設も随分と開き始めた。そして、ヘソを曲げていた彼女の顔も晴れてきた。俺たちは色々な店を見て回り、他愛もない会話に勤しんだ。ペチャクチャとよく喋り、よく笑った。そして正午近くになると、二人で昼食選びを始めた。片手にスマホを(たずさ)えてブラブラと歩き、あれこれと意見を交換した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ