結婚5年目で「ごねんね」と言いがちな夫の話
ウチの夫はよく駄洒落を言う。
「ふとんがふっとんだ」「コーディネートはこーでねぇと」「予想はよそう」はもはや日常。
毎年クリスマスツリーを見れば「壮大な釣りー♪」は当然。
そんな夫と結婚して5年。
クリスマス直前、事件は起きた。
私の実家で、夫婦と私の両親、4人で食事をしていた時のこと。
時期的にクリスマスの話になり、父が讃美歌の話題を出した。
最近カラオケにハマっており、讃美歌の13番をよく歌うらしい。
すると夫は、こう言ったのである。
「十八番なのに13番なんですね!!」
……と。
一瞬、ガキンと硬直する私。
しかし両親は全く意味を理解できておらず、夫の言葉は完全にスルーされ。
「そーねぇ、お父さんこう見えて意外に歌がうまくてねぇ~」と、何の澱みもなく話が続いてしまった。
だがそうなると、次に硬直するのは言葉を放った夫の方である。
駄洒落というものは場が綺麗に凍りつくまでが様式美であり、流してはならないもの。駄洒落を放った方が凍ってしまうから!
ガキガキに凍り付いた夫。
そんな彼にようやく両親は気づき、
「ん? どうした?」
「何かおかしなこと言った?」と追いうち。
純な眼差しで見つめてくる彼らに説明しないわけにもいかず、夫はしどろもどろになりつつ
「あ、あのですね……
カラオケの持ち歌を、よく十八番っていいますよね」
「うん、言うね」
「それが何故か13番っていうのが……面白いなって……つい」
一瞬、完全に、しんっ……とする場。
しかし。
「おー、なるほどなぁ!
得意な歌、つまり十八番と13番をかけたわけだな!」
「あー、やっと分かったぁ!
さすがだわ、やっぱり貴方は頭がいいのねぇ~!!」
滅茶苦茶大笑いしながら拍手する両親。
一方で夫はさらに小さくなるばかり。
ギャグが全く理解されず、説明を求められ、自らギャグの意味を説明するハメになり、そして「よくできました」と言わんばかりに褒められる。
駄洒落芸人にとってこれほどの地獄が存在するだろうか。
帰り道。
「ごめんね……ごめんね……
こんな僕と5年もいてくれて……ごねんねぇえぇえ」と、夫がずっと泣きじゃくっていたのは言うまでもない。
そんな夫の背中を撫でながら、私は言った。
「うん。それじゃ、15周年も25周年もその後もずっと、その駄洒落を言ってね♪」
「ごねんねぇええぇえぇ!!」