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DAY2-①オッドアイは不吉?鳥と子どもに懐かれました

来ていただいてありがとうございます。



クオーツ王国の王都。ルチル。城壁に囲まれた都市。私がいたのはその外側の街道沿いに近い草原。街道は港町アクアに続いてる。一座は船で隣国から招かれたんだって。馬車はお祭りムードの街の中を進む。石畳の道とか建物は写真で見たことがあるヨーロッパの街並みみたい。お花があちこちに飾ってあって、人もたくさんいて賑やかだ。


真っ白な石造りの王宮の広間にも花がたくさん飾ってあって、夢の世界みたいに綺麗だった。お祭りは今年は特別らしい。聖女様が降臨なさったんだって。そのお祝いもあっていつもより盛大に行われるんだって。


いつもなら、街の中心地の広場で興行するんだけど、今年は特別に王宮内に招かれたんだそう。そんな時に素人の私が入っていいのか?でも、もうすぐ始まるし、腹をくくるしかないよね。頑張る。幸い出番はちょっとだし。



何とか歌い終えて、私の出番は終わったので控え室として準備された部屋に戻ろうと思った。失敗しなくて良かった……。まだ舞台は続いてる。歌姫の姉さんの独唱の後、もう一度舞姫の女の子が一人で舞を披露するんだって。本当はまだみんなと一緒にその場にいた方がいいんだろうけど、座長さんがそっと退場すればいいって言ってくれたので、お言葉に甘えることにした。人が多くてすごく緊張した……。ライブの時はこんなにお客さんいなかったから……。あ、ちょっと落ち込んできた。


部屋に戻る……。

「あれ?どっちだっけ?」

うわー迷った?どうしよう……。誰かいないかな?誰もいませんね……。なんか中庭を囲む回廊みたいなところへ来ちゃったよ。えーと、迷子になったら動かない方がいいんだよね。


池の周りを木々が囲んでて、花がところどころ咲いてる。優しい白い光が差してて、ちょっと神秘的な感じがした。いわゆる庭園って感じじゃなくって、そこだけ森を切り取ったみたいな庭だった。私は池のほとりの岩の上に座って誰かが通りかかるのを待った。

「綺麗……。お城の中ってこんな所もあるんだ」



異世界二日目かぁ。そういえば今日は今度やるライブの打ち合わせの日だった。実は私、作詞作曲もやってるんだよね。うちのグループはあんまり人気なくて、私の作る曲が悪いからだって言われた……。あーあ。でもさ、カバー曲やってもそんなに盛り上がらないんだけど、それはどうなの?私の曲、そんなに駄目かなぁ。


「朝焼けの……………………結晶……雨の雫に……風の翼に光をのせて……私はいつも雲の中……」

ちっちゃく歌ってみた。うーん、やっぱ駄目かな?自分では良くできたと思ってたんだけど……。あれ?なんか鳥がいっぱい飛んできた!あ、ここ水辺だから?


「わあ、綺麗な色……」

オカメインコ位の大きさで、尾が長くて冠羽のある鳥。一羽一羽色が違う。一色じゃなくて、青なら濃い青→青→薄い青→薄い黄緑→黄色みたいなグラデーションがかかった色。よく見たら目の色もそのグラデショーンの中の一色みたい。そしてうっすら光って見える。夜に見たらもっと綺麗だろうな……。


異世界の鳥は綺麗で不思議……。なんかテンション上がってきた!さっきよりちょっと大きい声で歌ってみた。今度は一昨日できたばっかの新曲ー!ええ?!鳥達もさえずり始めた!頭とか肩に乗ってくる子もいる。この世界の鳥って懐っこいのかな?楽しいな!




かさり。草を踏む音がして、鳥達が一斉に飛び立ってしまった。あらら……残念……。でも誰か来たんだろうから、やっと控え室に戻れるかも。期待を込めて足音の方を見た。


すっごい綺麗な男の子がいた。小学校低学年位かな?

プラチナブロンドの髪に透き通るような白い肌。そして瞳の色が……!青と薄紫のオッドアイ!とっても綺麗……。思わず岩の上から覗き込んじゃった。

「わあっ、綺麗な目だね。青空と朝焼けの空の色」


「!」

その子はとても驚いた顔をしてた。元々私を驚いた顔して見てたけど、もっと驚いたように目を見開いていた。

「今歌っていたのは貴女ですか?」

小さいのに丁寧な子。

「うん。そうだよ」

「貴女は精霊使いなのですか?」

「え?」

ごめんね、ちょっと何言ってるか分からない。

「えーと、ごめんね、良くわからないや」


「…………」

あ、なんか考えこんじゃった。とても賢そうな男の子だなぁ。中身は大人で探偵とかしてないよね?なんちゃって。

「貴女は旅の音楽一座の方ですよね?もう一度、歌ってみてもらえませんか?」

ええ?いきなりリクエストされた?でも、私は……。

「ごめんね。私は新米だから……」

それに合唱とかならともかく、人前でソロは無理。絶対無理。

「お願いします!」

膝に縋られてしまった……。どうしよう……。

「ごめんね。私あがり症だから……。人がいると上手く声が出なくて。みんなと一緒だと大丈夫なんだけど」

だから、ボーカルじゃなくてギターやってたんだよね、私。

「……そうですか」



「殿下!」

低い声が聞こえた。回廊の方から背の高い男の人が走って来た。剣に手をかけてる。ん?今『殿下』って言った?てことは、この男の子って……。

「もしかして、あなたって王子様?」


ひえー、私王子様に普通に話しちゃったよ?不敬罪で処刑されちゃうかも……。慌てて岩から下りて膝をついた。座長さんから教わった。王族とか身分の高い人の前では許可が無いと顔を上げちゃ駄目なんだって。

「失礼しましたっ」

うわーどうしよう。


「クオーツ王国第四王子クリストフェル殿下に対して上から声をかけるとは何たる無礼」

走ってきた茶色い髪の騎士っぽい男の人が怖い顔して剣を抜いた!ああ、もうダメかも!

「よせ!トール!構わない」

「しかし、殿下!」

「幸い誰も見てない。大丈夫だ。落ち着け。僕はこの人と話がしたいんだ」

あ、助かったみたい?





私達はいっぱい話をした。私が異世界から来た事、アルスター一座に拾ってもらったこと。小さな王子様は異世界から来た事をそのまま理解してくれてるみたいだった。


小さな王子様のお話も聞かせてもらった。この世界では両目の色が違うのは不吉とされているらしくて、この子はあまり良い扱いをされてないみたい。ただ、王子様なので邪険にするわけにもいかず、無視状態、空気扱いみたい。ちょっと酷いね。こんなにきれいなのになぁ。


「あまねの世界ではこういう目は珍しくはないのですか?」

「え?うーん、珍しいかもしれないです。少なくとも私の周りにはいなかったです」

小説とか本の中にはいたかなぁ……?


「……そうなのですか」

小さな王子様の雰囲気が更に柔らかくなったような気がする。

「……敬語で話さなくても良いですよ。誰も見ていませんし」

いやいや、後ろで怖い顔をしてる騎士様がいらっしゃいますから。さすがに王子様だからね。それにあなたも敬語使ってる……。




不思議。私はあんまり人と話すのが得意じゃない。だけどこの小さな王子様、クリストフェル君とは話がしやすかった。何でだろう?人と話をするのが楽しいのはいつぶりかな?いつもよりたくさん笑ったような気がする。






ここまでお読みいただいてありがとうございます。

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