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体育祭②

二種目目は障害物競走。グラウンドには、平均台や、紐に吊るされたパンが、次々に準備されていく。


「障害物競走面白そうだね。」


「そうだな。海結が出たら最初の平均台で落ちて、足引っ張りそうだな。」


「そんなことないよ。」


自分でも自信が無いのか、小声で否定する。そんな話をしていると、障害物競走がスタートした。

障害物競走は、大いに盛り上がり体育祭のボルテージも上がってきた。隣の海結も赤組の勝敗で盛り上がっていた。


次の種目は借り物競争で、これも定番だと思う。参加する生徒が続々と集まっていく。


「あれ?」


驚きの声に海結が反応する。


「どうしたの?」


「先輩が出てる。学年対抗リレーしか出ないって言ってたのに。」


「ほんとだ!ちゃんと応援しなきゃ。」


気合いを入れているのは、先輩はが白組だということを忘れているからだろう。


「先輩って誰?」


会話を聞いていた碧と凪砂さんが興味津々といった感じで、聞いてきた。


「中学の頃お世話になった先輩。」


「へぇ〜。で、どこにいるの?」


凪砂さんの質問に、海結があのポニーテールのかっこいい人。と、指を指していた。


「先輩って女子か!男かと思った。」


「まあ、男勝りな人だからな。」


「そうじゃなくて。お前に女子の知り合いがいると思ってなかっただけだから。」


先輩を男子と勘違いしてきるのかと思ったら、辛辣な言葉が返ってきた。


「酷くね!?否定はできないけどな。」


「まぁまぁ、お世話になったんなら応援しないとな。」


話をそらされたのは納得いかないが、お世話になったのは事実なのでしっかり応援することにした。

そして、借り物競争が始まった。グラウンドを一周して、お題箱の前に一番に辿り着いたのは先輩だった。箱からお題を引いても動き出さず、立ち止まっていた。


「先輩どうしたんだろ?」


「難しいお題でも引いたんだろ。」


しばらくして、なにか決心したように動き出した。先輩は、一直線にこちらに向かってきている。


「上水流。私と一緒に来い。」


俺の目の前まで来た先輩が、有無を言わさず俺の手を掴んで引き上げる。手を引かれたままゴールに向かう。


「お題。なんて書いてあったんですか?」


「そ、それはだな...」


言葉に詰まる先輩。動揺して目を背ける時は、決まって言い訳を考えている時だ。


「そう。仲の良い後輩。ってお題だ。」


「それなら、先輩は仲の良い先輩。ですね。」


先輩は滅多に嘘をつかないが、その嘘はわかりやすい。お題の内容が嘘であれ、仲の良い後輩だと思ってくれてるのは素直に嬉しい。

そして、一番でゴールテープを切った。先生にお題の書かれた紙を渡すと、何故か先生たちから暖かい目で見られた。


「先輩。」


「なんだ?」


「赤組としては嬉しくありませんけど、一着おめでとうございます。」


「ありがとう。私も助かったよ。君のおかげだな。」


少しして、借り物を終えた生徒たちが、続々と帰ってくる。人も多くなってきたので、席に戻ろうとすると先輩に呼び止められた。


「なんですか?」


「えっとだな。振替休日の日に、二人で遊びに出かけないか?」


「いいですね。その日は暇してたんです。」


先輩と遊びに行くなんて久しぶりで楽しみだ。そう思い、席に戻ろうと背を向ける瞬間、先輩の顔が赤く染まっているように見えた。


「ただいま。」


「あ、翔太くん。おかえり。」


元いた席に戻ると、海結が浮かない顔をしていた。碧と凪砂さんかよく分からないまま慰めているが、いつも通りに戻る気配は無かった。


「どうしたんだよ。」


「別に...なんでもないよ。」


海結に話しかけるが、顔を背けられる。このままでは埒が明かない。


「先輩のお題なんだったか分かるか?はぐらかされて、分からないんだよ。」


碧と凪砂さんにも向けた言葉だったが、海結が先輩のお題にピクっと反応した。


「私、分かるよ。チラッと見えたの。」


碧と凪砂さんは首を傾げて分からないと言ったが、海結が浮かない顔をしたまま頷いた。


「教えてくれない?」


「いいよ。教えてあげる。先輩のお題はね...。やっぱり教えてあげない。」


「え〜。なんでだよ。」


「覡先輩がお題をはぐらかしたのは、まだ君には知られたくなかったってことだよ。」


言ってることは正論なので、納得はするがどうも、消化不良が否めない。取り敢えず今やるべきことは、海結を元気にすることだ。

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