登校
海結と一緒の登校を二日ぶりに楽しんでいると、碧と凪砂さんが来た。
「おはよー。海結ちゃん、上水流くん。」
「よう。翔太、上水流さん。」
今日だけは勘弁して欲しかったが、海結と凪砂さんはそのまま話し出してしまった。
「邪魔しちまったか?」
「いや、別に...」
「嘘だね。顔に邪魔だって書いてあるぞ。」
どうしてこんなにもポーカーフェイスが苦手なのか。
「碧は、体育祭なんの競技に出る予定なんだ?」
肯定するのも腹立たしいので露骨に話を変える。
「クラス対抗百メートルリレーに出るな。翔太は?」
「俺は、学年対抗リレーに出ることに決まってた。」
自分の意思では無いことをしっかり示しておく。俺が目立ちたくて選んだと思われる訳もないと思うけど。
「応援してやるよ。上水流さんとな。」
「は?おまっ、何言って...」
「ははっ。冗談だよ。じゃあ俺たちは先に行くから、ゆっくり学校来いよ。」
そう笑い飛ばしてから、凪砂さんを連れて行った。そして、また海結と二人になった。
「凪砂さんとどんな話してたんだ!」
「へ?いや、別になんでもないよ。」
両手を前に出して、手と首を振りながら言われた。焦っている上にちょっぴり顔が赤い。
「女の子のプライベートを詮索するのは禁止だよ!」
「プライベートって、芸能人か何かかよ。」
「とにかく、何も無いの!分かった!」
これ以上、詮索するとまた怒られそうなので、はいと返事をしてこの話を終わらせた。
「でも、翔太くんと登校するとなんだか楽しいね。」
「そうだな。俺もまた、一緒に登校できて嬉しいよ。」
それから、体育祭のこととか、明日のお出かけの他愛ない話をしながら登校した。二日ぶりに学校を少し楽しみに思うことができた。
教室に入るとほとんどが登校して来ていた。俺が教室に入ると、何故かざわついたがいつも通り誰からも話しかけられること無く、一時間目が始まった。
今日の体育は体育祭の練習で、全員参加のクラス対抗リレーのバトンパスの練習をしないといけないらしい。俺の相手はあの金髪なのでほんとに気が乗らない。
「ほら、練習するから早く位置につきたまえよ。」
あれ以来、全く絡んでこなくなった金髪。思ったより素直な奴かもしれないが、嫌いなものは嫌いだ。
「俺に追いつけたら、そのバトン受け取ってやるよ。」
という具合にお互い煽り合いながら練習をする。当たり前だが、全く上手くいかなかった。途中で先生から喧嘩をするなと注意があったほどだが、金髪が悪いので俺は悪くない。
そういえば金髪の名前は前田 果蓮というらしい。因みに、このリレーは何故かアンカーに指名された。これも前田はすごく悔しがってたのでいい気味だ。